《ルームメイトが幽霊で、座敷。》久々の実家は荒廃劣化

遠野駅で降りて、そこからタクシーで十分。小高い丘の上にあるのが瀬谷家の本家となる。

「いやはや、ほんとうに久しぶりだな……。まさかここにやって來るなんて、思いもしなかった」

「まぁ……目的地がここだというわけでもないがね。もっというならあんたはこの旅に関してはただの木偶の坊だよ」

「そりゃご丁寧にどうも。……待てよ? だったらどうして俺を?」

木偶の坊と呼ぶためにはわざわざ連れてきたわけでもあるまい。きっと何か理由があるはずだ。

だがその理由はどうにも見つからない。まったく見當がつかないからだ。

「……まったく想像がつかないんだが、だとしたら俺は一どうしてついて來ることになったんだ?」

「あんたの後ろにいる自稱座敷よ」

そう言って姉ちゃんは碧さんを指差した。

そっか、そうか。

碧さん目當てだったのか。そいつは予想外。

「なに『そんなこと解らなかった』的なことを言っているのよ、そんなこと言っても無駄よ。……ともかくそこにいる座敷もといアマテラスオオミカミに私は用事があったのよ」

と、そこで。

アイスクリームを頬張っていた碧さんが、漸く俺達の會話に自分が登場していることに気が付いたようだった。

「なに、どうかしたの?」

「どうかしたの……じゃあねぇよ日本神話の最高神が」

「……だって私はまったく話を聞いていないのよ? そんなことを言ったってしょうがないじゃない」

「しょうがない……ったってなぁ」

話を聞いていないそっちが悪い、と言い返したかったがそうもいかない。

「……とりあえず要點だけを簡潔に述べると、今回のことは人間にはかないっこないってこと」

「それで私が選ばれた……ってことね」

「人間に出來ないのなら、カミサマに頼むしかないでしょ?」

姉ちゃんは首を傾げる。ごもっともだが、正直な話、頼む立場がそれを言うのが出來るのだろうか?

「いいわよ」

あっさり過ぎるだろ。

「ただし……條件つきね」

「……條件?」

このタイミングで條件をつき出してくるとは、鬼だ。いや、カミサマなのだけれど。

そんなカミサマは欠をして、橫になってふわふわと浮いていた。まったく、こっちの様子も知らないで、一何をんでいるのか、まったく解らん。

とはいえ、ずっと膠著狀態が進んでいても、しょうがない。

「……解ったよ。條件を飲もう」

……と、俺が頷く前に姉ちゃんがそれに了承していた。

まぁ、どっちにしろ俺が了承しても何の権限がないことを考えると、それの方が結果オーライだった……というわけだ。

「オフィスにアイス専用の冷蔵庫がしい。それもある程度大きなサイズでな」

……慎重な面持ちで碧さんはそう言ったが、ただの我儘であると気付くにはそう時間はかからなかった。

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