---「なるほど。これがゴブリンの足跡ですか」

「はい。數からして4、5はこの村の近くに來ていたようです」

ゴブリンのクエストをけた俺達は依頼主がいる村に來ていた。幸いなことにまだ村は襲われてはいないようだ。

とりあえず依頼主の男と會い、改めて詳細を聞いたあと、ゴブリンの足跡を見た場所に案された。

依頼主は足跡がある箇所に指を指した。指を指された方を見ると、村の外の道に小さい跡がいくつか殘っていた。

一瞬、鶏の足跡かと思ったが、それにしては大きすぎるし、爪のところもどこか若干歪(いびつ)で普通の生きの足跡ではなさそうだった。

「あの、ゴブリンを直接見たっていう人はいますか？」

「いえ、多分居ないと思います」

「見張りとかは付けてないんですか？」

「付けてないですね。なにぶん小さな村ですから人手が足りないものでして。一応、モンスター避けの花は植えてますし、村の塀は定期的に補強したり火は絶えないように火の魔道を使ったり、村の防衛はしっかりしていると思いますが」

「そうですか」

足跡を確認したあと、俺は村の人といくつか質疑応答をした。

ゴブリン達の姿を見た人がいればどこからゴブリン達が往來したのか聞けたのだが、どうやらこの村には見張り番はいないようだ。まあ前にウルフ討伐で行った村よりかは防衛はしっかりしてそうだし問題ないのだろう。

しかし、安全なのは村の中だけで村の外に出るとなると話は別だ。だからギルドに討伐依頼を頼んだのだろう。

「あの、冒険者の方々ですか？！」

「えっ？　は、はい。そうですけど？」

とりあえずゴブリン達の足跡を追おうとしたとき、1人のふくよかなが俺達に駆け寄ってきた。隨分と慌てている様子だが、なにかあったのだろうか？

「じ、実は私の娘が隣村に行ったっきり帰って來なくて…」

「な、なんだって？！」

が事を説明すると、依頼主が驚愕していた。帰って來なくて心配する気持ちはわからなくもないが、なぜわざわざ俺達にそのことを話しに來たのかがわからんな。

「隣村に行く道中、があるんですよ。ゴブリンはのような暗くて狹い場所を好んで住処にすると聞いた事があります。もしかしたら…」

「！？」

しかし、依頼主が補足したおかげでようやく理解できた。隣村に行く道中、その娘さんが萬が一ゴブリンに襲われていたとしたら大変な事態だ。

「今朝、隣村に生活用品用の魔道を買い足しに行くと言ったんです。私は何度か忠告したんですが、すぐ帰るから大丈夫だと言って言う事を聞かずに出て行ってしまって。馬に乗っていたのでそんなに掛からない筈ですから余計に不安で…」

「……」

は涙聲になりながら経緯を話してくれたが、そんなになんと言えばいいのかわからず黙ってしまった。

『大丈夫ですよ！　必ず娘さんは助けますから！！』なんて軽々しいことは言えなかった。助けられなかった場合、その発言が裏目に出てしまうかもしれないからだ。

「大丈夫よ」

「…有、紗？」

だがしかし、俺が言えなかったセリフを有紗が口に出した。

「アンタの娘は必ず助けるわ。だから安心して」

「ほ、ほんとう、ですか？」

その言葉を聞いて涙を流しながらすがるように有紗にじわりと歩み寄ってくるの問いかけに有紗は首を短く縦に振った。

「ど、どうか娘を、お願い、します」

「ええ。任せて」

は有紗の手を握ると懇願するように頭を下げた。

---こうして俺達はの依頼も引きけるかたちでゴブリンがいるらしきへと向かうことにした。