「ハア…ハア…」

草木の中を300メートルぐらい進むとひらけた場所が見えてきた。おそらく悲鳴がしたのはそこだと思う。

「だ、誰か助けてー！？」

「ッ！？」

俺の予想通りそこからの聲が聞こえてくる。かなり切羽詰まっているようだ。

すでにみんな戦闘勢は整っていて、すぐに戦える狀態にあった。

「行くわよ！？」

有紗のかけ聲と同時にひらけた場所に出た俺達。

「ッ！？」

ひらけた場所に出るとすぐ目の前にがあるのが見えた。村の人が言っていたってコレのことか。

そののり口のところにはで倒れているとそれに戯れる數のゴブリンが立っていた。音が聞こえたからか、全員こっちに視線を向けていた。

「グガガガアァ！？」

ゴブリン達は俺達を見るなり、一斉に襲いかかってきた。

「グゲェ！？」

しかし、ゴブリン達の攻撃が屆く前に有紗の銃弾がゴブリン2匹の眉間に撃ち込まれた。撃たれたゴブリンは斷末魔を上げ倒れていく。

「はあっ！！」

「ギガァッ！？」

倒れたゴブリンを見て一瞬他のゴブリン達が足を止めた。

その隙を逃さず、みのりが雙剣でゴブリン2匹の首を掻っ捌いた。

「うおりゃあっ！！」

「ゴギャグッ！？」

あっという間に4匹倒され、殘りは1匹。殘りのゴブリンは困しているかのように辺りをキョロキョロ見回している。そして、自分だけしか殘っていないことを悟ると一気に怖気付いた。

しばかり同してしまう、わけでもなく、俺は殘ったゴブリンの脳天に向かって木の棒を振り下ろした。

俺が使用している木の棒はしアレンジしていて釘バットみたいに無數の釘を刺している。それにより殺傷能力が高くなっているはず。

そんな木の棒をゴブリンの脳天目掛けて振り下ろすと、グチャという生々しい音と共にゴブリンの頭から飛沫が上がった。

思いの外グロテスクなことになったゴブリンは斷末魔を上げ倒れた。自分で作っておいて言うのもなんだが、想像以上に恐ろしいなこの武。

「大丈夫ですか？！」

ゴブリン達を倒したあと、梓がの方に向かって駆け寄って行った。俺達もそれに続い…

「テンッ！？」

「近づくんじゃないわよ、変態！！」

「…すいません」

行こうとしたが、有紗が俺の顔面に裏拳をれて制止した。がにされていたからなのだろうが、なぜ拳で止めた？

---「そしたらいきなりゴブリンがから出てきて、足を摑まれ、服を引き裂かれて、それから…」

「……」

梓がを介抱していると、が事の詳細を話してくれた。

どうやらこのは隣村の人らしく、近くで薬草や食用の木の実を採取しに來ていた。

しかし、隣村の人達はゴブリン達が近くに住みついたことを知らず、迂闊にもの近くまで來てしまい、そこでゴブリン達に襲われさっきの狀況になってしまったそうだ。

は詳細を話していくうちに顔を手で覆い涙を流し始めた。嫌なことを思い出させてしまったようだ。

「…梓ちゃん。その人、村まで送って行って」

「え？」

すると、有紗は梓にを村まで送り屆けるよう促した。その聲からはどことなく怒りをじた。

「最後に1つだけ聞いておきたいんだけど、他に襲われてる人は見かけなかった？」

「えっ？　え、えっと、の中に連れて行かれそうになった時、微かに人の聲が聞こえた、と思います」

有紗は最後に1つだけと言い、に問いかけた。は覆い隠した顔を恐る恐るあらわにしながら、有紗の問いかけに答えた。の言うことがたしかなら他にもゴブリンに襲われ、このの中に連れて行かれた人がいるってことか。

「わかったわ。ありがとう」

の返答に禮を言うと、有紗の視線はの方に移った。

「行くわよ！」

そして、俺とみのりに向かって一言言うと、の方へ向かって行った。

「梓、悪いけどその人を頼む」

「え？！　う、うん」

「行こうみのり！」

「は、はい！？」

置いて行かれる前に俺は梓にを任せるとみのりと一緒に有紗のあとを追いかけて行った。