《明日流星群が見れるそうです。》安曇:過去〜後編〜

あの日から不気味にニコニコ笑う「田村」という黒スーツの男がうちに來るようになった。

訪問理由はもちろん宗教勧

毎日異なる宗教グッツを持って來ては母に追い返される。

いい加減母も頭にきてるみたいで、追い返す態度も悪くなってくる。

『ピンポーン』

またアイツだ。

「無視しよう」

洋間で腕を枕に寢そべっている母が小さく呟いた。

『ピンポーン』

『ピンポーン』

『ピンポーン』

しつこく家にチャイムが鳴り響く。

『ピンポーン』

『ピンポーン』

そして次のチャイムが鳴ったとき母は「もう!」とび玄関へ向かった。

そして勢いよくドアを開けた。

「なんだ、あずきちゃんか」

チャイムの正はあずきだった。

「おばさん大丈夫?」

「え?うん、大丈夫だよ」

心配そうに尋ねるあずきに母は笑顔で答えた。

「ほんとに?」

「なになに?私そんなに調わるそうな顔してる?」

「違うの、ドア開けた時のおばさんすごく怖い顔してたから」

「え、ええ〜ごめんよぉあずきちゃん!!」

そう言ってあずきを抱きしめた。

「あずきちゃんどうしたの?」

部屋の奧から豪快な寢癖をつけた俺がトボトボと歩いて來る。

「え、もしかしてながちゃん今起きた…?」

「え?うん……あ!!!」

しまった!今日あずきちゃんとプールに行く約束してたんだっけ!

俺は慌てて時計をみる。

時刻は10時、待ち合わせ時間を2時間もオーバーしている。

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「ご、ごめん今から速攻準備するからちょ、ちょっとまってて!」

「もぉー早くしてよね!」

俺が急いで支度を終えて部屋に戻るとあずきが洋間で母と一緒にアイスを食べていた。

「お待たせしました」

「遅い!」

あずきは不機嫌そうに言い放った。

「す、すみません…」

「私がアイス食べ終わるまで反省しててね」

「はい…。」

あずきとのやり取りを奧のテーブルから見ながら母はニヒヒと笑っている。

「あーあ、こりゃ安曇はあずきちゃんになにか奢らないとね」

「あずきちゃん、なにかしいものとかある?良かったらなにか奢りますよ…」

「なんにもいらないでーす」

そう言いながら俺にベーと舌を出した。

あずきはアイスを食べ終え、俺達はプールに向かった。

プールに著くと水著に著替え思う存分楽しんだ。

空のが薄オレンジに染まってきた頃俺達はプールを出る。

「なんか眠くなってきたぁ」

「あんだけ寢たのにまだ眠いのね」

あずきはかったるそうに呟いた俺に対して死んだ魚のような目を向ける。

「や、やっぱり眠くないかも…」

「あっそ、別にながちゃんが眠かろうがどうでもいいけどね」

俺としたことが、せっかく楽しいじだったのになんか変なじになっちゃったじゃないか…!!

なんとかしてこの場の空気を変えなければ…!

すると俺の進む先に可らしいモンシロチョウが橫切った。

よし、あの蝶々を採ってあずきちゃんに見せてあげよう!

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そう思い、俺は帽子をとり、モウシロチョウめがけて勢いよく走り出した。

しかしなかなか捕まえられない。

「ながちゃん、なにやってんの?恥ずかしいからやめた方がいいよ〜」

後ろであずきが呆れたように言ってくる。

「も、もうしだからもうしで捕まえられるから…!」

ゆらゆらと躱されてしまい、なかなか手が屆かない。

こいつを捕まえてあずきちゃんを喜ばせ……

「やめてよ、わたし蟲とか無理だから」

あずきの思いもしなかった言葉に俺は揺した。

すると目の前の曲がり角から急にの子が飛び出してきた。

俺は慌ててを捻り衝突を回避。

しかし、捻った反の芯がぐらりと揺れる。

俺はそのバランスを立て返すことが出來ずそのままいコンクリートの上で転んだ。

「ちょ、ちょっと!」

あずきは慌てて俺に近寄る。

「ねぇ、だいじょうぶ?」

「イテテテ、うん大丈夫。それよりの子は?」

「は?何言ってんのよ、の子なんか最初からいないよ?」

「え?」

「確かにあの角からの子が飛び出して…」

「ながちゃん、さっきから何言ってんの?」

曲がり角なんかないよ?

