《明日流星群が見れるそうです。》安曇:過去 〜前編〜

12月24日ある小さな町の病院で小さな男の子が産まれた。

長崎 安曇これは母がくれた名前だ。母は原因不明の不妊治でなかなか子供が出來ず、結婚8年目にして念願の子供だったらしい。

「長崎 千夏 (ながさき ちか)」

俺の母はとても明るい人で、とても優しかった。父は海外で働いていてなかなか帰ってくることができなかったので、母はあまり會うことの出來ない父親の分まで可がってくれた。

俺は最初、病弱で外では全然遊べてなかった。

そんな俺の唯一の楽しみ、それは毎週月曜日母と一緒に駄菓子屋でお買いをすることだった。

「いらっしゃい」

ピチピチのタンクトップを著た長の男がニコニコと笑いながら俺達にあいさつをしてくる。この男がここの店主、『橋本 凜子』おじさんだ。

おじさんは、母の昔の同僚だったらしく、この駄菓子屋に行くと、母とおじさんがそこそこ長い世間話で盛り上がっていた。

その間特にやることの無い俺は、店の小さな機でさっき買ったもらったお菓子をたんたんと食べ続ける。

すると奧の階段から小さなの子降りて來た。

さくらんぼの髪飾りを付けた2つ縛りのの子、これがあずきちゃんだ。

「あずきちゃんこんにちは」

俺の母が挨拶をするが、あずきはおじさんの後ろにひょいと隠れしまう。

「ほら、あずきもこんにちはしなさい」

「いいのいいの、あずきちゃん恥ずかしいもんね」

「ごめんね、こいつ慣れるまで結構時間かかるんだよ」

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「大丈夫大丈夫!あ、あずみ!あんたはこんにちは出來るよね?」

母に呼ばれ仕方なく俺はあずきに挨拶をする。

俺が挨拶をしてもあずきの反応は変わらなかった。

俺はさっさと先程の場所に座って、お菓子を食べ始める…が、なんだか落ち著かない…。さっきからずっと鋭い視線をじるのだ。その方を見てみると、あずきがナイフのような鋭い目で俺を睨んでいた。

