《ルームメイトが幽霊で、座敷。》【第五話】 酒とカミサマの因果関係(前編)

「ドイツに行きたい」

 

何をいきなり言い出すんだこの使えない副署長=姉ちゃんは。

 

「またこの時期だからか……」

「めぐみさん、なんか知ってるんですか?」

「オクトーバーフェスト」

「へ?」

 

オクトーバーフェスト、とは――。

ドイツ、バイエルン州の州都ミュンヘンで開催される世界最大規模の祭りである。1810年以來ミュンヘン市の西方のテレージエンヴィーゼで9月半ばから10月上旬に開催され、毎年600萬人以上の人が會場を訪れている。 祭りの中心とされるのは世界からくる様々なビール。しかも、場は無料で飲食を買う時や遊に乗るときなどにお金を払うシステムである。 オクトーバーフェスト専用にビールを作る會社もあり、その時期はテレージエンヴィーゼはとてつもない喧騒になるわけだ。

……で?

 

「もうこの時期はそれだからねえ……マリナさんはとてつもなく酒好きだから。それくらい知ってるじゃん?」

 

ええ、まあ。聞いたことはありますね。そりゃ、腐っても姉ですし。

 

「だから毎年毎年この時期になると酒飲みたい酒飲みたいだからドイツ行きたいとか言うのよ。日本には地ビールやらなんやらあるのにさ。あんまり味しくないとか言うのよねー」

「おやおや、それはどうでしょうね」

 

署長、いつの間に。

 

「そもそもビールってのはカミサマにとってはあんまり嬉しくないものだったりするのですよ」

「へえ」

「メソポタミア文明の頃からあったとされています。実はビールはエジプト起源なんですよ」

「えーっ! それは驚き!」

「そして、お酒はいまでもイスラム教の戒律で止されています。それは飲酒が理を失わせる悪行であると考えられているからですね。ちなみにその頃のビールは今のような嗜好品としての存在じゃなくて、食としての存在となっていますね」

 

ほうほう。

 

「そのあとローマにエジプトから伝えられましたが……あまり良くは思われなかったんですよね」

「なんでですか?」

「野蠻人のもの、だと思われたのもありますが、あの辺はワインがよく生産されたというのもありますね。ローマ人や古代ギリシア人の間では大麥をくだいて粥狀にして食べるのが流行っていましたし、當然と言っちゃ當然でしょう」

「はぁ」

 

なんだかどんどん主題がずれてきているような。

 

「ですが、ヨーロッパにゲルマン人主導のフランク王國が立し、それはヨーロッパに付いていきます。……さて、話を変えますが、なぜゲルマン人がヨーロッパを占領できたと思いますか? いや、正確にはフランク王國が、となりますが」

「……ゲルマン人が、じゃないんですか?」

「ええ。正確にはゲルマン人全がヨーロッパを占領できたわけではありません。ヒントをあげましょう。ゲルマン人はキリスト教のアリウス派でした」

「……ますますわからないんですけど」

「正解を言いましょう。ゲルマン人はアリウス派でしたが、當時のヨーロッパの人間はアタナシウス派でした。それぞれの考え方も違うのに、占領なんて出來ませんね。ですが、フランク王國だけはアタナシウス派に改宗したんです」

「なんでですかね? 普通に考えると自分が信じているカミサマをそう簡単に捨てられますかね?」

「……いや、キリスト教は宗派こそ分かれているけどカミサマは一緒だからね? ついでにイスラム教もユダヤ教も一緒だからね? なんで君はアーリマン知ってるくせにそのへん知らないかな?」

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