俺は慌ててさっきぶつかりそうになった場所をみる。

あずきの言うとうりそこには曲がり角なんか無く、ただ背の高いブロック塀がどこまでも続いていた。

「え、どういうこと?」

「それは私のセリフだよ、とりあえず立つよ!」

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俺はあずきの方を貸してもらい、ノロノロと立ち上がった。

「もぉー膝凄いよ?」

言われてみれば右膝が熱い。

「う、うん大丈夫だよ」

「大丈夫じゃないよ」

そういうとあずきは自分のカバンからばんそうこうと消毒を出した。

「ほ、ほんとに大丈夫だって」

「いいからじっとして」

ポケットティッシュに消毒を染み込ませ、すぐにりやすいようあらかじめばんそうこうを剝いとく。

あずきの用意周到さにびっくりしたが、それよりこのやり慣れたじに驚いた。

「あずきちゃん隨分とやり慣れてるようだけど…」

「だから?」

「え?」

「なにか問題でも?」

「い、いやちょっと気になっただけ」

「あっそ」

ふとあずきの膝を見た。

あずきの膝にもばんそうこうがってあった。

「あずきちゃんも怪我してるの?」

「まぁね」

「大丈夫?痛くない?」

「私は大丈夫に決まってるでしょ。それよりながちゃんの方が大丈夫じゃないでしょ。」

「そ、そうなんだけど」

あずきが怖くてなかなか聞けない…。

「ね、ねぇその怪我どうしたの?」

「ん?ああ、運會に向けて短距離の練習してたからね」

「へぇーいっぱい練習してるんだ」

「じゃなきゃ1位なんてとれないって」

「じゃ怪我したら自分で治療してるの?」

「いや、お母さんにやってもらってる。それをずっと見てたから自然に覚えちゃっただけ」

「そうなんだ、ありがとう。やっぱあずきちゃんは優しいね」

「は、はぁ?こんなの普通のことでしょ!」

顔を赤くさせあずきは立ち上がった。

「はい、もう終わり!」

「ありがとう、だいぶ楽になったよ」

「今度からはいきなり走り出して勝手に転ばないでね」

「うん、気おつけるよ」

それからあずきと別れ、家の門前でたった時、玄関で勧しに來た田村の後ろ姿が目にった。

家にりたいので、恐る恐る戦場と化しているであろう玄関へ向かう。

しかし、いつものように言い爭ってる聲が聞こえない。

すると田村と目が合った。

「こ、こんにちは」

一応挨拶をする。

「こんにちは」

田村は不気味な笑顔を俺に向けてくる

ここで俺の帰宅に気づいた母と目が合い、し救われた。

「あずみおかえり」

いつものように暖かい聲で母が迎えてくれる。

「では、私はこれで失禮します。」

丁寧に挨拶をした田村はそのまま帰っていった。

「お母さん大丈夫だった?」

「うん、大丈夫だよ!」

そう言って優しく笑いかける。

「ちょっとあずみ、その怪我どうしたの?」

母さんが俺の膝を指さす。

「さっき転んじゃって」

「それ!ほんとなの!??」

あまりにも大袈裟な反応に俺はしびっくりした。

「え、うん。そうだけど…」

「そうなんだ……」

なにやら母さんは深く考えてるみたいだった。

「お母さん、ほんとに大丈夫?」

「え?あ、うん!大丈夫だよ!」

「ならいいんだけどさ…」

「そう言えば!今日はね、ハンバーグ作ったよ!」

「え!ほんと!!」

「そうだよぉ〜!はやく手を洗ってきな」

「うん!!」

そこから月日が経ち俺たちは中學生になった。

俺とあずきと優斗は同じ中學に學し、相変わらずの3人で固まって遊んでた。

「なぁ、今日なにするー?」

優斗が機に這いつくばりながらダルそうに言う。

「んーとりあえず寢たいかなぁ〜」

「ながちゃん最近授業中寢すぎじゃない?そんなんじゃ高校行けなくなるよ」

俺とあずきはダルそうにしてる優斗の隣でUNOをやっている。

「てかあんたら男子は部活とかやらないの?」

痛いところを突かれた俺と優斗は気まずそうに目を合わせる。

「いいんだよ、別に部活なんかやんなくても」

と優斗が言う。

「まぁ、學校も別に部活を強制してるわけじゃないんだし」

カードを場に捨てながら俺が言う。

