《ルームメイトが幽霊で、座敷。》現実への帰還と殘積課題(後編)

「それならば、君はカミサマというのがどういう存在なのか。きちんと理解しているのか?」

針咲千夏の言葉に、俺は直ぐに頷くことは出來なかった。

どうしてだろうか? 俺には迷いなんて、そんなものは持ってはいないはずだ。

「カミサマというのは信仰をしなければ消えてしまう……いいや、正確には『カミの形を為さなくなる』だったかな? それによってカミが怨霊に『墮ち』て、人々を苦しませるケースも多々あった」

「それは人々がきちんと信仰を行わなかった迄だ。清潔な心と、清潔な意志を持っていれば……」

「愚かだ」

俺の言葉は、針咲千夏のその一言に遮られた。

「愚かだ。愚か過ぎるよ、君は。いや、もしかしたらカミサマに仕える職業だから、カミサマに毒されているのではないか?」

「何だと……?」

俺は苛々していた。そしてこれが針咲千夏の思う壺だということにも気付いていた。

だから俺は一歩踏み出して、針咲千夏との均衡を破った。

その時だった。

針咲千夏は、その場から消えた。

「君は全く馬鹿な存在だよ」

そんなセリフを吐いて、消えた。

部屋の真ん中から、一瞬にして。

俺は思わず部屋の真ん中へと走り出す。しかしそれは思わぬもので遮られることとなった。

「これは……鏡?!」

「正確には、限りなくそう見せかけたモニターじゃないかな? どちらにしろ、やられたよ。見事にね」

碧さんは、その姿に合わず小さく舌打ちをすると、辺りを見渡す。

そこには何の痕跡も殘されちゃいなかった。まるで――そう、狐に摘ままれたような、そんな覚だった。

◇◇◇

かくして、幾つかの未消化要素は存在したが、『ホープ・ダイヤモンドゲーム』事件は解決した。

しかしそれは、オリジナルを破壊した迄に過ぎない。インターネットが蔓延る昨今では、ネットの海に多數のコピーが出回っている。

「それほど迄にやりたいゲームなのかねぇ……」

まとめた報告書を読みながら姉ちゃんは小さく呟く。

そんなことは、俺に言われても困る。もし、解るとするならば――。

「……なんで私がその気持ちを解ると思ったのよ?」

――ゲーマーである碧さんくらいしか居ない。

「あのね、言わせてもらうけど、ゲーマーといっても種類とかあるのよ? 例えば、FPSが好きなゲーマーだとか、RPGが好きなゲーマーだとか、私みたいに雑食なゲーマーだとか」

「で、その雑食ゲーマー碧さんから見たこの事件の話は?」

俺がそう話を振ると、珍しく碧さんが黙ってしまった。

そこまで真面目に考えなくていいのに。

それから數分後、碧さんはやっと思いついたのか俺に向かってこう言った。

「やっぱりゲームは一日一時間、って法律で定めるべきよね」

見當外れとも言いづらいその言葉に、俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。

ホープ・ダイヤモンドゲーム編

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