この時の俺は、あずきとまだ話したこともなかったので、し怖い…。

俺は耐えきれず、あずきに聲をかけることにした。

「た、食べる?」

急に聲をかけられびっくりしたのかまたおじさんの後ろに隠れてしまった。

しばらくしてまた視線をじる。

俺は恐る恐る視線をじる方を見てみる…先程と違って次は寂しそうな目をしていた。

ここで俺はなんとなくあずきは、悪い人じゃないと思った。

聲をかけるとまた隠れられそうなので、次はあずきに近づいてみることにした。

俺はあずきの方へ小走りで近づくと、あずきは凄くびっくりした様子で店の奧の階段を駆け上がって行ってしまった。

「お、ちょいあずき!アッハハ、ごめんな安曇」

「あー安曇、あんたはタイプじゃないってさ」

そう言って母さんは笑う。

「んじゃ、もうそろ出ますわ」

「おう!またな安曇!」

俺はおじさんに手を振り、家に帰った。

それから俺はあずきと話してみたいと思うようになった。だから毎週駄菓子屋であずきに會ったら絶対に聲をかけ続けた。

最初の方はすぐ逃げられたし隠れられた、でも徐々に話も出來るようになった。

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「ねぇ、長崎くんがいつも食べてるそのお菓子味しいの?」

「え、あずきちゃんうんまか棒知らないの?」

「うん、パパが蟲歯になるからダメだって」

「食べてみる?」

「いいの?」

「1本好きなの選んで」

だがあずきはなにも取らない。

「食べないの?」

「だってお客さんのお菓子には手を出さないってパパと約束したから…」

「じゃあげる!」

そう言って俺はあずきにうんまか棒を1本強引に渡した。

「え、でも…」

「大丈夫だよ、僕があげるって言ってるんだから手を出したことにならないでしょ」

「確かに…!」

あずきは恐る恐るうんまか棒を口にした。

「なにこれコンポタージュの味がする…」

「これさ、普通に味ね?」

「うん、めっちゃ味い」

「じゃ次これも食べてみて」

「うん!」

友達がいない俺は、初めての理解者ができたじがして、とても嬉しかった。

數週間後俺らは一緒に2人で遊ぶようになった。

うのはだいたい俺で、俺が遊びにうとあずきはいつも嬉しそうについて來てくれた。

砂のダム作り、浮かんでる雲に名前をつけたり、カブト蟲を採ったり…俺らは沢山遊んだ。

そしていつもの様に砂場でダム建設をしていると、後ろでなにやら聲が聞こえる。

振り返って見てみると、1人の男の子が見えない敵と戦っていた。

「ねぇ、ちょっとあずきちゃん」

俺はあずきの肩を叩きながら小聲で言った。

あずきは振り向くと最近俺を見た時のように、鋭い刃のような冷たい目で見た。

「あずきちゃんまた怖い目してたよ」

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「え、ほんと?私人見知りでついやっちゃうんだよね」

「あの子なにと戦ってるんだろう?」

「ずいぶんと苦戦してるみたいだね」