「はぁ、これだから男子は…そうやって勝手に正當化してればいいさ、運音癡くん達」

「お、おい!運音癡は言い過ぎだろ」

あずきの言葉に1番反応したのは先程までダルそうにしてた優斗だった。

「だってこの前の力テストBだったんでしょ?」

「そんなこと言うならながちゃんの方が!」

「お、おい!やめろよ」

「え、ながちゃんなんだったの?」

「……言いたくない。」

「え…そんなに悪かったの……?」

「うん…過去最低だった」

「え、それって……」

今までながちゃんはCだったから…ま、まさか……….。

「Dだったよ!」

この気まずい靜寂を切り裂くように優斗が言い放った。

「おい!!だから言うなってぇぇぇぇええ!!!」

この日あずきは初めて力テストにDがあることを知った……。

「おい!てめぇらさっきからうるせぇんだよ!!!」

楽しく話している俺たちに向かって怒鳴った男。

中學生なくせにバリバリのパンチパーマでいかにもなイキリ野郎、間違いない。

たどころだ。

田所 圭太 (たどころ けいた)

俺らのやることなすこと全てに反応し、いつも攻撃的な厄介者。

「はいはい、悪かったね」

優斗はやれやれといったじで靜かに言うと、ダルそうに機に寢そべった。

「悪かったねじゃねぇんだよ」

席をゆっくりと立ち上がり、俺らの方に向かってきた。

「なに?どうしたよ」

優斗は寢そべりながら顔を田所の方に向け、やる気のない聲で聞く。

「毎回毎回おめぇらに腹立ってんだよ」

「ん〜毎回毎回なにに腹立ててるか知らんけど、その髪形校則違反だぞ」

「んなこと知ったこっちゃねぇんだよ、ああん???」

「ああん?とか言ってるけどさ、俺らまだこの學校に學して半年だぜ?いくらなんでもグレルの早すぎだろ」

優斗の言葉にクラスのあちこちでクスクスと笑い聲が聞こえてくる。

この空気を察した田所は近くの椅子を蹴飛ばした。

せわしい音を立てながら椅子は転がる。

「んだおめぇ、ちょっと表出ろや」

「そんなに俺と遊びたいのかよ、でもあいにく俺今眠いんだわ、し時間おいてまた來てよ。」

「てめぇ!調子乗るのも大概にしろや!」

田所は優斗のぐらを摑み怒鳴った。

大事になりそうなので俺が止めにる。

「まぁまぁ、あまり騒ぐと先生來ちゃうし、このくらいにしなよ」

「てめぇは関係ねぇだろ?引っ込んでろ」

田所はそう言って俺のを強く蹴り飛ばした。

俺の想像を遙かに超えるパワーで蹴られ、そのまま倒れた。

「いてて…お前いくらなんでも限度ってもんがあるだろ」

「うるせぇんだよ、ただ頭がいいだけのキャがよぉ。」

「うん。キャでもキャでもなんでもいいんだけどさ、もうやめといた方がいいよ」

「そういやお前の母さん''太の會''にったらしいじゃんか」

この言葉で空気が一変する。

「おい」

今までやられるがままだった優斗が、いまだぐらを握っている田所の腕を強く摑んだ。

「なんだなんだぁさっきまで大人しかった優斗くんよぉ〜」

「場をわきまえろ」

腕を摑んでいる力は徐々に強くなってくる。

「家も最近帰ってきてねぇみたいだしよぉ、お前の母さんは優秀な息子よりも神様の方が大事らしいぞ」

その瞬間ずっと黙っていたあずきが思い切り機を叩いた。

いつもにこやかで學年の人気者のあずきがここまでを外に出したのは初めてだったため、この異様な景に教室全が凍りついた。

流石にヤバいと思ったのか田所は無意識に優斗のぐらから手を離した。

「黙って聞いてるとさ、偉そうにぺちゃくちゃ言いやがってよ」

あずきはそう言うと靜かに立ち上がり、自分の方を向いている田所の間を思いきり蹴り上げた。

蹴り上げた瞬間田所の間からは「パキュン」という生々しすぎる音が響きわたり、その音を聞いた全男子が無意識に間を握る。

この攻撃をまともにくらった田所は聲に出ないびを上げながら膝から崩れ落ちた。

「い……っ…かはっ……あ''………あ''あ''あ''」

田所は間を握り悶絶している。

そこにゆっくりとあずき近ずいてくる。

「なんか文句あるなら言ってみろよ」

いやいやいやいや、あずきさん????

いくらなんでも怖すぎるでしょ!??

もうあの子言えないから、なにも言えないから、ゆるしてあげてぇぇぇえ!!

