《リーンカーネーション 小學生に戻ったおれ》決勝戦

ぐぅ~

おなかすいた。

これが俺の本音。しかし、今は決勝戦、みんな円陣を組んで真剣な表をしている。やがてキャプテンの橋本さんが聲を上げた。

「フロッグー ファイト!!」

「ファイト!!」

「ファイト!!」

「ファイト!!」

「ファイト!!」

「ファイト!!」

「ファイト!!」

「フロッグー ファイト!!」

「「「おーー!!」」」

これが俺たちフロッグズの出陣の聲だった。子達も同じなんだからベンチの後ろの子達も同じフレーズをんでいた。俺はというと今日の朝食が食パン一枚に牛が一杯というこれから試合をするにはひもじい思いをしている。しかし、ここにいる彼らには全く知らないことだし言う必要もない。下手に言うと言い訳をしているみたいで嫌なのであえて言わなかった。

「佐藤、元気ないな」

聲があんまり出ていない俺に気付いたコーチが聲をかけてくれた。

「だ・・・大丈夫です」

「そうか、球を取る時は落ち著くんだぞ。いいな!!」

元気がない返事を聞いてもコーチはいつも俺にかけてくる言葉しかかけてくれなかった。そして、誰も俺に”昨日みたいに打ってくれ”とは言ってくれない。今朝、あれだけ俺に打ってと言っていた子達もみんなへの聲援のみ、矢部っちや絹やんは逆に昨日のことにれないでおこうとしているようにすら見える。そんなこんなをしているうちに整列の時間が來た。そうだ。今日の相手は、青葉ロケッツというチームだ。整列の時に彼らのユニフォームを見て思わず吹き出しそうになってしまった。彼らのユニフォームの特徴はズボンのファスナーの所がロケットのマークになっているところ、そうチンチンがっているようなじでだ。もう笑いをこらえるのに大変だった。現代だったら絶対にありえないデザイン。相手は、そんな俺を見て絶対になんだこの野郎と思っているに違いない。そして、橋本さんがジャンケンで勝って後攻ということになった。

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念のために主な守備位置を言っておく、ピッチャーは橋本さん、絹やんはサード、ショートが外やんでセカンドが矢部っち、他は先輩たちなんで名前すら覚えていないので紹介はここまで、俺はと言うと8番ライトと定位置だった。

今日の橋本さんは気合がっていた。初回からストレートのびがよくてバッタバッタと相手ロケッツ打線から3振を奪っていったのだった。一方、俺たちフロッグズも負けていない。ロケッツのエース江藤にこれまた見事に抑えられていたのだ、江藤は、俺と同じ4年生のはずなんだけど、格が大きく6年生の橋本さんとほぼ同じ、その格でビュンと投げてくるストレートがこれまた威力がある。

回は進んで3回、打順は8番、そう俺だ。4番の橋本さんが唯一、ファーボールを選んだだけで、他の全てが3振だったのだ。ここまで誰も手が出ない狀態で俺が打席にるがベンチからは頑張れーとかファイト―とか聞こえてこない、あれっと思ってベンチ側を見ていると妹たちが無邪気におにーちゃん頑張れーと言ってくれているだけだった。すると右手の方からバンとミットにボールがった音がした。

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「ストライク!!」

「え?」

思わず審判を見ると審判が俺を睨みつける

「プレイ」

「なにやってるんだ!!」

「ボール見ろよ!!」

ベンチからヤジが飛んできたかと思うとロケッツ側の守備をしてる人たちからもヤジが飛んできた。

「へいへい!こいつはちょろいぞ!!」

「ライパチ!!ライパチ!!」

彼らの姿を見ると間のロケットの模様がどうしてもチンチンに見えてしまう。困ったぞ・・・さらにお腹も減っていて、集中できない俺にピッチャーが構えて2球目を投げてきた。ソフトボール獨特の下から投げられたボールは、びているように上に上がってきて、あれ・・・高い・・これはボールだとバットを止めると

バン!!

「ストライク!!」

「うそ!!」

思わず審判を見ると審判は文句あるんかと俺を睨み返してくるしベンチからは

「あぁーー」

溜息すら聞こえてきた。お前ら3振しておいてそれかよと言いたいが、ツーストライクまで追い込まれては、何も言えない。そして、守備位置を見るとレフトは定位置だ。ということは相手の判斷は昨日の俺はまぐれだと思ってくれたに違いない。それは、神が40代後半のおっさんである俺にとっては、好都合だ。しかも、神年齢だけであれは、ここにいる人間の中で俺が一番年を取っているに違いなかった。

「楽勝楽勝!!」

「やっぱ!!ライパチ!!ライパチ!!」

「落ち著いてワンアウト取ろーぜ!!」

相手のヤジと味方の応援が飛びう中、ノーアウト、ランナーなし、ツーストライクと追い込まれている俺に向けて、江藤が第3球目を投げてきた。さっきのでタイミングは十分に分かったと俺もスイングにった。え?さっきよりも高い・・・

カッ!!

うげっ!!