俺達がそんな話をしているとその男の子と目が合ってしまった。

するとその男の子は息を切らしながらゆっくりと近づいてくる。

「はぁはぁはぁ…君たち…怪我はないかい?」

「は?」

「ここは危険だ、さぁ!俺が食い止めてるうちにはやく逃げろ…!」

言ってる意味がわからず俺は直、あずきは黙って口をぽっかり開いたまんまだった。

「なにをやってるんだ、はやく!グハッ!!」

男の子はわざとらしく倒れ、建設中のダムを破壊した。

「あ!」

ダムが崩壊した瞬間、今まで黙っていたあずきが聲を出した。

「ちょっと!あんた、なにしてくれてんのよ!」

あずきは勢いよく立ち上がり、顔を真っ赤にして怒った。

「だから…今怪人が、、、、」

「怪人??なにそれ、そんなの本當にいるわけないでしょ!ほんとばっかじゃないの!!」

「でも、、」

「でもじゃない!ほんとに怪人がいるとしたらその怪人はあんたよあんた!せっかく頑張って作ってきたダムを壊したんだからね!」

見事に論破された男の子は涙をため、それを流さなまいと必死にはを食いしばってこらえている。

そんな男の子に対して、攻撃の手をゆるめないあずき。

「だいたいあんたは……」

「まぁまぁ!一旦落ち著こうよ」

俺は慌てて止めにった。

「でもせっかくあともうちょっとで完だったのにさ!」

「また作ればいいじゃない……ね!」

「もう私帰る!」

「え!?待ってよあずきちゃん!」

あずきはその後戻ってくることはなかった。

「だ、だいじょうぶ?」

とりあえず男の子に聲をかけてみるも、下を噛み締めたままで、なにも答えてくれない。

困ったなぁ…。あずきちゃんを追いたい気もするけど、この男の子を放っておくわけにもいかんしなぁ。

「ごめん……。」

今にも消えてしまいそうなくらいに小さい聲で男の子は言った。

「だ、だいじょぶだよ!ほんとに!!」

「俺のせいで、お友達帰っちゃったし…。おれ….おれぇ…うわぁぁん!」

首の皮一枚でこらえてた涙がついに溢れ出してしまった。

そこから數分間泣き続けて、徐々に涙の勢いが弱まっていく…。

「だ、だいじょうぶ?」

「うん…」

「はじめまして!ぼく安曇、よろしく!」

とりあえず俺は元気よく未だ倒れたままの男の子に手を貸した。

「あ、ありがとう。おれは優斗…」

「ゆうとかぁ、じゃゆうちゃんね!」

「え?」

「あ、の子ぽいよね!苗字はなんて言うの?」

「やすもと…」

「んーじゃ、やっくんね!」

「や、やっくん?」

「うん!ニックネームだよ!ほら、僕って人の名前覚えるの苦手だからさ」

「ニックネームかぁ…」

これが俺の親友、優斗との出會いだった。

それから年月日が経ち、俺らは小學生になった。

 「はーい!じゃ、このカメラしっかり見てねー!!」

桜咲山の麓(ふもと)でに合わない大きさのランドセルを背よったあずきと俺は1本の大きな桜の前で記念撮影をする。カメラマンは俺の母でその後ろに、おじさんがニコニコと腕を組んで立っている。

あずきはカメラが苦手なのかギュッと俺の袖を握ってナイフのような鋭い眼でカメラを睨んでいる。