「ながちゃん、ゆうとくんもう行こ」

する俺と、ビビりすぎて「わかりました」と謎に敬語になっている優斗は靜かに教室をあとにした。

その日の下校時、陸上の練習があるあずきを置いて、俺は優斗と2人で帰っていた。

「それにしても今日凄かったな」

優斗が呟いた。

「う、うん…なんか前より凄くパワーアップしてたね」

「時が違かっただけで、俺も蹴り上げられたかもしれなかったのか……。なんか想像したら腹痛くなってきた。」

「う、うん……。」

「でもまぁ、ああなって當然っちゃ當然だったのか」

「……。」

「おい落ち込むなって、お母さん昨日は帰ってきたんだろ?」

「うん…まぁでもすぐ出ていったから結構昨日もおじさん達にお世話になったよ」

「そうか…」

この1〜2年で俺の生活はみるみると悪い方向に向かっていった。

母は俺が知らないうちに太の會にっていて、家にはほとんど帰ってこなく、1週間に1回白い著を著ると夜中家を出ていく。

家に帰ってもご飯がなく、それを買うお金もない俺は、家にあるお菓子を食べて空腹をしのぐという生活が半年続き、その狀況を察してくれた佳奈子おばさんが、「お母さんがいない日はいつでもいいからおいで」と言ってくれた。

おばさんと言ってもあの頃の貌は健在で、語尾におばさんと付けるのものも違和があるのだが…。

佳奈子おばさんが何故かどうしても付けてくれと言ってくるのでやむを得ない。

話が線してしまったが、母が帰ってこない日はいつもあずきの家に上がらせてもらっている。

そして今日も。

「ガハハ!流石俺の娘だ!!」

今日の出來事を聞いたおじさんが、を張って笑い、ご飯をこれでもかと口に詰め込んでゆく。

「ちょっとお父さん、もっと行儀よく食べてよね」

あずきが呆れたように指摘する。

「あずみくんもいっぱい食べてね」

そう言って、佳奈子おばさんが炊飯こど俺に渡す。

「い、いやぁいくらなんでもこんなに食べれないっすよ」

「なにいってるの?あずみくんは男の子なんだからいっぱい食べないと」

「ちょっと、お母さん!ながちゃん困ってるでしょ、そんなに食べれないから」

「あら、そうなの?でもパパはいつも5號くらいいつも食べてるじゃない」

「え!?おじさんいつも5號も食べてるの??」

「おいあずみ、5號ってありえないだろ」

「だ、だよね」

「いくらなんでも''な''過ぎるだろ」

「え?」

「やっぱり男なら10號はいかないとな」

まさかの2倍。

「ママが1番分かってるだろぉ〜しっかりしてくれよ」

「あらそうだったわ、ごめんなさいね」

「ガッハッハッ」

このように、橋本家の毎日の晩ご飯は異常なほど騒がしい。

でも楽しかった。みんなと話して、笑い合っているこの時間が俺はものすごく好きだった。

まるで、お母さんがああなってしまう前に戻っているみたいで……。

「あずみ、ちょっと話せるか?」

食事が終わり、俺が帰ろうとした時おじさんが呼んだ。

「ん?いいけど…」

6畳ほどの和室でおじさんと2人で話すことになった。

「千夏、まだ帰ってこないのか」

「うん…。」

「そっか、このことは辰徳くんに言ったのか?」

「うん…。」

「本當か?」

「言ったよ」

違う。

噓だ。

言えるわけないじゃないか…

あの優しくて元気いっぱいの母さんが、あんなことになってるなんて…。

「お父さんはなんて?」

「それは……」

「いや、いい。言わなくて大丈夫だ」

「なぁ、おじさん」

「なんだ?」

「大丈夫だよ、母さんは」

「そうなのか?」

「だって、あの優しい母さんが俺を捨てちまうわけないだろ?」

俺は笑顔て答えた。

この言葉に噓はなかった。

俺は本気で信じてるから。

だからこそ笑った。

笑うしかなかったんだ。

「あずみ…お前って奴は……」

おじさんらしからぬ弱々しい聲に驚き俺は顔を上げると、おじさんが目を潤ませている。

「え、なに?」

「よく言った!流石あずみだ!!!!」

おじさんはそう言うと俺を強く抱きしめた。

「ちょ、痛いよ」

「よぉぉおし!もっともっと強く抱きしめてやるぞ!!」

「いや…お、おじさん……。ちょ、し、死ぬ……」

「うぉぉぉおお!!あずみぃぃぃい!」

「も、もうわかったから!」

俺はおじさんをなんとか振りほどく。

はぁはぁ、死ぬかと思ったァァァァ!

