《俺の高校生活に平和な日常を》第11章 #14「2つの未來」

「ッ?! 滅ぼされって、一どういうことなんですか?」

俺達が驚愕するなか、梓がシルヴィアさん達に問いかけていた。

「理由は判らない。リサ様は未來が見えるといっても、斷片的な未來しか見えないらしい。誰が何のためにこの國を滅ぼすのかは未だに判ってはいないんだよ」

「そんな…」

しかし、シルヴィアさんからはわからないと言われてしまった。斷片的な未來しか見えないパターンか。それはちょっと厄介だな。なにがきっかけでそんなことになるのかがわからないんだからな。

それを聞いて梓は落膽してしまった。

「しかし、奇妙な所はそれだけではないんだ」

「と、言いますと?」

だが、話にはまだ続きがあるようで、今度はみのりの方が問いかけていた。

「その翌日、今度は『異世界から呼ばれし者が悪しき者を打ち払い、この國に平和を齎(もたら)すだろう』と言い出したんだ」

「えっ? でもさっき國は滅ぼされるって言ってたはずじゃあ?」

シルヴィアさんが話を進めると、まさかの一言が出てきた。思わず俺までシルヴィアさんに問いかけてしまった。さっきと言っていることがかなり矛盾しているからだ。

「ああ。リサ様曰く、立て続けに違う未來を見たのは初めてだそうだ。しかし、この國が滅ぶ未來とそうでない未來、2つの異なる未來が見てしまうとは」

シルヴィアさんの話を聞いていくうちに、どんどん空気が重くなっているような気がした。まあ自分達の國が滅ぶかもしれないなんて話聞かされたらそりゃあ気が重くなるよな。

「ちょっと待ってください。そのリサさんという方が見た未來って數十年前の話なんですよね? なら、數十年経った今でもこの國が滅んでないということは、後者の方の未來が正しかったんじゃないんですか?」

みんなの空気が重くなるなか、再びみのりが問いかけた。

「いや、それはない。そんな英雄譚になりそうな話は今まで聞いたことがないし、なにより、リサ様は數十年経った今でもその未來を互に見ているらしい。むしろ、今はその2つの未來しか見えないそうだ」

「そう、なんですか」

だかしかし、その問いかけにシルヴィアさんは首を橫に振った。どうやらリサさんは數十年変わらない未來を見ているらしい。それを聞いてみのりは肩を落とした。

それにしても數十年経った今でも同じ未來しか見えないというのはどういうことなのだろうか? 一、リサさんはどれくらい先の未來を見てしまったのだろうか? いつ起きるかわからないだけに、不安が募るのもわかる気がする。

「ねー? そもそも、その2つの未來っていうのは、本當に來るのかしら?」

俺がそんなことを思っていたとき、さっきまで黙っていた有紗がようやく口を開いた。

有紗の口調からして、有紗は今の話を全く信じていないようだ。まあ考えてみれば、本當にそんなことが起こるのだろうか? ノストラダムスの大予言だって人類が滅亡すると予言したが、結果、なんにも起きなかったらしいからな。

「リサ様の未來を見る力は本だ。まあ最初は信じていた者もいたが、今ではほとんど記憶に殘っている者もないがな」

すると、國王の方が口を開いた。その未來を見てから數十年経つというのだ。記憶から忘れられているどころか、最初(ハナ)から信じていない人がいてもおかしくはない。むしろ、今でもその未來を信じているのはここにいる人達ぐらいなんじゃないか?

「私達の見解ではその悪しき者という者を打ち払いきれるかどうかで2つのうちのどちらかの未來が切り開けるのではないかと考えている」

「なるほど」

しかし、國王の話を聞いてなんとなく納得した。その悪しき者というやつがカギになるようだ。

「で? そいつに心當たりはあるの?」

有紗はそれを聞いて、続けざまに問いかけた。

「…思い當たる者といえば、1人だけいる」

すると、今度はシルヴィアさんの方が口を開いた。

「その者の名は、『魔王・ミリア』。この國に住みついている最強最悪の悪しき者の名だ」

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