《ルームメイトが幽霊で、座敷。》夜の神と人間の崇拝理念

「天候作がなんだと言うんだ。オオヤシマがなんだというんだ! 私の……私の苦労を知らないで……!」

私はなんとか闇から抜け出そうともがく。あがき続ける。

「うん、知らないよ」

でも。

ツクヨミは苦しんでいる私を見て、とても嬉しそうに言った。ツクヨミの表はこちらからはまったく見えないのに、ツクヨミは笑っているように見えるのだ。

「僕は悪くないよ。姉ちゃんが悪いんだ。姉ちゃんが――」

そこで。

ツクヨミは唐突に言葉を切った。どうしてだろう。私は思った。

その私の思いを汲んだのか、ツクヨミは言った。

「……上客だ。ちょっと待っていてね。ああ、どうせそこからは抜け出すことはできないから。一応、言っておくけど」

そう言って、ツクヨミの聲は消えた。

◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇

月が輝く夜。

そんな夜道を俺は歩いていた。源は當然ながら月のだけ。こんな狀況じゃなければまったくのロマンチックなムードとも言えるんだろうけど……正直なところ、そうとも言えなかった。

目の前に、誰かがいたからだ。

直ぐにそれは人間ではないと思った。人間では作り出すことのできない霊力――それを持っていたからだ。

それは笑っていた。俺は恐怖を抑え込みながら、言った。

「お前は……いったい何者だ」

「ぼくかい? 聞いたことあると思うよ」

そして、立ち上がり――持っていた鎌を構える。鎌につけられた刃が、月のを浴びて怪しいを帯びる。

「僕の名前は、ツクヨミってんだ」

そして。

ツクヨミが持っていた鎌を、思い切り地面へと振りかざした。

ドガッシャアア!! という音を立ててそれは地面へと突き立てられる。そこは俺がつい數秒前まで立っていた場所だ。既のところで避けたが、その場所はもう跡形もなく崩れ去っている。たしか俺のすぐ橫には大きな木があったはずだが、それが倒れてしまうほどだ。

「……これを避けることが出來るとは、すごいねえ。姉ちゃんが一緒にいただけあるよ」

「姉ちゃん……ああ、アマテラスのことか」

俺は呟く。

ツクヨミは肩をすくめて、

「姉ちゃんはこの世界のほうが面白いって言うけど、僕から言わせればそれは全然理解出來ない。夜の世界を支配している僕だからかもしれない。けれど、そうだとしても今の人間は最低最悪だよ。まだ邪馬臺國とかやってたころは……えーと、確かヒミコだっけか? イヨだっけか? まあどうでもいいや。そのあたりが頑張っていた頃はまだ僕たちを完全なるカミとして崇めていたきがするよ。でも今は違う。人間どもの都合によってカミが崇拝されている。それっておかしな話とは思わないかい?」

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