「あずきちゃん、怖い目してるよ」

俺が小聲であずきに伝えるが、全然直らない。

「じゃいくよー!いちたすいちはぁ〜、にーー!」

眩いとともにカメラの切る音が聞こえた。

「んーあずきちゃん顔怖いなぁー」

母は不慣れな作でカメラを確認して首を傾げている。

「ねーねー、これどう思う?」

母は後ろに立っているおじさんに聞く。

「おお、桜めっちゃ綺麗に寫ってるね」

「いや、そこじゃなくてあずきちゃん」

「んー、大丈夫いつもあいつこんなじだから」

「えーそうなのぉーもっと笑った方が可いのにー」

母は顔をしかめて、もう1回撮ろう!と元気よく言ったが結局2枚目の顔が笑顔に変わることはなかった。

蒸し暑い日差しが照りつける中、大きなタブレットを両手に必死に子供を探す男の姿が見える。

「ちょっとちゃんと撮れてるの?」

「ああ、大丈夫だあいつの走りをバッチリ撮っちゃうぞ!」

バン!!

スタートダッシュの合図がなりいっせいに走り出す。

は苦手でいつも最下位、その分勉強は結構出來たから友達から省かれることは無かった。

「ねぇ、どう?ちゃんと撮れた?」

「ああ、もちろんしっかり撮れて…あ、これ寫真になってた」

畫像の中には思いっきりブレた俺が寫っている。

「ちょっとぉーなにやってんのよ!せっかく安曇が頑張って走ってんのにさぁ!」

「あっはは、ごめんごめん」

この頼りなさそうに頭をかいている男が俺の親父

「長崎 辰徳 (ながさき たつのり)」

父は海外で働いていて年に1回程しか日本に帰って來れない。し鈍臭いところがあるが、思いやりが強く、家に帰って來た時は家族の誰よりもよくいてくれる。

そして俺の次のレースはあずきだ。

あずきは凄く自信の無い表を浮かべている。

「位置について!よーい」

バン!

スタートの合図とともにいっせいに走り出した。あずきはどんどん競爭相手を抜かしていき、圧倒的な差をつけてゴールテープをくぐった。

「わぁー、凄いよ!またあずきちゃん1位だ!」

母は自分の娘のように手を叩いて喜んでいる。

「凄いですね、流石あずきちゃんだ」

父が隣のテントにいるおじさんに話しかけた。

「でしょ!やっぱり俺の娘だけあるよなあ」

「ええ、うちの息子とは大違いだ」

「確かに!」

おじさんの言葉を聞いて父は「あはは」と苦笑いをする。

「辰徳さん、暑くない?よかったらこれ飲んで」

笑顔で父に、いいじに溶けたスポーツドリンクのシャーベットを渡してきたのは

「橋本 佳菜子 (はしもと かなこ)」

あずきのお母さんだ。普段はなかなかお店の留守番でこういう學校行事に行くことが出來ないが、佳菜子さんは元読者モデルで町では知らない人がいないくらいの人さんだ。

しかも、その貌は今だ健在という、まるで天使のような人だ。

そんなに飲みを渡された父は、自然と鼻の下がびる。

「ど、どうも」

「安曇くん頑張って走っていましたね」

そう言って父にニッコリと笑いかける。

「なんなんだその笑顔!まるで天使じゃないか!!」と思わず父は心の聲でんだ。

午前の部が終わりようやく待ちに待った晝食タイム!

