《うちの姉ちゃんはこわい》祝賀會

玄関のドアが開いて、誰かが帰ってきた。

「ただいま」

その聲の主が廊下からリビングへつながる扉を開くと……。

「優勝おめでとう!」

「お疲れ、桜莉菜~!」

と口々に賞賛と労いの言葉を飛ばした。

「あ、ありがと……。何これ……」

おれが紙でつくった裝飾でリビングを彩り、テーブルにはマリ姉とユリ姉が作ったごちそうが並ぶ。

「高校最後の大會でしょ? みんなでその栄譽を祝ってあげようと思って」

「柚莉菜の中學最後の大會は?」

「私は全國まで行ってないし……」

なんて、笑顔を見せるけど、ユリ姉だってきっと悔しくないわけはないんだ。

「とにかく、シャワー浴びたらおいで」

と、マリ姉がサリ姉を場に押し込んだ。

サリ姉が戻ってきて、ようやくパーティーの始まりだ。

急いで來たのか、まだ髪がしっとりしている。

「桜莉菜様、こちらをどうぞ」

なんて気取りながら、おれはサリ姉のグラスにジュースを注ぐ。

「なに、気持ち悪い……」

「桜莉菜、何食べる? 取ろうか?」

「いいよ、自分でやる」

「主役なんだから、いつもみたいに偉そうにしてていいんだよ?」

ユリ姉にそんなことを言われているのを、マリ姉はおかしそうにくすくすと笑っている。

「でも、決勝戦もあっさり勝っちゃうなんて、さすがサリ姉だよ」

「言っただろ、あたしはどこにも負けないって」

そう言って、から揚げにかじりつきながら不敵な笑みを見せる。

やっぱり、サリ姉はカッコいい。

ここでおれはユリ姉に目で合図を送る。

「桜莉菜、これ、みんなで選んだの」

ユリ姉が手渡したのは、両腕に抱え込めるくらいの黒い紙の包み。

「……開けていい?」

みんなが黙ってうなずく。

包みを破かないように慎重に開けると、出てきたのは、黒のグローブ。

「わぁ……ありがとう……!」

サリ姉のあんなに溫かい笑顔、久しぶりに見たかもしれない。

「桜莉菜、今のグローブ、中學の時から使ってるやつでしょ? 思いれもあるかもしれないけど、プロに行くならスペアもあった方がいいと思って」

はおれとユリ姉で選んだんだぜ」

「ありがとう!」

おれとユリ姉はサリ姉に抱きしめられる。って、ちょっと苦しい。

「……で、黒にしたのは何で?」

「い、いや……」

「腹のといっしょって……」

「……どっちが言ったの?」

お互いに相手を指差す。

「まぁ、別にいいけど。ちょうど新しいの買おうと思ってたし。本當に、ありがとうね」

いつもこうなら……って、本當思うよ。

    人が読んでいる<うちの姉ちゃんはこわい>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください