《ルームメイトが幽霊で、座敷。》と兄貴の記憶違い(前編)

「……でもね、私はまたひとりじゃなくなったんだ」

その言葉を聞いて、俺は訳が解らなくなった。あとまた一人稱変えやがったな、作者め。書きづらいからってこんなじにしやがって。

「ひとりじゃなくなった、ってどういうことですか?」

「お兄ちゃんが帰ってきたんだ」

「へ?」

……失蹤してた、って言ってたけど帰ってくる? そんなに早く? 二年も寧ろ日本中で探していたはずなのに? 確か今ナンバー制度が導されたせいで日本人ひとりひとりに十三桁の固有ナンバーがあるから、二年も行方不明でいられるわけないと思っていたんだが……。

「今はお兄ちゃんと二人暮らしよ。お兄ちゃんは大學に通っててね。頭もとてもいいから、勉強を教えてもらってるのよ」

「仲がいいんですね」

「祐希くん。けれどね、なんだかお兄ちゃん、変わった気がするのよ」

「変わった?」

「なんていうか、記憶違い? わたしの覚えてる記憶とお兄ちゃんの覚えてる記憶が違ってて」

「……例えば?」

祐希が話にどんどんとのめりこんできた。また俺が會話に參しづらく……!! と壁毆り代行を呼びたいところだがぶっちゃけそんなシーンではないことは重々承知だ。主人公なのに出番がないものはたくさんある。そのへんはほっておくことにしよう。

「首吊り寺って知ってる? 東京の西側にあるんだけど」

「もしかして……青続寺せいぞくじですか?」

「そうそう!」

話が通じる人がいて嬉しかったのか、班長さんはすこし笑顔を見せた。今まで俯き顔だったので、こちらにとっても嬉しかった。……ところで、首吊り寺とは何処なんだろうか? ……そんなことを自問自答しようとしていたら、祐希が気を利かせてくれた。

「あっ、リトは知らないよね。首吊り寺ってのは名前のとおりさ。昔、寺の裏にある大きな桜の木でが首を吊っていたんだって。まあ、それでも江戸時代とかすごい昔の話だよ? それで夜中になると、誰もいないはずの本堂にの幽霊が居るんだってさ」

「……なにそのありがちな話」

「いやいや、それが案外そうでもないんだよ? そーいうところの幽霊がまわりに悪さしちゃうこともあるし。だから宮庁神霊班という部隊があって、リトのような個人経営のだってあるわけなんだし」

「……個人経営は正直余計だ」

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