《クラス転移、間違えました。 - カードバトルで魔王退治!? -》第14話「史上初、異世界でのデュエル・スタンバイ!」

南ヶ丘瀬奈の側に立つ"守護獣ガーディアン"は、子犬くらいの竜だった。白い鱗に小さな2本の角。口からは生えかけの牙がチラリとこちらを覗いている。

対する水三田井朱酒の"守護獣ガーディアン"は、人間の半分くらいの高さのガンマーである。焦げ茶のテンガロンハットを乗せているのは、カボチャのような丸い大きな黃い頭。3頭くらいのフォルムでありながら、その立ち姿はまさに歴戦の撃者。腰に納められた二丁の銃が、銀の輝きを放っている。

「「決闘デュエル!!」」

そして、闘いが始まる。

達の闘い。2人のが同時にいた。

先攻を取ったのは、水三田井朱酒。彼はデッキからカードを引く。

「行くよ! ぼくは【音速ガンマン】で攻撃する! 狙いは"使役者プレイヤー"さ!」

朱酒の宣言の後、彼の側で控えていたモンスター、【音速ガンマン】が2丁の銃を抜いた。そして、ためらう事なく、その銃口を南ヶ丘瀬奈という、に向けようとする。

「"龍風の防壁"発。【音速ガンマン】の攻撃を耐える」

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だが、次の瞬間。瀬奈の引いたカードが輝き始め、その後、猛烈な風が広間に発生した。風は、まるで瀬奈を守るかのように橫風を吹かせ、音速ガンマンから放たれた弾丸は、あらぬ方向に逸れてしまった。

「さらに私は、コスト1【ミースト・ドラゴン】を、コスト2【荒野の石竜】に錬

い龍が、眩いとなって変形し出す。

先ほどまで、子犬程度の大きさしかなかったドラゴン。しかし、の中から現れたのは、牛ほどはある頑丈な『サイ』だった。を覆うは、まるで巖盤のように堅く、四肢は重たい我がを支えるくらいに、太く、力強い。

しかし、その生きはれっきとした"ドラゴン"。その証拠に、そのサイのような生き尾は、まさに爬蟲類といった風に、長く、細く、しなやかだ。

コスト2【荒野の石竜】。強固さを売りにした"守護獣ガーディアン"である。

『コスト』、とは。言うなればモンスターのランクだ。

決闘デュエル開始に最初に出される、コスト1のモンスターを"守護獣ガーディアン"。このモンスターは、"使役者プレイヤー"の手となり足となり、対戦する相手プレイヤーと共に闘うパートナーとなる。

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モンスターは、一定條件を満たすことで可能な"強化錬"、もしくは直接カードによる"裝備"によって強くなる。『コスト1』のモンスターより、『コスト2』のモンスターの方が強い、といった様に、"使役者プレイヤー"は自分のモンスターを強化して闘うのだ。

続々とバトルが続く中、2年4組の生徒達は、2人のの闘いを眺めていた。

「早速、瀬奈はコスト2の"守護獣ガーディアン"を場に出したな」

「朱酒ちゃんは、相変わらず"速攻"重視のスピードデッキを使ってるデスか。このまま錬せず突っ走るつもりデス」

デス子の言う通り、朱酒は【音速ガンマン】に攻撃指示を出し続ける。彼から撃ち出される何発もの弾丸。だが瀬奈は、それらの攻撃を全てカードでけ切った。ある時は"風"、ある時は"水"、ある時は"壁"。様々な手段を用いて、鉄の咆哮を凌ぐ。

その間、瀬奈は"守護獣ガーディアン"の錬を続け、既にコストは『6』に至っていた。

そして、次の強化錬が始まる。

「コスト6【グランド・ランナード】を、コスト7【紫電翼竜ベルガモン】に錬!」

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2足歩行の蜥蜴の次に現れたのは、巨大な翼を羽ばたかせる翼竜。"紫電"の名は伊達ではなく、そのモンスターからはしい紫の電撃が迸っていた。

「くっ! ぼくは、コスト1【音速ガンマン】を、コスト2【接近戦スナイパー】へと強化錬!」

ようやく、朱酒は自の"守護獣ガーディアン"をコスト2へ錬する。

モンスターの強化錬は、『一定回數、敵の攻撃に功する』、『一定回數、敵の攻撃を防ぐ』、『カードによる効果』、『一定時間が経過する』の、主に4つの條件で功する。そして、先ほど朱酒が錬功させた條件は、『一定時間が経過する』。

「さらにぼくは、【接近戦スナイパー】に"天使の草鞋"を裝備! これでスピードアップだ!」

朱酒がデッキからカードを引くと、大型のライフルを構えた"守護獣ガーディアン"に、みすぼらしい草鞋が履かされる。しかし、見た目に侮るなかれ。その草鞋を履いた途端、"守護獣ガーディアン"はスケートのように軽やかなステップで、瀬奈達に急接近する。

「"眷獣ファミリア"を召喚する! コスト1【自特攻ユニット:AMU】と、コスト1【自特攻ユニット:IMU】を召喚!!」

2枚のカードから、2の丸い形狀の『メカ』が出現した。

『眷獣ファミリア』とは、"守護獣ガーディアン"以外のモンスター。決闘デュエル開始から場にいるのではなく、対戦中にデッキから召喚されるモンスターである。用途は様々だが、"眷獣ファミリア"は、その名の通り"使役者プレイヤー"を手助けすることを重點としている。

例えば防、例えば攻撃。

そして、"特殊効果"。

「【自特攻ユニット:IMU】の効果発! このモンスターを破壊することで、相手フィールド上のモンスターのコストを『1』下げる!」

朱酒の"眷獣ファミリア"である1のメカが、突如発した。瞬間、その発後に放出されたが、瀬奈の"守護獣ガーディアン"、コスト7の【紫電翼竜ベルガモン】を襲う。

そして、けた翼竜は、みるみる姿を変えて、錬前の姿、コスト6【グランド・ランナード】に戻っていた。

「ドンドン行くよぉ! 【自特攻ユニット:AMU】の効果発。このモンスターを破壊し、相手フィールド上のモンスターにダメージを與える!」

【自特攻ユニット:AMU】は、プロペラを回し空を飛んだ。そして、2足歩行の蜥蜴と化した、瀬奈の"守護獣ガーディアン"、【グランド・ランナード】の近くで自する。

【グランド・ランナード】は、近距離で猛烈な破を喰らったことで吹き飛ばされた。しばらくの間、けそうにない。

「チャンスだ! 【接近戦スナイパー】で、"使役者プレイヤー"を攻撃!」

朱酒の"守護獣ガーディアン"は、本來遠距離から狙撃する銃を持って、相手プレイヤーである南ヶ丘瀬奈に、近距離で弾丸を放った。

瞬間、瀬奈に軽い振が起こる。脳と臓を揺さぶられたような衝撃。軽い不快が、瀬奈のに押し寄せてきた。

弾丸をけたにも関わらず、瀬奈のには傷1つない。

人間に対して直接の実害は皆無、『カスタム・モンスターズ』という"ゲーム"だからこその配慮だ。

【南ヶ丘瀬奈:LP】『10』→『8』

瀬奈のライフポイントが、『10』から『8』に変わる。

それを見た朱酒は、グッと拳を握ってガッツポーズをする。

「よっしゃあ! やっと攻撃が決まったよ! モンスターの攻撃が功したので、ぼくはコスト2【接近戦スナイパー】を、コスト3【百萬発の拳銃使いサブ】に強化錬!!」

スナイパーは、サブマシンガンを握りしめた重裝備の男に姿を変えた。無限の弾薬を所持すると言われるこのモンスターは、どんな相手も蜂の巣にすると呼ばれている(カードテキストに書いてある)。

さらに、【百萬発の拳銃使いサブ】の銃に、自照準裝置が裝著された。

「ふっふぅ〜♪ 【百萬発の拳銃使いサブ】に"パーフェクト・ドットサイト"を裝備。命中率を上げ、さらに"神風ガン"と"威力強化ガントレット"を裝備して、攻撃力をアップだ!!」

朱酒の"守護獣ガーディアン"、【百萬発の拳銃使いサブ】の空いている片手に、白い銃と腕に防が裝著される。コスト1の【音速ガンマン】と同じ2丁銃。だが、コストの差と、モンスターを強化する裝備カードの効果により、以前の"守護獣ガーディアン"との力の差は圧倒的である。

