《高一の俺に同い年の娘ができました。》四話 俺の嫁と運命

俺は目をごしごしとぬぐい娘を見ると怪訝な顔をしている。まずい、変なところを見られてしまった。

父としての威厳を保たねば、

「ゴホン!じゃあ次の質問いいか?」

「はいどうぞ~」

ゴクッとつばを飲み込む。この質問は極めて重要だ、これは俺の未來に関わってくるからな。

「じゃあ単刀直にきくが……俺の嫁って誰?」「おっしえな~い!」

食い気味で答えてきやがった。ニコニコとした顔をで答えてくる。いや、ニヤニヤの間違いか。

「なんでだよ、教えてくれてもいいだろうが」

「ブッブー、ダメでーす。そんなこと教えませーん」

「いいじゃんかー」

「ノーノー、ダメなの!なぜなら私はお父さんのラブコメを見るためにここに來たといっても過言ではないからね!!」

「せめてヒントだけでも!!」

「それ以上聞くと、さっきのノート、ネットに拡散するよ?」

「すいませんでしたっ!!」

俺は勢いよく土下座を敢行する。こういう時は素早さが重要だ。

「わかればよいのだよ。お父さんはお父さんのラブコメを頑張ってね。ほ~ほっほ」

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そう言って高笑いを決め込んでくる。娘よキャラがぶれてるぞ。

本當は知りたかったが、まぁ仕方がない。あのノートを持ち出されてしまっては諦めるしかないな。俺の嫁=この子の母親ってことだから期待はできるはずだ、大丈夫俺の未來は明るい!

けどそうなってくると、

「なぁ、それって大丈夫なのか?」

「ん?なにが?」

「俺がもしも奏の母親と違うと結婚でもしたら、その、奏は大丈夫なのか?」

「ああ~、なるほど、タイムパラドックスってことか……」

「そういうこと」

そう、俺がこれからしていくことの結果によってはタイムパラドックス、時間的な矛盾というもの生じてしまうかもしれない。

「それは…わからないかな?」

「まぁそうだよな」

何も知らずにここにきて知っているはずもないか。

「まず、お父さんがママと結婚しても私が生まれるとも限らないしね」

「はっ?」

「だってそうでしょ?お父さんとママがくっついたとしても私が生まれる運命なんて決まってないんだから」

「はっ?いや、でも……」

「そもそも、運命なんてそんなんものでしょ?まずこの世界に私が來たってことでもうすでに運命が変わってるってことだし、

もしかしたらもうすでに私が生まれる運命なんて自そのものが、なくなってるかもしれない」

「それは……」

俺は呆気にとられてしまう。

(この子は自分が何を言ってるのか理解しているのか?)

そのせいで俺はついむすっとした表になってしまった。

「どうしたの?」

「奏、お前自分の言っていること、ちゃんと理解して言ってるのか?」

「もちろん」

「じゃあなんでそんなに笑顔なんだ?」

「へっ?」

そう言って奏はきょとんと首をかしげる。かわいい。

が、今はそのことじゃない。

俺が言いたいのはもしかしたら、自分の存在が消えてしまうけどいいのか?ということである。

そう、死ぬのではなく消えてしまうのだ、存在そのものが、神山 奏という一人のの子がいたという現実が。

「お父さんの言いたいことはわかるよ。たぶん私の存在がなくなるかもって言いたいんでしょ」

「そうだ」

「そのくらいちゃんとわかってるよ」

「だったらなんで……?」

「んーとね、私こう思うんだ。運命なんてそんなものじゃない?って、」

「運命…なんて、そんなものは些細なことですぐに変わってしまう、誰かが今日たまたま寢坊をしちゃったーとか、道端の石に躓いて転んじゃったーとか、もしかしたらそんなちっぽけなもので変わってしまうかもしれない、とても不安定で曖昧な未來」

「そんな、たやすく変わるもの。だから変わってしまう未來、変わってしまったもしかしての未來も全部ひっくるめて運命って呼ぶんじゃないかな?」

「……」

「もしかしたらパパと私のママが結婚しても私は生まれないかもしれない。私じゃない誰かが生まれてくるかもしれない。逆にパパと私のママじゃない人が結婚して、私が生まれてくる可能があるのかもしれない。そんなこと誰にも分らない」

「だから!そんなわからないことを考えても無駄無駄!それよりも今を楽しまなきゃ♪」

「この世界に來たってことはお父さんの高校時代が見れるってことだよね~、父親の若かりし頃の青春ラブコメを見れるなんて、私はもううっきうっきでがはちきれそうだよ~」

そう言って笑う奏の顔は悲壯は一切なく、本心から言っているようだ。天使、いや神のような笑顔を咲かせる奏は世界で一番の輝きを放っている。

「な~んてしクサイこと言ったけど、私はお父さんがママを選ぶって信じてるし、それにもしほかのの人とくっついても、それはそれで面白そうだからそれでよし!私はお父さんのラブコメを見れるんだったら悔いはなし!」

そう言って力こぶを作る……全然作れてない。

親からしてみれば、自分の子どもが消えても構わないなんて考えを持っていたら悲しくなるだろう。しかし俺はむしろこの子が立派に育っているようでなんだか誇らしく思えた。

俺が何の反応も示さないで黙っているので、急に恥ずかしくなったらしい、顔をゆでだこのようにあかくし、

「あっれ~、おかしいなー、もしかして私すべちゃったじ?私としては百點満點の模範解答にパパからの熱~いハグが來ると思ってたんだけどなー」

テレテレと話す姿はさっきまでの雰囲気が噓のようで、

「くっ、ぷっ、あはっ、あははははっはははーー!!」

つい笑ってしまった。

「あー、お父さん私のこと笑ったー!!娘のこと笑うなんてサイテ――!!」

そう言ってぽかぽかと毆ってくる。涙目で必死に腕とポニーテールがく姿はとてもかわいらしく、逆に俺の笑いのツボを押す。

「も~、えい!!」

「ごふっ!!」

どうやら本気で照れてるらしい、ぷんすかーと怒りながらボディブローを放ってきた。……表現と行が一致してないよ?

「もう!お父さん笑いすぎ!」

「ゴッホ、ご、ごめんて、何というか娘が立派に育ってるようでうれしくってな」

「ふんっ、そうやって言って本當は笑ってるんでしょ!?」

「そんなことないって、むしろかっこいいと思ったよ」

「ほんとうに……?」

「ほんとほんと」

「うー……」

そう言ってうねる姿を見るとまた笑えて來てしまう。いかんいかん、娘の立派な姿を笑ったりなどしては……

「まぁ私も消えたくはないから、特別に大ヒント!お父さんとママが初めてであったのはママ曰く高校のときらしいよ!」

「なに、本當か!?」

「ママがそう言ってた」

「なるほど」

「お父さん、明日が學式なんでしょ?頑張ってママとラブコメってきてね!!」

「なあ、もう報は……?」

「だーめ、これ以上言ったらお父さんのラブコメじゃなくなちゃうモン。私はお父さんのノンフィクション、ノーストーリーの青春ラブコメが見たいの!!」

結局奏はこれ以上のヒントはくれなかった。

「さーてママはどんな子でSHOW!!」

そのあと俺たちは二人で俺の部屋と殘った部屋の荷の片づけをした。

ちなみに奏の部屋は俺と一緒、なんてことはできないので、もともと余ってて帰ってきたときの両親の部屋にする予定だった部屋を使ってもらうことにした。

なんでも25年後でもここに住んでいるらしく荷の配置が思った以上にスムーズに終わった。配置もなんだかしっくりとくる、今さらながら未來から來るってこういうところはチートだよな。

片づけがあらかた終わったところで俺たちは引っ越し祝いということで、そばを食べ、お風呂にって寢た。

……ちなみに風呂は奏からった。汚いとか言われても嫌だしな。それより、所にほかってあった下著が問題であった、俺のことを気にする様子もなくほっぽってあった下著は父親の俺相手にもものすごい効果を放ってきた。

俺が父親としてまず最初にすることはこれを直させることだな……

そして風呂にり、さあ寢ようかというところで、

「なぁ、そういやさっき俺のことをパパって言ってなかったか?」

そういうと奏は新たな報を渡してくれた。なんでも、俺の嫁は同じ高校でらしい。

もうし引き出そうと思ったのだが、今度は俺の黒歴史ノートを取り出し拡散すると脅してきたので無理だった。

ははっ、あれを出されたら速攻でDO☆GE☆ZAさ。……早くあれを沒収せねば……

そんなこんなで布団にった俺の瞼はすぐに落ちていった。いきなり非日常をこれだけ験し思ったよりも疲れたようだ。

そうして俺と娘の初めての日は終わった。

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