《高一の俺に同い年の娘ができました。》六話 馴染
閑靜な住宅街を歩いて十五分ほどして目的の高校まで來た。校門の前は俺と同じ新生と生徒會?のお手伝いらしい上級生っぽい人がごった返しの狀態でにぎわっていた。
もう散りかけになってしまっている桜の花がしずつ、しずつ風に乗って飛んでいき奧の校舎を目指してゆらり、ゆらりと舞う。
ここが今日から通うことになる高校か……
校門の外からこれから三年間通うことになる景を眺めているといきなり誰かに背中が叩かれた。
「おっはよ~!優!」
「朱梨か……」
「およっ、優どうしたの?元気ないじゃん」
そう言ってし茶髪の混じった髪のツインテールがぶんぶんと、持っているバックを振り回している……こいつ……いや、彼は俺の馴染の蒼井 朱梨だ。
やっぱりこいつか。
こいつと俺はいわゆる腐れ縁というやつである。小學校の時から一緒で、この春に引っ越す前は家が近所だったということでしょっちゅう一緒に遊んだ仲である。
「俺は元気がないんじゃない。目の前にいる馴染の將來を心配しているんだ」
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「えっ?どうしたの急に?」
「お前も高校生になったんだ、もうちょっとの子らしくというか、慎みを持て」
「え~何言ってるのよ、私ほどの子らしい子なんてなかなかいないよ!」
そう言って、あはんっとにしなを作る。しかし、現実は殘酷かな……強調するために張られたのあたりはその、なんというか、平野である。丘ですらない、しっかりと平野である……
それでも、ほっそりとしたのラインはの子らしく、こいつらしい魅力を引き出している。まったく、道端で何やってるんだよ。
「そういうところを言ってるんだよ……」
「えっ、どういうこと?」
きょとんとした顔で聞いてくる。なんだよ、一瞬かわいいと思っちまったじゃねーか。
何かよくわからないがしイラッとしたので、とりあえず忠告もかねて、軽くデコピンをしてやる。
「あたっ!?何すんのさ!」
「とりあえずそういうことは外ではやるな、被害者が増える」 
「え~、なに被害者って、ひどくない!?」
何って被害者は被害者だ。ほら見ろ、あそこの新生っぽいやつとか、こっちに見とれすぎてどぶの側に落ちてるじゃねえか。
そこら中から「がんっ」、「ごんっ」といった鈍い音が聞こえてくる。この現象はもはや災害レベルだ。歩く事故製造機である。歩きスマホなんかよりずっと危ない。
こいつはそう、自分のことがいまいちわかってないのである。俺は見慣れているからともかく、こいつは客観的に見てかなりかわいい部類にる……らしい、俺の友人曰く。中學時代には學年の約半數が、返り討ちになったらしい。
しさが殘るが活発で社的な格と常に笑顔というこいつのモットー、さらに天然な格というのが、まだ心に傷を負ってない純粋な年たちと次々と勝手にフラグを立てていき……(というか、男が立ったと勘違いしたのだが)が、本人はそんなつもりは一切なく次々と薙ぎ払われたのだ。
そんなリアル天然小悪魔、フラグ建設士、版ラノベ主人公、それがこいつ蒼井 朱梨だ。
しかし、俺の目には馴染補正がかかっているらしく、かわいいとは思うのだが、そんなに騒ぎ立てるほどではないと思う。というか、絶対うちの娘(十五歳)のほうがかわいい!!そこは譲れん!
デコピンされた箇所を抑え、メソメソと泣き真似をする。何歳のつもりだこいつは……
「お前、いったい何歳のつもりだ?」
「メソメソ……」
「お~い、朱梨さんや~い!」
「うぅ、しくしく……」
泣きまねをしながら、徐々に近づいてきて頭を向けてくる。これはこいつが俺にやってくる、『頭をなでてほし』のサインだ。昔からこいつは何かあるごとに泣きまねをして、その後こうして俺に頭をでてやったものだ。
小學校高學年ごろか、思春期にり始めた頃くらいから互いに恥ずかしくなって回數こそ減っていたが、それでもこうしてたまーに要求してくるのである。
こいつの泣きまねは目の前から見ている俺には演技だとわかるが、遠目から見るとマジで泣いているようにしか見えない。なので、こいつの泣きまねを大勢の人間にみられるのは非常にまずい。やめさせる方法はただ一つ!頭をなでるのだ!
