《量産型ヤンデレが量産されました》授業

俺の席は端の席でその隣は田中の席、そして神の悪意をじるが一日一回は生徒が寢ていることすら把握できないじいちゃん先生の授業がある。最近恒例となりつつある朝の胃壁君フルボッコタイムが終了してもまだまだ相手のバトルフェイズは終了せず、じいちゃん先生の授業開始のチャイムは胃壁君の第二ラウンド開始の合図となるのである。

「………………」

「………………」

「………………」

隣には微笑みながら無言で俺を見つめる田中。それに対して反応を返すわけにもいかないので真面目に授業をけるふりをして無視を決め込む俺。そして遠くの席にはその様子を恨めしそうに見ている榛名。おいじじい、1週間以上経つんだからこの異常な空気にさっさと気付け。そしてさっきからチラチラこっちを見てるクラスメイト達よ、気付いているならさっさと注意してくれませんかね。

などと考えていると「そろそろかな………」なんて言葉が頭に浮かぶ。タイミングを徐々に把握してきていることに嫌気が差している俺に田中が聲をかけてきた。

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「なあ雄太………」

「………何すか」

「手、繋いでもいい?」

駄目です。

「いや、お前今授業中だって何度も言ってるだろ………」

「もう1週間も気づかれてないから絶対大丈夫だよ」

甘ったるい聲で言ってきても駄目です。顔を近づけてくるな機をこっちにずらしてくるな榛名さんそんな形相でこっちを見ないでくださいめっちゃ怖いですそしておい糞ジジイこっちを見ろ。

「な、雄太、いいだろ?

手を繋ぐだけなんだからさ?」

と言いながらこちらに手をばしてくる田中。

初日に無視してもめげずに手をばし続け、終いには太に手を乗せてでてくる始末だった。翌日斷固拒否しようとした場合には泣きそうな顔をしてこちらをじっと見てきていたたまれなくなった。そして「何田中を泣かせてやがるんだこの野郎!」という視線がクラスメイトから突き刺さることとなった。子からの視線はわからないでもなかったが、男子からの視線も混じっていたためそいつらとは距離を置くことが俺の中で決定された。

よって最終的には素直に手を繋ぐのが一番被害がないという結論に至ったのである。尚榛名からは斷固拒否するようにやんわりと注意されているため榛名の不興を買うことになるが、ヘタレな俺にはその場では前向きに考える返事は出來てもいざその時になると実行できずにいる。

だって、なぁ………?考えても見ろよ、目の前にっぽい奴が居て、手を握ってなんて言ってきて、じーっとこっちを見てるんだぞ?斷っちゃうと涙目になっちゃうんだぞ?斷れるか?俺は斷れない。

というわけで田中の手を握る俺。「えへへっ」なんて言っちゃってるよコイツ。そして何処からか「ブチッ!」という音が聞こえる。あ、榛名の消しゴムが弾け飛んで………って握りつぶしたのかよ!怖えよ!普通千切るとかそういうのだろ!

榛名の握力に戦慄していると握っている手の指を絡めて人つなぎに移行しようとする田中。流石にそれは堪忍できんぞ。

「おい田中、何してやがる」

「たーちゃん、って呼んで」

「いや、そうじゃなくてお前何やってんだよ」

「たーちゃんって呼んでくれなきゃ教えてあーげない」

口調を変えてはぐらかしている間に結局人つなぎに移行されてしまった。満面の笑みで手をにぎにぎしてくる田中。男らしくないらかい手で握られて、凄く気持ちいいのがムカつく。榛名は榛名で何かオーラみたいなのを発生させているように見えてきた。そろそろ俺の命の危険が危ないので放していただきたい。そしてどこからか聞こえてくる「チッ!バクハツシロ」とかいう男の聲。おい今の誰だ。

「なあ、もう満足しただろ、そろそろ放せよ」

「たーちゃんって呼んでくれなきゃやーだ」

何が悲しく授業中の教室でたーちゃんなんて呼ばなきゃアカンのや………。

「わかったわかった、たーちゃん早く手を放せよ」

悔しいでも呼んじゃうビクンビクン。いや、一時の恥を嫌がってこれ以上恥を重ねる方が駄目だからね。

「むー、わかったよ」

そんな俺の考えをじたのかは知らないが非常に名殘惜しそうに、でも嬉しそうに口の端を若干ピクピクさせながら手を放すたーちゃんこと田中。一方榛名はたーちゃんと俺が言ったことに対して怒り心頭、手を放してし安堵、プラスマイナスで怒りがプラスされた模様。どうしろというのだ。そしてどこからか聞こえてくる「ターチャンハァハァ」という野郎の聲。

あと11か月もこんな授業が続くのかと、ホモであることを隠さない野郎がどこかにいるクラスに居なければならんのかと涙が溢れる俺であった。

「大丈夫?一緒に居るから安心しろよ?」

うるせー。

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