「大丈夫、大丈夫だよ。リトは悪くない。君は悪くないんだ」

気がつけば俺は泣いていた。

祐希に一言でも言えなかった。

祐希に一言でも謝ればよかった。

でも、謝れない。

謝る言葉が浮かんでこない。

「……いいんだよ。いつになっても、リト。謝る言葉なんて、そう簡単に見つかるわけがないんだから。見つからなくていい。遠回りしてもいい。それが人間ってものだから」

「うわあ……ああ……ずずっ……ああ……」

俺は祐希の香りをじながら、祐希の溫をじながら、泣いていた。涙を流していた。

我ながら恥ずかしい――そう思っていた。

けれど、俺は泣きたかった。なぜだか、涙を流したかった。そしてそれを祐希もけれてくれた。

「リトは悪くない……。リトは悪くないんだ。今、んな人が碧さんを探している。だから、気を落とさないで」

「そう。例えばこういう人間がね」

その聲は明らかに祐希のものではなかった。だから俺は即座に振り返る。

そこにはひとりのが立っていた。それは全を赤く染めただった。正確には赤いシルクハットに赤いジャケット、赤いズボンに赤いネクタイ、唯一白いシャツをジャケットの中に著用している。因みに髪も赤い。長い髪を帽子に隠しきれていないように見える。それがのスタイルなのかもしれないし、それをどうこう言う立場でも無い。

「いやあ、お取り込み中申し訳ないね？　ただ、話しておかなくちゃいけないことがあったわけで、君の場所を教えてもらったってわけよ」

「だとしても、夜音さん。きちんと玄関からってはどうですか？　さすがに人の家に玄関以外からるのもどうかと思いますよ」

「そうか？　別に玄関からったけれど、靜かだったからかな。んで、ってみたらこういうふうにロマンスかましてるわけだからよ。ちょっとちゃちいれるのもなーって思ったわけだ。だろ？」

暴な口調をするだったが、どうやら話しているじからして祐希と知り合いらしい。

は俺の顔を見て鼻で笑い、話を続ける。

「まあ、なんというか……しみったれた顔してやがるな。ぶっちゃけあいつの頼みじゃなかったら聞かなかったレベルだぞ」

「そう言わないでくださいよ。で、來たということは何かニュースでもあるんでしょう？」

祐希の問いには頷く。

「察しがいいな。そうだそうだよ。つまりそういうことだ。まあ、昔ながらにいえば、いいニュースと悪いニュース、どっちから聞きたい？　というじか」

出來れば悪い方はあとに殘しておきたい。そう思った。