《うちの姉ちゃんはこわい》雨音

サリ姉が出発して、何日かが経ったある日のこと。

この日は朝から気が滅るような雨だった。

マリ姉はオフで、ユリ姉も雨で練習が休みになり、早い時間に帰ってきた。母さんはいつも通りいない。

だけど、雨の音がうるさくじるくらい靜かだ。同じリビングにいるのに、お互いに言葉をわすことはない。

でもおれは、サリ姉と約束したんだ。

そういう時は、おいしいものを食べると笑顔になるって言う。

おれだって、マリ姉の手伝いをしてきたし、近くで見てきた。たぶん、できるはず。

そう思い立って、夕食を作ってみることにした。

マリ姉の部屋からこっそり料理の本を借りて、今ある食材でできそうなやつを探してみる。

……うん、カレーだな。カレーなら失敗することもない。

まずは、えーっと、食材を切るのか。一口大って、どんくらいだ? おれの一口は……こんくらいか。

そしたら次は、炒める。うわぁ、火使うの初めてだけど、大丈夫かなぁ。

コンロをつけてみる。……あ、うちIHだから火つかないわ。

とりあえず、これで炒めてっと。これ火通ってるかな。でもあんまりやると焦げそうだし。

「ハルちゃん、それ火強いんじゃない?」

「え? あ、マリ姉」

見てみると、最大に設定していた。し弱めて、中火くらいにする。

「別に作ってくれなくていいのに……」

「いいんだよ。たまには作らせてよ」

「わかった。でも危なくないように、ここで見ててもいい?」

「いいよ」

炒め終わったら、鍋に水をれてふっとうさせる。

よしよし、いい調子。あとは材料を煮込んで、ルウをれるだけ。楽勝だ。

「ねぇ、ハルちゃん。今日は急にどうしたの?」

ルウをれてかき混ぜながら煮込んでいると、マリ姉が口を開いた。

「なんか、嫌な空気だったから、おいしいもん食べたら元気でるかなって思ってさ」

おいしいもんが作れてるかは、わからないけど。

「……これ食べたら、ユリ姉も元気出るかな」

「大丈夫。元気になるよ。きっと」

「ちょっと、なでるなよ。髪のるだろ」

よし、できた。あとは皿に盛って……。

「あ……。ご飯炊くの忘れてた……」

「まったく……。そうだろうと思ったから、私が炊いておいたよ」

「ユリ姉!」

気を取り直して、お皿に盛り、テーブルに並べて、完だ!

「いっただきまーす」

マリ姉とユリ姉が一口目を食べ、その想を聞くまでおれは食べられない。

「おいしい~!」

「ありがとうね、ハルちゃん♪」

いつの間にか、雨音は聞こえなくなっていた。

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