《ルームメイトが幽霊で、座敷。》人間と神様の押引問答

「百鬼夜行……それも、私に止められると思った、その理由は?」

「単純明快。あなたなら可能でしょう? 日本神話最強のカミサマである、アマテラスならば」

それを聞いて碧さんは失笑する。

姉ちゃんが考えている何かを知ってしまったのだろう。

「……ほんと、私も舐められたもんだな。まさか私を『利用』する存在が出てくるなんて」

「これは悪いことのためではない。正義のために使っているのよ。どう、それでも悪いことかしら?」

「それはいいわけよ。ただのエゴにしか過ぎない」

「だとしても、百鬼夜行を倒すことでどれほどの人が救われることになるでしょうね」

それを聞いて、碧さんはを噛んだ。

「あんた……悪魔ね」

「何とでも言いなさい。ともかく、それを行えなくてはさらにたくさんの人が被害に遭う。そうなればあなたと共に住んでいるリトの職場だって危うくなるのもまた事実。あなたは現世でそんなのほほんと暮らすことが出來なくなるかもしれないわよ?」

姉ちゃんは言った。

そうかもしれない。現実的に考えて、宮庁神霊班及び神事警察のことを知っている人間はそう居ない。しかし、知らない人間が妖怪を目撃したらどうなるだろうか? 國の省庁のどこかに連絡がって、最終的には俺たちの場所へ回されることになる。そしてそのツケを俺たちが払わされることになるだろう。

そうなったら、宮庁神霊班は解散を避けられないかもしれない。

そうなったら、碧さんとともに暮らしていくことが出來なくなるかもしれない。

それは出來ることなら避けたかった。

それは、嫌だった。

「……さあ、どっちにするか選びなさい。別に私はどちらでも構わないわよ。でも、『アマテラス』の権威は地につくでしょうね」

「! どこまでもアマテラスを下に見るつもり……?!」

「したに見ようとけっこう! 地獄に落ちようともけっこう! でも今はこの百鬼夜行の対策を施すのが先決だ!」

その言葉に、碧さんも僕もなにも言えなかった。

あまりにも突拍子すぎる発言だから――というのもあるだろう。あまりにも難しい発言だったということもあるだろう。

ただ、一番に考えられるのは自分のを捨ててまで守るということは、やはり姉ちゃんらしい――俺はそう思った。

「リト、何がおかしい」

「いや……相変わらず姉ちゃんは捨てだなあ、って思っただけだよ」

「私は捨て、か。まあ、そうかもしれないな。ただ今回も、その時の任務も、そういう大変なことがあったからに違いなくて、さらに私はそれを必ず功させなくてはならなかったという重荷があった。今回だってそうだ。この被害が広がれば、妖怪による橫暴はさらに増し、人間が住む場所を奪いかねない。それだけは避けたかったんだ。……解ってくれ、アマテラス」

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