《うちの姉ちゃんはこわい》夏祭り

「ハルちゃん、準備できたー?」

長い黒髪を後ろで結わえて、朝顔柄の水の浴を著たマリ姉が、おれの部屋に顔を出した。

「うわ、すごい似合ってる」

「ホントー? ありがとう。ほら、行こう?」

マリ姉に手を引かれて、おれは玄関を出る。と、外には柄の黃い浴を著たユリ姉、桜柄の紺の浴を著たサリ姉が待っていた。

髪型のせいか服裝のせいか、今日はみんな、いつも以上に大人びて見える。

「さ、行こっか」

今日はマリ姉と手をつないで歩く。

ユリ姉とサリ姉はなんだかんだ仲がいいし、たまには二人にしてあげよう。

マリ姉は背が高くて、おれはマリ姉の肩にも屆かない。

周りからは、どんな風に見えるんだろう。若い親子、かな。

「ハルちゃん、今日は私と一緒でいいの?」

「うん。マリ姉と一緒にいるよ」

「ありがとう」

ま、外でなら安全だしね。

會場に著くと、すでに人でごった返していた。

「迷子にならないようにね?」

「わかってるよ。マリ姉の方こそ」

「何か食べたいものとかある?」

「もう、お母さんじゃないんだからさ。もっと自然でいいのに」

おれの言葉に、マリ姉は驚いた顔を見せた。そんなに意外だっただろうか。

「ほら、見てよ、あの二人」

おれが指差したのは、紺と黃の浴の姉妹。

「はい、桜莉菜の分」

そう言って、黃の彼は手にしたりんご飴のうち一つを、紺の彼にあげる。

「ありがと。何か取ってほしいもんある?」

どうやら的をやるようだ。

「ん~……、あ、あれがいい!」

い彼が指差したのは、小さなテディベアのストラップ。

「よし、あたしに任せときな」

よーく狙って、一発で仕留める。さすがだ。カッコいい。

「ほらよ」

「わぁ、ありがとう!」

何あのイチャイチャっぷり。いつもの険悪ムードはどこへやら。

「何あれ……。完全にカップルじゃん……」

マリ姉もちょっと引くくらいのようだ。

「でも……なるほど」

何かを納得したのか、マリ姉はすぐそこの屋臺に寄っていって、すぐに戻ってきた。

「はい、ハルちゃんの分」

手渡されたのは、ラムネ。

「座ろっか」

「うん」

しかしながら、へたくそでなかなか開けられない。

「お姉ちゃんに貸してごらん」

すると、マリ姉がポンと栓を押し込み、見事に開栓させた。

「すげぇ! マリ姉、ありがとう」

「ふふっ、いいのよ」

優しく頭をなでられる。だから、こういうのは違うんだって。

「あ、そろそろね……」

マリ姉が不意に時計を見てつぶやいた。

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