「よしよし、すまんかったって」
今日は學式だからだろう、いつもより丁寧にセットされた髪がれないようにそーっと、やさしく頭をなでてやるとだんだん泣き聲がよわまっていった弱まっていった。
頭をなでるのはいいんだが、これはあんまり外でやりたくないんだよ。これをやった途端、周りの男子たちからものすごい負のオーラが飛んでくるからな。中には殺気のようなものを飛ばしてくるやつもいる。恐ろしや……
「えへっ、えへへへへ!」
「よ~し、よ~し。いい子だ。被害者は言い過ぎたな(被害者なんて今更だもんな)」
「そうだよ!ひどいよ!」
「わかった、わかったって」
「わかったなら、もっとでて!」
「はい、はい」
ワッシャ、ワッシャとでる力を強める。
「うが~、なにするんじゃ~」
「何って、でてるだけだぞ」
「そんな強くやったら、髪がれるでしょうーがー!!」
「あがっ」
長差のせいでにぞ落ちにった頭が俺のきを止める。
「全く」
暴にでたせいでしれてしまった髪をササっと整えているともう一つ、よく聞き馴染んだ聲が聞こえてきた。俺のせいなのか、理不盡!
「おーい、そこのご夫妻。君たちは、ご夫婦そろって登校かな~?」
「げっ!」
「いや~、いつも道り朝から仲睦まじいご夫婦だことで」
「「誰が夫婦だっ!」」
「ほ~う、新學期早々うらやましいですな~」
「「だから違うっての!!」」
ニヤニヤしながらからかってくるチャラい男、こいつも俺の馴染で平沢 玲央という。
こいつは、見た目の通りチャラ男だが、そこまでチャラいということは無く、はしゃいだりするのが好きな騒がしいやつだ。
こいつとも小學校のころからの腐れ縁で、昔はよく一緒にばかやった仲である。
基本は気のいいやつなのだが、
「えっ、違うの?じゃあ優よ、一緒に旅に出ようではないか」
「旅~?」
「そうっともっ、旅さ!素敵なの子を探すという崇高な目的の果てしない旅をっ!!」
ドドーンと決めポーズをばっちりと決めて言うが、周りをよく見てみろ。子ドン引きしてるぞ。
「優に何てこと教えとんのじゃあーーー!!!」
「じゃらんっ!!」
なんて馬鹿なことを言ってるので朱梨の対玲央専用のローリングソバットが飛んで行った。うん、自業自得……なのか?
まぁ、こんなことはいつものことなので放っておく、強いて言うならこの後學式なのに制服は大丈夫かな?くらいは心配した。
「もう、あいつのことはほっといていこ!優」
そう言って自然に俺の袖をつかみ引っ張ってくる。その力につられ、俺は學式會場となっている育館へと向かう。
「お前、昔から玲央のことやけに敵視するよな。なんでだ?」
「そんなもん、あいつが全部悪いからじゃん。優にあんなこと教えたりするとか」
「いや、でもあれってあそこまでするか?」
そう言うと袖をつかむこいつは急に顔を真っ赤に染め、
「い、いいのよ、あいつのことは。それよりも早く學式行くよ!」
「おっおう」
結局教えてもらえなかった。昔は三人仲が良かったのだが、いつからか急にこいつが玲央のことを敵視し始めたのである。さっきのようなことも割と日常茶飯事だ。特に俺のいる前ではそれが強い気がする。
……いや、それ以外は俺は知らんが。
朱梨はプイっと顔を俺から背け、俺の袖をつかむ力を一層強くする。
はぁ、
「まぁ、なんかあったら俺に言え。頼りねーかもしれんがこれでもお前の馴染だ。かわいい馴染のためだったら何とかしてやるよ」
「ふっ、ふーん。あっそう。その時は頼むわね……かわいい、かわいいね。ふふっ♪」
「?どうした?」
「なんでもない!!それより早く行くよ!」
そう言うと、こいつはつかんでいた俺の袖を一旦離して、今度は俺の手を取ってつかんでくる。こうするのも久しぶりだな、いつ以來だろうか。俺が軽く手を握り返してやると倍の力で握り返され、走り出した。
何故だろうか?俺の手を摑み、目の前を走っていくこいつ……彼のほんのりと赤く染まった橫顔は今まで見た中で一番輝いて、可憐に見えたのだった。
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