おれは心でそうんだ。

それからしばらくごろごろしてると、時刻が22時になっていることに気づき、おれは慌てて帰る用意をする。

「ながちゃんどうしたの?そんなに慌てて」

あずきが尋ねる。

「いや、こんな時間までお邪魔しちゃってたから急いで帰ろうと思って」

「もうそんな時間なんだ、気をつけてね」

あずきはニッコリと優しい笑顔を浮かべ、俺に手を振る。

「じゃ、また明日」

俺はおじさんと佳奈子おばさんに挨拶を済ませ、家に帰った。

徐々に家が見えてきた。

俺の家には消したはずのが燈っている。

もしかしてと思いゆっくりと玄関を開ける。

家の中は味しそうな料理の匂いが立ち込めている。

臺所に行くと、エプロンを著た母さんが料理を作っていた。

この景を久々に見た俺は困した。

「あ、あれ?母さん帰ってきてたんだね」

「あずみ、帰ってきたらまずただいまでしょ」

「あ、うん。ただいま」

「こんな遅くに帰ってきて、どこ行ってたの?」

「あずきちゃんの家にお邪魔してた」

「そう、ご飯食べる?」

「いや、あずきちゃんの家でご馳走してもらってもうお腹いっぱいだから、明日食べるよ」

その瞬間母さんは、思い切り両手で臺所を叩いた。

一瞬でその場が凍りつく。

「せっかく私が料理作ってあげてるのにそういうことするんだ。」

「い、いやだって……」

「だってじゃないでしょ!!」

俺が最後まで言い切る前に、母さんは怒鳴った。

「そう、いらないのね。そしたらもうこんな必要ないね」

そう言って、作り途中の料理を皿ごとゴミ箱に捨てていく。

「やめてよ母さん!」

俺は母さんのを摑んで止めにる。

「どきなさい!あずみ!!」

「やだ!」

「どけって言ってんだよ!!」

その時、俺は左の方からなにか鋭いものが迫って來たのが分かった。

本能的にやばいと思い、とっさに母を突き飛ばす。

そして、母さんは大きな音を立てて倒れた。

倒れた母さんの右手には先程まで野菜を切っていた、包丁が握りしめてあった。

ほんのりと左頬が熱い。

恐る恐るってみる。

手には真っ赤ながついている。

ま、まさか、母さんが俺を切った………?

いや、違う…!

母さんがそんなことするはずないだろ!!

じゃあなんで切れてる?

きっとさっき暴れたせいでたまたま刃の先がこっちに來てしまっただけだ…!

めちゃくちゃな推測だったが、俺は信じたかった。

いや、信じたかったんじゃない。

信じるしかなかったんだ。

だけど、母さんが両手でしっかりと包丁を握りしめ、俺の顔をギロリと睨みつけたあの目と合った瞬間。

                               ''もう無理だ''

「わかってたよ…」

俺は靜かに口を開く。

「わかってたよ、全部ぜんぶ!もう母さんが優しく笑ってくれないことも、戻らないことも…」

両手を強く握りしめる。

「それでも、それでも俺は信じたかった!!でももう無理だよ…。無理って思っちゃたんだよ!!」

俺はが痛くなるほど大きく聲を出した。

そして俺は母さんめがけて走り出す。

包丁だ、あの包丁だけでも奪ってやる。

「あの家族!許さない!!私のあずみに何をしたの!!」

母さんは片手で思い切り包丁を振り上げると同時に、訳の分からないことをぶ。

「あずきちゃん達はな!あんたよりも優しくしてくれたよ!」

もうすこし、あとしで手が屆く………。

その時玄関からの聲がした。

「こんばんわ〜、あずみくんいるぅ〜??」

俺と母さんはきを止た。

そして俺はその聲を聞いてゾッとした。

この優しくて、綺麗な聲は…

「加奈子おばさん!!今こっちに來ちゃダメだ!」

俺は玄関に向かってんだ。

「かなこ…?」

母さんは靜かに呟く。

そして次の瞬間絶しなが、すごい勢いで部屋を出ようとする。

「橋本 加奈子ぉぉぉお!!!!」

俺は母さんを止めようと摑みかかるが、予想以上のパワーで摑んだ手が離れてしまった。

そのとき俺は後頭部を機の角にぶつけてしまい、意識が飛びそうになる。

頭が揺れる。

気を抜いたら倒れそうだ…。

で、でも、、、

は、はやく。

早くおばさんを守らないと、、、。

部屋のあちこちにをぶつけながら俺は立ち上がった。

「おばさん!逃げて!」

俺は一杯んだ。

頭を抑え慌てて部屋を出る。

玄関を見た時俺は絶した。

おばさんの橫腹に包丁が元までしっかりと刺さっていたからだ。

そう。

これが俺の過去。

この先の話はまた後で話すとしよう。

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