周りの子供たちが一斉に勢いよく親のテントに向かっていく。

あずきに手を引かれ俺達も走り出そうとした時、下を向いたまま1歩もこうとしていない優斗の姿が見えた。

「あれ?やっくん何やってるんだろう?」

俺は1度立ち止まり、あずきに話しかけた。

「お母さん來てないのかな?」

「え、そうなの?」

「いや、分からないけどさっきからちょいちょいママ達の方見ながらまだかなって言ってたから」

「そうなんだ…。」

「ちょっと聲かけていこうよ」

俺とあずきは優斗の方へと向かった。

「やっくん、お母さん來てないの?」

俺が聲をかけると、ビクリと方を飛びあがらせた優斗は

「は、はあ?來てるに決まってんだろ!!」

そう言って優斗は保護者エリアに走って行ってしまった。

「ほんとにいるのかな?」

「いるからあんな走って行ったんでしょ。ながちゃん考えすぎだよ」

「でも…」

「いいから、はやくママの所に行こ!」

あずきにつられ、しょうがなく俺もテントに向かう。

テントの近くに行くとおじさんが大きく両手で手を振っている。

「あずきぃぃい!!1位おめでとうぉぉぉお!!!」

おじさんはとんでもない聲量でんでいる。

「辭めてよ!パパ!恥ずかしいじゃない」

「ガハハ!さすが俺の娘なだけあるよな!あんな差をつけてゴールしちまうとわ!!」

どうやらおじさんはあずきの話を聞いてないようだ。

「安曇も頑張ってたな!」

父さんが後ろから俺の両肩をがっしりと摑み普通の聲量で言う。

「2人ともお腹すいたでしょ!今日は佳菜子ちゃんと私のダブルパワーで味しい料理を作りました!」

母さんが一方的にあずき母と肩を組んで自慢気に言う。

大きな三段弁當の中は俺とあずきの大好ばかりで思わずテンションが上がる。

「唐揚げだ!」

「ねぇねぇながちゃん!塩昆布のおにぎりもあるよ!」

「じゃみんな一緒に「いただきます」するよ」

母が言い、俺達は急いで両手を合わせる。

『いただき……』

その時1人で階段に座っている優斗の姿が見えた。

「ちょっと俺行ってくる!」

食事前の挨拶が終わる直前にやめて、俺は優斗の方へと走って行った。

「やっくーん!一緒にご飯食べよ!」

優斗は肩をビクリと弾ませ瞬発的に顔を上げて、俺と目があった瞬間、目をゴシゴシと袖で拭いた。

「や、やぁ、、これはこれは長崎くんじゃないか」

「ながちゃんでいいよ」

「僕になにかようかい?」

「今日ね!お母さんが僕の大好きな唐揚げいっぱい作ってくれたんだ!」

「そ、そうか…それはよかったね」

「だから早く食べよ!」

「え、?」

優斗は一瞬嬉しそうに目を合わせたが、

「わ、悪いけど俺のママ待ってるからさ」

そう言ってうつむいた。

「でもまだ來てないんでしょ?」

「ま、まぁね、でもすぐ來るよ」

「じゃお母さん來るまで一緒に食べてようよ!」

「え、でも…」

「さてはやっくん照れてるな?」

「て、照れてなんかねぇし!」

「じゃ行こうよ」

「でもさ、あずきちゃんが嫌がっちゃうでしょ…。」

「え、あずきが?別に嫌がらないでしょ」

「だってたまにあずきちゃんすごく怖い目で俺を睨むんだ」

「大丈夫だって!俺にもたまにそのじの目向けるから!」

「そのじってどんなじの目なんですか?!!」

優斗が騒がしく俺の腕を摑んでいると

「おい!そこのヘタレクズ!!」

俺らの背後から仁王立ち姿のあずきがヤジをれた。

「ひぃ!」

あずきに気づいた優斗は弱々しい聲を上げて俺の後ろに隠れた。

 「あずきちゃん!やっくんも一緒にご飯いいでしょ?」

その瞬間優斗が俺の袖でを強く摑み、

「ながちゃん!!だからほんとに大丈夫だって!!」

そう小聲で俺にんだ。

「はぁぁ〜」

そのやり取りを黙って見ていたあずきは大きなため息をついて早歩きで優斗と方へ向かう。

あずきが近づくにつれて徐々に摑んでいる力が強くなっていく。

あずきは優斗の目の前に立って大きく手を上に振りかぶった。

振りかぶった瞬間、優斗はまた弱々しい聲を上げて頭を下げた。

優斗は次に襲いかかるであろう痛みに構えた。

しかし痛みがなかなか來ない。

直していた全神経を徐々に解き放していく。

そして頭に手が落ちてきた。

再び構えようとした時、

なにか暖かいものをじた。

そこには怒り、憎しみなどのが全く無く、

その手には純粋な優しいさで溢れていた。

あずきはポンポンと優斗の頭を優しくでた。

「え?」

優斗は思わずあずきに聞き返す。

「え、じゃないわよ」

「だってあずきちゃん僕のこと嫌いじゃないの?」

「は?何言ってんの?大っ嫌いに決まってるじゃない」

「そ、そうだよね…ごめん……。」

「大っ嫌いよあんたなんて、いつもはヒーローごっこやっていろんな人助けてるくせに、自分がほんとに助けてほしい時に平気なフリしてさ!だから……、、

だから、もっと私たちを頼りなさいよね。」

考えてもいなかった展開。

今まで生きてきて、こんなに優しくされたことはあっただろうか?

いつも蟲けらのような視線を浴びせられ、自分は誰にも相手にされないと思っていた。

だが、今はどうだ?

