《量産型ヤンデレが量産されました》終業式

「……であるからして、生徒の皆さんには秩序ある行を……」

非常に退屈な時間が流れる。ついに今日は生徒たちが待ちに待った夏休みが始まる前にある終業式と言う一種の儀式が行われている。カツラであることがバレバレなのにそれに気付いていない教頭は長々としたありがたーいご挨拶を述べており、やることと言えば立ったまま寢てしまわないように必死に暇つぶしの要素を探すことである。

誰かとヒソヒソ話でもするのが一番であるが、彼が話している時に有力なのは彼の頭部に注意することだ。明らかに浮いているカツラが額の汗の量に比例して段々と更に違和を増していく。そして無意識なのかカツラをサッと直すのだが、たまに位置がずれて非常に面白い事態になる。そんなことぐらいしかこの學校の終業式ではやることがない。そんな風につまらない時間を生徒達は過ごしていた。

俺以外の生徒達はという但し書きがついてしまうが。

ええ、最初は私も同じように終業式を過ごそうと思っていましたよ。ですが私は気付いてしまったんです。し前までは私も多なりとも友関係がありましたので普通に話をする男友達がいたのですが、現在は誰も彼も私の事を避けてしまっております。原因は明らかでありますが、そのことに文句を付けてしまえば晴れて私の胃壁くんは過労死致してしまいますので何も言えません。

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他の人と同じ様に時間を潰せないことに気が付いたのは終業式が始まって、さて誰と話そうかと考えた時でした。唯一話せる相手である田中は私の真後ろに並んでいるため話すのには向いておりません。ですので果たして何回教頭がカツラの位置を直すかカウントすべきか真面目に悩んでいると背後に誰かが近づく気配があったのです。

誰が近づいてきたのか考えるまでも有りません。田中です。何をするつもりだと考えているとスッ、と腰に手が回ります。

「雄太ぁ……」

やめろ、そんな聲で囁くんじゃありません。気持ち悪さからではない、ゾワゾワとした覚が背筋を上る。違う! 俺はノンケだ!

誰か暴走している田中を止めろよ! と思うが周りの皆は絶対に視線を合わせようとしない。止めにりそうな榛名や文は今やこいつの味方であるし、そもそも遠い。

「雄太の汗、良い臭いがするよぉ……」

そしてここぞとばかりに全開な発言をする田中。誰かマジで止めてくれよ! おいコラ教師! 生徒が規律をしているんだぞ! 止めろよ! あ! あいつ目が合ったのに逸らしやがった!

誰か味方はいないかと改めて周りを見渡すとこちらを見ている子がいた。頼む! 助けてくれ! と念を送るが殘念ながら彼らはお腐りになった方々でいらっしゃるらしく興した様子で周囲の子に呼びかけてこちらを観察することに全力を注いでいらっしゃる。

もうどうしようもないなこれ。俺の周りには味方は一切いないと分かってしまい、俺の中の先生が「試合終了だから諦めたら?」と囁く。

「パトリック……僕もう疲れたよ……」と心の中でどこの誰とも分からぬ人に告げる。ただ、諦めてしまえば後は楽なものである。ガチガチに固まったから程よく力を抜いて、重心を後ろに若干傾ける。すると俺の腰に回されている手にギュッと力がるのがわかる。

の時みたいに顔を見ることは出來ないが、どうせ嬉しそうな顔を浮かべてるんだろうなぁ、という想が頭が過る。しょうがない奴だと小さく苦笑するが、こいつに抱き付かれていること自は大して嫌がっていない自分に気付きハッとする。

いくら見た目がほとんどの子みたいであるとはいえ、いくら親友相手とはい、男に抱き付かれれば嫌がって當然である。それなのに俺は「このような場で抱き付くんじゃない」という恥ずかしさから田中を止めようとしていたのだ。

やばい……。どんどん毒されて行ってる……。

そして田中に告白していた奴がこちらを鬼の形相で睨んでいることに気づく。お前まだ諦めて無かったのか。

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