《俺の高校生活に平和な日常を》第1章 #2「友との會話はいつものこんなものだ」
家を出て3分後、100m前から長の男がこちらに手を振りながら走ってくる。長は190はあるだろうか。その上、七三に眼鏡をかけているせいか、學校の制服を著ていなければ社會人と間違われてそうだ。
この男の名は丸岡 大介(まるおか だいすけ)。中學からの馴染みで俺のオタク趣味の師匠でもある。なぜなら、俺がオタク趣味にはしっているのは、丸岡の影響がかなり大きい。今でも、お勧めのアニメやらマンガやら教えてもらっている。
「和彥~~~!」
デカい図のわりに高い聲で俺の名前を呼んでくる。中學で初めて丸岡の聲を聞いたときは、ふき出しそうになったことがあるが、今はもう覚がマヒしてるのでなんとも思わなくなってきた。
だが、その聲を周りで聞いていた登校中の子生徒達は、丸岡の背中をチラ見しながらクスクス笑っていた。そのことに丸岡は全く気づく気配がない。鈍というかなんというか。丸岡のツレである俺までもが笑われている様でなんだか気恥ずかしくなってくる。まあ、これもいつものことなのだが。
とりあえず、「よう」と小さく手を挙げ軽く挨拶をかわす。テンションの高い丸岡と違って朝の弱い俺は好きな子に彼氏ができたとき並にテンションが低い。そんなテンションの低い俺をお構いなしに丸岡は話始める。
「なあなあ、昨日のマホ☆アリ見たかよ。あれマジで神回だったよなあ」
「ああ。今期一番良かったと思うぞ」
興気味の丸岡に対して適當に返事を返す俺。まあ、確かにいい回だったけどな。
そんなかんじでアニメトークで華をさかせていると(主に丸岡が)、ふとあることに気がついた。あれが無いことに。鞄の中を漁ってみたもののやはり見當たらない。
「やっべぇ、家に弁當忘れてきたわ」
そう。あれというのは、梓お手製の弁當のことである。
「晝飯なら売店で買えばいいじゃないか」
と丸岡は「大した事じゃないだろ?」的なかんじで言う。こいつは何もわかっていない。
「おい、丸岡。お前、『たかが妹が作ってくれた弁當だろ?』とか思ってんだろ?」
俺はし強めの口調で丸岡を問い詰める。
「いや、別にそこまで思ってないけど、そんなに慌てなくてもいいんじゃないか?」
こいつは正気で言ってるのか、丸岡よ。流石にその言い方はカチンときた。
「いいか。あの弁當はなぁ、學校の売店の弁當とは格が違うんだよ! あの弁當を一度食べたら二度と売店の飯で満足出來なくなるんだぞ!」
さっきまでのテンションとは裏腹に凄い熱量で語る俺に流石の丸岡も唖然としている。若干ひいてる様にも見える。だがそんなの関係ない。俺はあの弁當じゃないとダメなのだ。
「というわけで、俺は取りに戻るから丸岡は先に行っててくれ」
俺は一方的に話を切り上げ、家に走っていく。時間的に今急いで戻ればまだ間に合うはずだ。どんどんと丸岡の姿が遠くなるのを背に走り続けた。
ただ、その選択肢が後に大変な目にあってしまうことになるとはその時の俺は全く知る由もなかった。
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