《ルームメイトが幽霊で、座敷。》【第十話】突然の命令は長期休暇

長かった夏も終わり、そして秋も終わりつつある十一月のある日のこと、俺は何時ものように畫鑑賞に浸っていた。

何故かといえば長い事件が続いたというのもあり……、俺は暫くの休暇を頂いていたのだ。

時刻は午後八時。風呂にって一息ついていた矢先のことだ。

「ねぇ、あんた。あのこの前買ったゲームパッドはどうした?」

幽霊の碧さんが風呂上がりの俺にそんなことを訊ねた。ゲームパッドということはあのゲームに違いあるまい。

「ん。あれは確か姉ちゃんに貸したきりだったかな。何でもあのハードじゃないと出來ないゲームがあるとか言ってたっけ」

「マリナはソニー派じゃなかった?」

「好きなゲームを買ったはいいが、ハードを確認していなかったんだとよ。まったく、おかしな話だ」

碧さんは俺の話を聞くと、そのままを翻して部屋へと戻っていった。

電話の著信音が鳴ったのは、そんな他もない日常の頃だった。

電話に出ると、聲が聞こえた。その聲は姉ちゃんだった。

「元気か、リト」

「ぴんぴん生きてますよ。それで? 何か用でも?」

「用が無きゃ電話するわけないでしょう。……それで、あんた確か休暇は明後日迄よね?」

「二週間の休暇だったはずだから、そうだったかな」

寧ろあの出來事からもう一週間経っちまったということになるのか――俺は小さくため息をつきながら、テーブルに置いたコーヒー牛を胃の中に流し込む。

「それでね、休暇を二日ばすから、ちょっと私と一緒にあるところに行ってしいのよ」

「…………嫌な予しかしないんだが」

「何よ。……まぁ、あんたからすりゃ嫌な記憶盡くしの場所かもしれないけれど」

どくん。

その言葉を聞いて、俺のの鼓が高まった。

聞いたことがないから何となくの見當しかつかないが……もしかしたら姉ちゃんは俺をとんでもない所へ連れていくのではないか。そんなことを考えていた。

そして。

俺の予想は、呆気なく當たってしまう。

「遠野……と言えばもう解るだろう。リト、父さんの墓參りに行くぞ。用意をして、待っていろ」

そして姉ちゃんからの電話は一方的に切られる。

姉ちゃんはいつもそうだ。自分の都合でく。俺の都合なんぞ知ったこっちゃないのだ。

だからといって斷れるかというとそうでもない。後々姉ちゃんによる制裁が來るのは確実なので、スケジュールをずらしてでも優先せねばならない。

しかし、何故今更墓參りなんだろうか。

『あれ』があって以來、本家にすら(正確には本家跡にすら)行っていない。

もう、隨分と時間が経った。

人々が忘れるに足る時間で、人々に新しいものが浸するには長過ぎる時間が経った。

俺も姉ちゃんもすっかり大人になった。なったのだ。

だが……やはり考える。

俺はあそこに、本當に行ってもいいのだろうか? 心の奧底に封印したはずの父親の記憶……まさか今さらになってフラッシュバックするなんて。

人生というのは、まったく爽快だ。

「……あんた、一人で笑って。気持ち悪いよ?」

「もうちょい聲のかけ方あったんじゃあない?」

俺は小さく笑っている(正確には笑いを堪えている)碧さんを見てそう言った。本當に罰當たりな幽霊だ。

    人が読んでいる<ルームメイトが幽霊で、座敷童。>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください