《貧乏だけど、ハイスペックです!》6話 あれ、なんか予想と違った。

「あの子の……いえ、風子様のご両親は風子様が心つく前に他界されたのです。

風子様の父方の方のご両親、つまり、風子様のおじい様やお婆様も、お婆様の方はもう風子様のご両親が他界される前から、亡くなっております。

風子様のお母様のご両親は、風子様のお母様が心つく前にお亡くなりになられた、と聞いております。

つまり、今この家の筋を引いた者は、現當主の風子様と、そのおじい様、櫻さくら亜門あもん様の二方だけなのでございます」

誠也は絶句した。

あまりに重すぎたその話に。

誠也は、出會って間もない人の深い事に土足で踏み込んでしまったのである。

後悔の念や自責の念に駆られると同時に、あの子を守ってあげたいと言うが生まれた。

そして、そのは誠也の考えの一つを変えた。

それは……

「そうだなあ、よし、お前!私の家で働け!

それで文句はないだろう?立派な仕事になるはずだ」

あの言葉への返答だった。

「訂正しなきゃ……」

誠也は、ベッドから跳ね起き、一目散にドアへと向かう。

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メイドは慌てて、

「ちょっ、ちょっと!誠也くん!?

まだそんなにいちゃダメよ!安靜に……」

メイドが言い終わるよりも前に、誠也は部屋を飛び出した。どこへ行くのかなんてわからない。

この広い広い屋敷で君を探すのはとても難しい。

でも、どうしてかな。

僕にはわかる。

きっと、君は……。

気がつくと、本棚がたくさんある部屋にいた。

どうやら、書庫のようだ。

とてつもなく大きな本棚を2つ挾んだ向こうの小さな本棚の前に一人のの子の姿が見えた。

きっと、あの子だ。

誠也は一目散にそちらへ駆ける。

けれども、すすり泣きをしているその子は、誰かに語りかけているようだ。

「……おかあ、さま。あなたは、どんな……どんな、人だったの……?」

巨大な本棚を1つ挾んだ通路で、誠也は「ポケット六法」を落としてしまった。

それは、運悪く足元に落ちてしまい、誠也の足に激痛が走る。

いや、運が良かった、というべきだろうか。

足元に落ちたことにより、衝撃音が目立たなかった。

が、誠也の悲鳴が木霊こだました。

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!痛い痛い!」

「誰かいるのか!」

まずい、見つかった。

そもそも「ポケット六法」のくせに、全然ポケットに収まるサイズではないのが誠也は納得できず、しかめっ面をしていたが、狀況が狀況であるがため、それもすぐにどうでもよくなった。

それより今は、

「おい……誰かいるのか、と聞いているのだ!」

この巨大な本棚を挾んで向こうに立っている「鬼」をどうにかしなければ……。

もう、仕方ないと腹をくくり、誠也は、

やあ、と手を上げて姿を見せた。

すると、

「あぁ、なんだ、お前か。見苦しいところを見せてしまったな、とおるや翔子しょうこだったら引きずり回して腹パンの刑に処すところだったぞ」

誰よ、その子たち……。

の前に、対応が酷すぎやしないか、それは。

誠也は引きつった顔をしつつも、スマートなスマイル作り笑顔で

「そ、それは、隨分の仲の良い人たちのようだね」

すると、風子は、きっ!と鋭い目つきで睨み、

「本気でそう思ってるのなら、その脳みそ脳外科とかで換してきた方がいいぞ、お前」

えぇぇ……こっわ。

その二人と何があったのさ……。

ていうか、

「最近の脳外科ってそんなことできるの!?」

風子は先ほどまでの怒った表が噓のように今度は満面の笑みに変わった。

そして、

「あはははっ!そんなの私も知らんっ!」

えぇぇ……。

ほんと、無茶苦茶な子だなあ。

けど、やっぱり、守ってあげたいと思った。

何から?どうして?

それは、まだよくわからないけれど、とにかく、

「あの、前にさ、僕、君のせっかくの申し出を斷っちゃっただろ?」

風子は頷く。

「でも、やっぱりこの屋敷で働かせてしいんだ」

すると、風子の目が輝いた。

とても嬉しそうな様子である。

なにせ、飛んで跳ねてやったー、やったー!

と、喜んでいるのだから。

何歳なのだ、この子。と、おそらく同い年であろう誠也がそう思っているとも知らず、風子はただ喜び続けた。

そして、やがて風子の喜びの舞も終わり、

「いいだろう、貴様をこの[櫻 風子]直屬の執事にしてやろう」

……え?

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