こんなにも自分を心配してくれて、こんなにも優しくされて、、、

「ゔん…!」

優斗は下を強く噛んで泣いた。

「いつまでも泣いてるんじゃないわよ!あんたがもじもじしてるせいで塩昆布のおにぎりなくなったらタダじゃ置かないからね!」

そして俺達はテントに戻り、大好の唐揚げに食らいついた。

「そろそろお腹いっぱいになってきたぁ」

俺はそう言いながらテントの中で寢そべる。

「ええー、もうお腹いっぱいなの?全然食べてないじゃない」

あずきが呆れたように、食べかけだった俺の唐揚げを摘む。

「そんなダラダラしてると唐揚げ全部食べちゃうからねー」

「いいよぉ〜食べちゃってください。」

「まったく、しは優斗くんのこと見習ったらどうですか〜?」

よほど腹を空かせていたのか、優斗は食べる手を休めることなく食い続ける。

「やっくんは凄いね、俺そんなに食べれないや」

「だって味しいんだもん、ながちゃんも食べなよ」

「いや、もう俺はお腹いっぱいでなにもらないよ」

すると、優斗が誰か見つけたのか膝立ちをして、校門の方をチラチラと見ている。

「ん?どうした?」

俺はゆっくりとを起こし、優斗の視線をなぞる。

よくわからない。

「やっくん、どうしたの?」

「お母さんが來たかもしれない」

「え、ほんと!良かったじゃん!」

しかし、優斗はなんだか浮かばない顔をしている。

「うれしくないの?」

「え?あ、ああ、嬉しいよ!じゃ俺お母さんの所行ってくるね!」

そういうと、優斗は勢いよくテントを出ていった。

午後の部も終わり、長ったるい閉會式をなんとか終えた俺とあずきは一緒に家に帰る。

お揃いの水筒を方から下げて、蒸し暑いコンクリートの上を歩く。

「今年もうちのクラス優勝出來なかったね」

あずきが上を向いて呟いた。

「でもあずきちゃんかけっこで1位取ったじゃん。凄いよ」

「ん〜でもあんまり嬉しくないなぁわたし」

「なんで?」

「だっての子なのに足速いってなんか変じゃない?」

「そうかなぁ?僕は1番になったことないから羨ましいけど」

「何言ってんのよ、あんなにテストの點數いいくせに」

「あれはたまたまだよ」

「ふーん、まぁどうでもいいけど」

「もうそろそろであずきちゃんのお家だね」

「そうだね〜」

「今日はいっぱい運したからゆっくりお家で休んでね」

「それは長崎くんもでしょ」

「ながちゃんって呼んで」

「え?」

「長崎くんじゃなくてながちゃんがいい」

「面倒くさ、わかったよ"ながちゃん"」

「じゃまた學校で」

「うん、またね」

あずきと離れ、1人で歩いていると後ろかものすごい衝撃をけた。

「あ!!」

俺はこの衝撃に耐えられず、前から豪快に転んだ。

「う、うう。」

俺が目を開けると、白髪のの子が俺の橫に倒れてた。

「ねぇ、君大丈夫?」

俺はゆっくりと起き上がり、の子のを揺らす。

「08663…08663…08663」

そうの子は小さく呟いて顔を埋めている。

算數の勉強…?

テストでも近いのかな?

あまり聲をかけたら必死に暗記しようとしてるこの子に申し訳ないよな。

「も、もう僕は行くけど…」

「08663…08663…」

「じゃ、じゃあ…」

相変わらず謎の數學をボソボソと呟いてるの子をなんだか不気味に思った俺は、その場を後にすることにした。

家に帰ると、お母さんが元気に迎えてくれた。

「あ〜ず〜み〜!今日はよく頑張りました!」

そう言って俺の頭をワシャワシャする。

「ちょっとやめてよ母さん!」

俺は母の手を払った。

「早くお風呂ってこーい、汗臭いぞー」

「うるさいなぁ、分かってるよ」

俺はそのままお風呂に向かい、シャワーを浴びる。

頭を流し終えて、曇った鏡に自分の顔がぼんやりと映る。

その時ふとさっきぶつかってきたの子を思い出した。

あの子の本當に算數のテスト勉強を必死にやってただけだったのかな…?

てかそもそも學校行ってるのか?

あの時は突然過ぎてよく分からなかったけど、ちゃんと綺麗な服著てたっけ?

『ピンポーン』

家のチャイムが鳴りに驚き、俺は考えることを辭めた。

俺が風呂からあがると、玄関で母と誰が話している。

「ん〜、神様ねぇ…」

「はい、毎日たったの30分お祈りするだけでみるみるとあなたの運勢は良くなりますよ」

どうやらチャイムを押したのは宗教勧の人だったらしい。

「ねぇねぇお父さん、あれキリストの人?」

「キリストじゃないよ、ありゃ太の會だな」

「太の會ってあのいつも夜中歩いてる?」

「そうそう」

『太の會』

この地域に昔からある個人宗教団で、夜中白い著を著て団で徘徊してたり、ひたすら意味不明な言葉を覚えさせられたりと、近所の人からは完全にヤバい団と思われていて、學校の先生からも注意が出される程だ。

それなのにも関わらず、信教者は減るどころかどんどんと増えている。

「すみませんけど私無信教者なんで」

「私も最初はそうだったんですよ。ですが、、、」

「あ!そうなんですか!?それじゃ私と同じですね!それでわ」

母は一方的に話したあと、無理ありドアを閉めた。

「よし!じゃあご飯食べますか!」

そして何事もなかったかのように臺所へと戻った。

「さ、さすがママだな…」

父は俺の肩に手を置いた。

「う、うん…」

そんな我が道を突き進む母とそれを優しく見守る父との生活はとても幸せで、充実している。

俺がそんなことを思ったその日から、この幸せな日常は徐々に壊れていった。

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