「ここは出雲大社。カミサマが集まる神社だ」

不意に聲が掛かり、俺は振り返った。そこにいたのは――巫さんが著るような白と赤の袴を著たちょこんとした小さいだった。いや、……というよりかはの子といったほうがいいのかもな、長的な意味で。

「お主、今私が『子』だと思ったろう？」

「……なんで解ったんで？」

「阿呆。伊達に人間の數倍の壽命を生きてはおらんわ」

「え……ってことはカミサマ？」

「まあ、そういうことになろうかの」

なんてこったい。まさかこんなところでカミサマと対面できるとはな。……さすがはカミサマの集會場所。巫さんもカミサマが行うのか。

「違う。私はタイガノミコトの代理でやってるだけじゃ」

「その巫さんの格好はいったい？」

「巫服のように見えるが、ちと違う。こりゃ、わたしの正裝だ」

「正裝？　……なら、これからどっかへ？」

「神迎祭……もとい“會議”の準備じゃよ」

「會議？」

「……おまえはカミサマについて何も知らぬようじゃから、ちゃんともうしてやろう。まず、カミサマはどれくらいいる？」

「そりゃ、八百萬の神っていうくらいだから大量に」

「そうだ。しかも毎日のようにカミサマは誕生する。中には空想で作ったカミサマが気付いたら本になってしまったケースだってある」

「……そんな伽噺みたいなことが？」

「そんなこと言ったらカミサマの話はすべて伽噺だぞ？」

なるほど、たしかにそうだ。

「……話を戻すけど、カミサマってのはそりゃ毎日信仰してくれる人たちのために何かするわけだ」

「ひどく象的」

「それはどうでもいい。……んで、一年間やってみて、どうだったかを會議する」

「會議って……どう？」

「そんな難しいもんじゃないさ。ただ、お菓子持ち寄って駄弁るだけ」

おいおい、カミサマなのにそんなのでいいのか。もうちょい地域経済に関わる話とか……そうだな、最近で言えば領土問題とかさ。

「そのへんは関係ないの。結局最終的には人間が決めるから。カミサマが決めるもんじゃない、ってね」

……なるほど、カミサマも大分やわらかくなったわけだ。

俺は今、それをひどく実している。