「【グランド・ランナード】をダメージから復帰させる」

「【百萬発の拳銃使いサブ】で攻撃!」

「"龍風の防壁"発

風の護りが出現し、攻撃から逸らす。

その攻防を眺めながら、猿渡悟がフンと鼻を鳴らす。

「バコスコと無駄に弾を撃ちまくってるな」

「それが奴のプレイスタイル。『下手な鉄砲數撃ちゃ當たる』を信條とした脳死プレイだ」

「ただの考え無しじゃねえか」

「さてそろそろ、南ヶ丘の護りが突破されるぞ」

"龍風の防壁"は、弓や銃弾などの遠距離武に高い効果を発揮する。しかし持続制限時間があり、防壁が無くなった瞬間、瀬奈は蜂の巣にされるだろう。

瀬奈は、デッキからカードを引く。最強の決闘者デュエリストは、カードの力でどんな苦難も乗り越えるのだ。

「シャイニング・ドロォォォォォォッ!!!!」

瀬奈は、己の全力を込めた渾の意思で、デッキから最高のカードを引いた。

因みに、『カスタム・モンスターズ』は、デッキから好きなカードをドロー出來るので、運命力とか関係なく誰でも最高のカードを引ける。決して、南ヶ丘瀬奈の実力でも、ましてや「シャイニング・ドロォォォォォォッ!!!!」と格好よくんだからではない。というか、ぶ必要は無い。

「瀬奈ちゃん瀬奈ちゃん。どうして瀬奈ちゃんは、土壇場のドローで、一々ぶんデスか?」

「趣味だ! 私は、裝備カード"星雲から舞い降りし龍玉"を発! このカードを裝備した、コスト5以上のドラゴン族モンスターのコストを『2』上げる!!」

「何……だと……?」

剎那、蜥蜴の竜に、星のように輝く寶石が降りた。

そして、蜥蜴の竜がそれにれた途端、錬が始まる。は漆黒、巨大な蝙蝠のような翼を広げたドラゴン。『竜』ではなく『龍』。強靭な四肢と獰猛な顎を攜えた巨軀なる"守護獣ガーディアン"。

「魅るが良い、これぞ私のエースカード! コスト8【ブラック・アビス・ドラゴン】を錬!!」

ズンッ! と、巨大な龍が舞い降りる。剣も通さない漆黒の鱗、分厚い皮。幾ら裝備で強化されているとはいえ、コスト3の【百萬発の拳銃使いサブ】では歯が立たない。

……そして、これだけでは終わらない。

「"守護獣ガーディアン"として錬された【ブラック・アビス・ドラゴン】は、自分フィールド上に他のモンスターが存在しない時、2の"眷獣ファミリア"を召喚する」

「あっ、マズイ」

「コスト6【レッド・アビス・ドラゴン】! コスト6【ブルー・アビス・ドラゴン】を召喚!!」

【ブラック・アビス・ドラゴン】が咆哮を上げ、その瞬間、赤と青に煌めく2の龍が舞い降りた。

共にコスト6のドラゴン。水三田井朱酒の"守護獣ガーディアン"の倍のコストがある、高ランクモンスターだ。

そして瀬奈は、対決の幕を降ろしにかかる。

「【ブラック・アビス・ドラゴン】で、敵"守護獣ガーディアン"を攻撃! 『終焉の闇波咆哮砲ダーク・インパクト・ブレス』!!」

瀬奈の"守護獣ガーディアン"が、顎門に膨大なエネルギーを集中させる。

直後、闇の黒へと凝したエネルギーが咆哮と共に放出され、【百萬発の拳銃使いサブ】を攻撃。大ダメージを與えた。朱酒の"守護獣ガーディアン"は行不能。"使役者プレイヤー"を護れない狀態となる。

「これで終わりだ! 2のドラゴンで、"使役者プレイヤー"を攻撃! ダイレクト・アタック!!」

「この攻撃が決まれば、瀬奈ちゃんの勝ちデス! 朱酒ちゃんは……」

「\(^o^)/オワタ」

「決著だァァァァァァ!!!!」

激震が走る。2から放たれたブレスは、真っ直ぐに"使役者プレイヤー"である朱酒を叩き、を遠くまで吹き飛ばしたのだ。

【水三田井朱酒:LP】『10』→『0』

【WINNER】南ヶ丘瀬奈

水三田井朱酒は倒れ、敗者と勝者が誕生した。

南ヶ丘瀬奈は、髪をかきあげ、満足そうに笑みを浮かべる。

「ふっ、本気を出すまでもなかったな」

……戦闘終了です、お疲れ様でした。

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