《うちの姉ちゃんはこわい》午後の部
ちょうど一周したところでおれたちもプールから上がって、サリ姉たちのところへ戻る。
と、開口一番に怒られた。
「遅い! ちょっと水浴びてこいっていったじゃん。どこまでいってんの?」
浮きはとっくに膨らまし終わっていて、マリ姉も戻ってきていた。
「ごめん……。あ、ユリ姉の友達に會ったよ」
「シニアの子?」
「うん、まぁ」
「柚莉菜、友達いたんだ」
「失禮ね。桜莉菜よりはいるつもりだけど?」
そんな言い合いをよそに、マリ姉は買ってきてくれた焼きそばをくれる。
「もうお晝だから、これ食べてから、また行こう?」
「うん。マリ姉も、ごめん」
「いいって」
「それから、ありがとう」
マリ姉はふふっと微笑んで、自分も手元の焼きそばに箸をつけた。
外だと本當にいいお姉さんなじだな、マリ姉は。
「水、冷たかった?」
「気溫もあるし、そんなにじなかったけど?」
「そっか。じゃああたしもるかなー」
サリ姉はそう言って、ラッシュガードのファスナーを開けると、中は淡いピンクのビキニだった。
お晝を食べ終わって、後半戦。
今度は波のプールだ。流されまいとユリ姉にしがみつく。
と、そのおれにサリ姉がしがみついてくる。
「やっぱ結構冷たいじゃ~ん!」
どんな溫度覚してんの? この人。
すると、正面からマリ姉が、ユリ姉とサリ姉の手を取って円陣みたいになった。
波に揺られてたゆんたゆんするのがヤバい。マジヤバい。
っていうか、これを他のやつに見せちゃいけないと思う。
ひとしきり遊び疲れたところで、著替えて車に乗り込む。
「あーもう、最悪。なんなの、あいつら」
サリ姉が悪態をついたのは、ナンパしてきた二人組の男たち。
おれが割り込んだことでその場をうやむやにできたが、あれからサリ姉は帰りたがっていた。
「サリ姉が人だからだよ」
「それは知ってる。そうじゃなくて、あのい方よ」
知ってるんだ……。
「子貓ちゃんとか言っちゃって、今時流行んねーよ」
たしかに、サリ姉はどちらかと言うとトラかライオンだし。
「おい、ハル。なんか失禮なこと考えてないか?」
なんで心が読めるんだ。
「か、考えてないよ。それよりユリ姉……は寢ちゃってる」
「はしゃぎすぎなんだよ」
迷かけちゃったのかな。疲れるようなことさせちゃったのかもしれない。
「姉ちゃん、運転しながら寢るなよ?」
「わかってるって」
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