辛うじて當てたバットにチップしたボールは、審判の顔面を直撃した。後ろを見ると顔面を押えてうずくまる審判が

「ストライク!!バッターアウト!!」

「うそでしょ!!當たったって!!」

俺が思わずぶとコーチも駆け寄ってきた。そんな狀態にもかかわらずに審判は俺に向かって

「アウトだ!!アウト!!」

驚いた俺は更に抗議をした。

「當たって!!」

「アウト!!アウト!!三振だ!!このガキが!!ったく!!いい加減にしろ!!」

そして、駆け寄ってきたコーチは驚いたことに俺を抑えていた。

「佐藤!!3振だ!!」

俺の抗議も虛しく3振という結果にという訳で俺がチップしたはずのコースまでストライクとなり、誰も打てるはずもなく俺たちフロッグズは3振の山を築いていったのだった。こうして6回表、昨日10回まで投げぬいた橋本さんにも疲労が出てきたところをヒットを打たれ後、送りバント、普通は1アウト2塁のはずが、走者は3塁まで進塁してしまった。そして、打席は4番江藤、橋本さん渾の1球を振り遅れたのだがバットに當てた、しかも、その打球は俺の方へ向かっている淺いライトフライだ。打球にあわせて、前へ走ってボールを取ると3塁ランナーが走り出した。俺は、ホームベースとの一直線上に立っていたセカンドの矢部っちに向けて思いっきりボールを投げつけた。

「セカン!!」

俺の聲に気付いた矢部っち、練習通りに中継プレーをするはずがボールを見て

「うわ!!」

避けてしまっている。そして、俺が投げたボールは、キャッチャーに向かって、ワンバン、ツーバン、スリーバンして、キャッチャーミットに収まって、走者との差プレーとなった。一瞬、靜まり返ったグラウンドに響き渡る審判の聲

「セーフ!!セーフ!!」

俺は、がっくりと項垂れてしまった。矢部っち何やってるんだ・・・本當に

この回は、この1點だけでなんとかしのいだものの、すでに橋本さんの力も限界に近いに違いない。背中で息をしながらもそれを必死で隠しているのは俺にはなんとなくわかった。それよりも矢部っちにベンチに戻ったら言ってやると思ってベンチに戻ると矢部っちは無言で俺にバットを差し出した。

「失った點はバットで取り戻せ!!」

お前がと聲を出そうとするとコーチまでも

「そうだ!!この回、お前のバットで返せ!!」

俺は愕然としたまるで俺が悪者みたいになっている。俺は、ちゃんとボールを取って中継に投げただけなのに・・・するとコーチが

「佐藤!!お前の打席だ!!早く行け!!」

へいへい・・・もういじけてやる俺はあえて左打席に立った。そして、右足を大きく開きを前のめりに突き出した。そう有名なバッターで言うと昔ヤクルトと阪神で活躍したオマリーみたいなフォームで構えたのだ。

「何やってるんだ!!」

「真面目にしろ!!」

當然、ベンチからヤジが飛んできた。しかし、これにも俺の考えがある。実は、フロッグズには左バッターが一人もいない。だから、江藤の奴も投げやすいのかもしれない。しかも、ホームベースにを突き出すこのフォームは高めの玉が投げにくいはずだ。

「所詮!!ライパチ!!ライパチ!!」

「楽勝!!」

相手のヤジも飛んできた。そして、1球目

バン!!

「ボール」

外角高めにボールがそれた。やはりそうか、左バッターには投げにくそうだ。という訳で、構えなおす。

キャッチャーが「見掛け倒し」とか言っていたけど関係ない、これでレフトへ流せればいいんだけど、覚が解らない。とりあえず、1球引っ張ってみた

キン!!

「ファール」

あれ?この角度で一塁線の上を超えてかなり右に切れてしまった。おかしいというより球速が落ちている。カウントはワンストライク、ワンボール、こいつ、1球目がボールになったところから2球目から抑えてきている。これは、チャンスと思った3球目、マウンドで構えている江藤がボールを投げ俺がバットを振る。

あれ?

さっきより遅いぞ・・

レフトへ流して打つつもりが、思いっきり引っ張ってしまった。

キン!!

打球はライト線に痛烈な當りとなって転がって行った瞬間、グランドに歓聲があがった。それは俺が2塁を回る頃にはライト線へ転がっていった打球は、コロコロと転がり、そのまま校舎と校舎の間の奧行きがかなりあるスペースへ転がっていったからだった。そして、俺がホームに著いた頃にようやくボールを取りに行ったライトがグランドに戻ってきた。

「ホームイン」

「「「同點だ!!!」」」

「奇跡が起きたぞ!!」

おいおい・・・俺がちゃんと考えて打ったんだからと思っていると9番君も俺の真似をしているが敢無く3振、1番の矢部っち、2番の絹やんも3振となってしまった。こうして、1対1で最終回である7回表を迎えるのだった。結局試合は橋本さんの力投虛しく3対1で負けてしまった。俺達フロッグズの夏は終わった。そして、最後の整列

「ありがとうございました!!」

俺がベンチ戻るとそわそわした視線を送ってきた二人の子がいた。

森さんと箭さんだった。

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