《うちの姉ちゃんはこわい》Happy Birthday!

三人の姉たちは、ドキドキしながら彼の登場を待つ。

彼が風呂にっている間にささやかな飾り付けをし、ごちそうを並べ、真ん中にはケーキ。

ケーキのろうそくは十二本。

リビングのドアの前に人影が見えて、絶好の一瞬を逃さないように、彼たちは息を飲んで構えた。

そして、扉が開く。

「お誕生日、おめでと~う!」

三人の鳴らしたクラッカーの紙ふぶきを浴びながら、彼は照れくさそうに、ソファに腰を下ろす。

「ハルちゃん、十二歳の誕生日、おめでとう!」

「どれから食べる? 全部お姉ちゃんたちが作ったんだよ?」

「まぁ、まずは一杯」

と、桜莉菜がハルのコップにジュースを注ぐ。

「あ、ありがとう」

「ところでさ、ハル。この前のやつだけど……」

「あ、ああ、あれ。おれの夢を思い出したんだ。おれの夢は、姉ちゃんと結婚することだって」

ハルは恥ずかしげもなく繰り返した。

「そう、それ。この國の法律じゃ、三人と結婚できないのよねぇ。だれか一人に決めてくれなきゃ」

「そもそも、この國の法律じゃ姉弟は結婚できないんだけど?」

「……そうだったんだ」

「大丈夫。その辺は時間が解決してくれるから。で、誰にする?」

なぜか桜莉菜が一番興味津々だ。

ハルはし考えて、答えを絞り出した。

「おれはやっぱり……」

と、言いかけて、桜莉菜が遮る。

「あーやっぱいい。聞きたくない」

「なんだよ、自分から聞いといて」

それより、と茉莉菜がチケットケースをハルに差し出した。

「はい、誕生日プレゼント♪」

「え、なに? まさか、お金?」

「開けてみてのお楽しみだよ」

「あ、じゃああたしも渡しとこう。はい」

桜莉菜も、同じようなチケットケースを差し出す。

「私も。はい、お誕生日おめでとう」

柚莉菜もまたしかり。

「ありがとう。マリ姉、サリ姉、ユリ姉」

ハルが一つずつ開けてみると……。

“永妻茉莉菜を一日好きにできる券”、“永妻桜莉菜が一日何でも言うことを聞く券”、“永妻柚莉菜が一日あなたのものになる券”がそれぞれ一枚ずつ封されていた。

「って、パクるなよ!」

「柚莉菜のやつ、狙いすぎでしょ」

「何でみんなおんなじこと考えてるんですか!」

一見バラバラに見えても、これが姉妹というやつなのかもしれない。

「ありがとう。大切に使わせてもらうよ」

その笑顔が、なんだか怖かった三人だった。

こうしてまた、三人の姉と弟の、ゆかいで幸せな日々が続いていくのだった。

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