《量産型ヤンデレが量産されました》捕食

よくよく考えなくとも他にも諸々の問題があったはずだが全ては勢いにながされてしまい、あれよあれよと言う間に無人島へ行くことが確定してしまった。

そこからはもうあれですよ、いつも通り流されやすい私のことですから、きゃっきゃきゃっきゃとはしゃぐ彼ら……、いや違う彼ら、ああもうめんどくせえ、彼らを見ていると抵抗する気力がそがれてしまった。

「それじゃ私は準備があるから」と言い殘して馬鹿はさっさと部屋に戻ってしまい、三人はどの水著にしようかとわいわいと相談し始めた。あの、君ら、今水著よりも凄い恰好してるからね?

夏休み初日から致命的な事態に陥ってしまった……。一どうすりゃいいんだよ、と気落ちしてある意味気を抜いたのがよくなかったのか、目の前の桃源郷に対して我が愚息は素直な反応を返してしまっている。これが鬱起という奴か。

半ば以上意識を放っていると、やがて彼らも話し合いを終えたのか食事が再開される。あ、やばい、なんとかして愚息の気合いを削がねば。

しかし悲しきかな、両手を塞がれている上に椅子に座った狀態では何も出來ない。強いて言えば運よく発見されないように祈ることぐらいだろうか。とか思っていたら既に発見されてしまったようだ。榛名も田中もちらちらと愚息に目を向けている。畜生死にたい。

「そ、それじゃあ早く食べ終わっちゃおうか。はい、雄太くん、あーん」

と言いながら榛名があーんしてくる。だがその視線は間に釘づけである。某倶楽部のようなおでん蕓を披することになるのではないかと心ヒヤヒヤしてしまったが、その辺は無駄に優秀なようで一度も視線を俺の顔に向けることなく口へと運ぶ。

オーケー俺、KOOLになるんだ。例えエプロンが3人もいようが、今食べているものがスッポンであろうが、無人島への旅行が確定していようが、今俺は食事中であって邪なことなどするはずがない。

目を閉じて心の中で念仏を唱え、最終奧義『母親の顔を思い浮かべる』に手を出そうか迷っていると間に違和を覚える。

はてと思い見てみると田中の手が添えられている。さわさわしている。ちょっと待ちたまえ君、何をしているのかね。

 慌てて田中の方を向くとそこにはメス顔があった。顔が超近い。めっちゃ近い。離れて。お願いだから。

思った以上に近い場所に顔があったため思わず距離を取ろうとする。が、今度は榛名から抱き留められる。

「うひぃ!」

なんかにゅるってした! 耳がにゅるってしたよママン!

「たにゃひゃひゅんばはひふふひ」

榛名さん! 口に食べれたまま喋るのは行儀が悪いって教わらなかったんですか! 食べじゃなくて俺の耳だけど! 喋られると耳に息が當たってぞくぞくするんですけど!

たまらず逃げようとするが、榛名さんがガッチリとホールドしているため逃げ出せない。いつも思うんだけどどこにそんな力があるんですか。

田中の方を向いた狀態で固定されたため視覚的にも、られているため愚息的にも、耳をしゃぶられていることにより何か妙な扉が開いてしまう的な意味でも々ヤバい。

だ、誰か助け……ホッ、ホッ、ホアー!

なんとか一線だけは守り抜いたとここに記す。

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