《ルームメイトが幽霊で、座敷。》威厳と尊厳と神様事
というわけで班長さんに連れて行かれたのは出雲大社の奧にある本殿だ。なんでもそこには出雲大社を統べるカミサマがいるらしい。……そんなカミサマ居るって聞いたことないんだが。
「タイガノミコト様、お連れしました」
『うむ、通せ』
「……わかりました」
しだけムスっとして班長さんは襖を開ける――と部屋の中はやけに暗かった。明かりが無い訳はないはずだ。先程話をしていた部屋だって、蝋燭の明かりがあったし、この部屋にもあると思ったのだが?
「……やっぱりテレビ見てましたか。タイガノミコト」
……えっ、テレビ? 俺はその言葉を聞いて目を丸くさせた。待ってくれ、どうしてどうすればカミサマがテレビを見るんだ? まさかこの部屋って地デジアンテナってるの?
『いいじゃないか、ちょうど今いいところなんだ。“鬱陶しいこれ”ってなんて読むんだ?』
「うっとうしい、ちょうどあなたに対する私のことでしょうか」
『……厳しい。やはりめぐみに早く戻ってきてしいものだ。惜しい子を亡くした……』
「あんたさっきまで死んでないって言ってただろーが! あれは噓か!」
『痛い! お願いだから蹴らないで!』
……カミサマの威厳どこへやら。
「――ねー、リト。ほんとにカミサマなの?」
「ん、碧さんか。たぶんそーじゃねーの? だってなかなかに強い霊だし」
「その割にはあの巫さんにやられてっけどねえ……」
「神霊班の班長だからなー。何か特殊な力でもあるんだろーよ」
「それを知りに來たんだっけ? どうやって知るつもり? 伽でもする?」
「せめて全年齢対象でお願いします」
「ウブだねほんとに。あんたやっぱ貞?」
「ですけど何か?!」
「靜かにしていただけませんか」
碧さんと俺のシモネタトークは班長さんには気が合わなかったらしい。しだけ顔を赤くして、俺のアキレス腱を的確に攻撃して呟いた。
「うがっ!? まさかのアキレス腱攻撃?!」
「……そんなことした覚えはありません。べつにあなたのためにやったわけじゃありませんから」
「しかもツンデレ……これはひどい……」
……というかあのカミサマ泣いてるんだが、あれでいいのか? おもちゃを奪われた子供みたいになってるぞ?
「あれにはそーいう躾をするのがいいんです。躾は飼い主の役目ですから」
「さらっとすごいこと言ったな……」
【書籍化・コミカライズ】実家、捨てさせていただきます!〜ド田舎の虐げられ令嬢は王都のエリート騎士に溺愛される〜
【DREノベルス様から12/10頃発売予定!】 辺境伯令嬢のクロエは、背中に痣がある事と生まれてから家族や親戚が相次いで不幸に見舞われた事から『災いをもたらす忌み子』として虐げられていた。 日常的に暴力を振るってくる母に、何かと鬱憤を晴らしてくる意地悪な姉。 (私が悪いんだ……忌み子だから仕方がない)とクロエは耐え忍んでいたが、ある日ついに我慢の限界を迎える。 「もうこんな狂った家にいたくない……!!」 クロエは逃げ出した。 野を越え山を越え、ついには王都に辿り著く。 しかしそこでクロエの體力が盡き、弱っていたところを柄の悪い男たちに襲われてしまう。 覚悟を決めたクロエだったが、たまたま通りかかった青年によって助けられた。 「行くところがないなら、しばらく家に來るか? ちょうど家政婦を探していたんだ」 青年──ロイドは王都の平和を守る第一騎士団の若きエリート騎士。 「恩人の役に立ちたい」とクロエは、ロイドの家の家政婦として住み込み始める。 今まで実家の家事を全て引き受けこき使われていたクロエが、ロイドの家でもその能力を発揮するのに時間はかからなかった。 「部屋がこんなに綺麗に……」「こんな美味いもの、今まで食べたことがない」「本當に凄いな、君は」 「こんなに褒められたの……はじめて……」 ロイドは騎士団內で「漆黒の死神」なんて呼ばれる冷酷無慈悲な剣士らしいが、クロエの前では違う一面も見せてくれ、いつのまにか溺愛されるようになる。 一方、クロエが居なくなった実家では、これまでクロエに様々な部分で依存していたため少しずつ崩壊の兆しを見せていて……。 これは、忌み子として虐げらてきた令嬢が、剣一筋で生きてきた真面目で優しい騎士と一緒に、ささやかな幸せを手に入れていく物語。 ※ほっこり度&糖分度高めですが、ざまぁ要素もあります。 ※書籍化・コミカライズ進行中です!
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