《リーンカーネーション 小學生に戻ったおれ》壯行試合
「佐藤、お前、今日は子チーム側」
「え・・・?」
グラウンドに現れたコーチの一言に驚いている俺を見て、
「やっぱ、男(おとこおんな)は子チームだよな」
矢部っちが聲をあげると絹やんが
「そうだ!!そうだ!!」
こうして、男子チームから完全に見放された俺だったが、とりあえず試合に出ることが決まった。
今日は壯行試合、さっきの話を聞いて、絹やん、矢部っち、外やんはクスクスと笑っている。壯行試合と言っても町會の小さなチームでせいぜい25人くらいしかいない。夏休みとあって、來ることができない人もいて、実際には、男合わせて20人ほどしか集まっていないのだ。だから男混合で行うことになった。今年の6年生は橋本さんと子の今田さんと2名しかいない。幸いなことに二人ともピッチャーだったので、6年生をれ替えるだけで、後輩と対戦できるということなのだ。かと言って橋本さんのボールを子のキャッチャーでは捕るができないのでバッテリーをそのまま代させている。こうしてチーム分けは終わった。
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「プレイ」
審判のコールで試合が始まったこの試合、最初から6回迄と壯行試合と言う意味合いが強く前半3回を6年生が投げ、殘り3回を後輩のピッチャー候補が投げることになっている。そして、今回は子チームが後攻ということになった。俺はというと子のチームでも定位置のライト八番。俺としてもなんとかヒットを打たないと、矢部っちのやつ調子に乗って全員の前でちんちんを出せとか言ってきそうな顔をしている。
當然、先発は6年生の橋本さん、小學生として最後の試合だけあって気合いがっていて、初回から本気モードで次から次へと三振を奪っていき、1回2回と合計6三振を奪う圧巻の投球を見せた。一方、子のエース今田さんは1回を3者凡退に抑えていた。
試合がいたのは2回裏、バッターは4番の橋本さん、対するピッチャーは今田さん、ワンストライク・ワンーボールからの3球目し甘めにったボールを橋本さんは簡単にレフト前はへクリーンヒットを打った。次の5番はキャッチャーの石田の1球目、橋本さんはセカンド盜塁を決め、ノーアウト2塁、バッター石田がカウント1ストライク2ボールで迎えた4球目、ショートゴロをショートがエラーをして、ノーアウト1,3塁、しかし、ここで打順は6番の2年生の憐奈だった。あえなく3振、その間に石田がセカンドへ盜塁を決めていたので、1アウト2,3塁の絶好の機會だったが、続くバッターもセカンドフライに倒れ、2アウトまで來てしまった。そして、8番ライトの俺に打順が回ってきた。
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「へいへい!!バッターはライパチ渉(わたる)だ」
「男(おとこおんな)だ、楽勝!!楽勝!!」
矢部っちの聲のヤジが飛んできた。しかし、彼らは何も考えていないのだろう守備位置は定位置からいていなかった。普通ならバックホームを考えてし守備位置を前にするのだけど、そこは壯行試合、気が抜けているに違いない。そう考えて打席に立つ。今田さんの1球目はやや外側へ外れたボール。これで球速はそれほどないことが分かった。後は、どこへ投げてくるか。2球目は外角低めにストライクがって來たが低いので見逃した。
「ストライク!!」
「やっぱ!!男(おとこおんな)のライパチ!!手が出ません!!」
勝手に実況をする嫌味な絹やんがそこにいた。
「へいへい!!ライパチ!!ライパチ!!」
壯行試合にヤジはあんまりだと思うんだけどと思いつつも、バットを構え直し勝負の3球目、外角高めのボールが來た。これだ。し遅れたバットにボールが當たった。
キン!!
セカンドの矢部っちの頭上を越えたライナーの打球はライト前に落ちた。すでに、走者は一斉に走り出していた。そんな中、俺は焦った。
やばい!!打球が早すぎる!!
打った瞬間、俺は必死に走った。早い打球がライト前に落ちたということは、下手をするとライトゴロになりかねないのだ。すると次の瞬間、俺の代わりにったライトがエラーをして、その場でもたついていた。それまで真っ直ぐに走っていたのを慌てて、2塁へ走る向きを変えた結果、走者一掃の2塁打となった。ようやくセカンドにボールが帰ってきた時、矢部っち顔は凄かった。多分、かなり焦っていたのだろう
「子からヒット打ったからって、これはヒットじゃないからな!!」
多分、このヒットはカウントしないと言いたかったのだろう。相當な焦りを見せていて、次のバッターのセカンドゴロをファンブルして、危うくセーフにするところだった。しかし、ベンチに帰る時は
「ふん!!」
とか言って向こうのベンチに帰っていった。
俺が味方のベンチに戻ると
「渉(ワタル)よくやった!!」
橋本さんからの褒めの一言をもらってうれしかった。橋本さんは3回を3者3振にとって、有終のを飾った。続く3回裏は無失點で終わり、2対0で4回表を迎える。ここで、橋本さんとキャッチャーの石田は男子チームに戻っていった。橋本さんは男子チームでセカンド、石田はキャッチャーをすることになっている。対する子チームはというと、箭さんがピッチャーに、キャッチャー森さん。今田さんはファーストにった。
箭さんは初登板でかなり張している。ライトの俺が見ても分かった。最初はストライクがらないで、ファーボールが3つ、ノーアウト満塁と絶対絶命のピンチになっていた。
「打たせていこう!!」
森さんの掛け聲にみんなが答える
「「「おー!!」」」
バッターは4番の絹やんだった。するとチラチラと俺の方を見ている。なんだろうと思った瞬間、わざとライトの俺の方へ流し打ちをしてきたのだ。
キン!!
ヘロヘロっと上がった淺いライトフライ、俺は落下位置まで移して簡単に捕ると、すぐさまセカンドへ投げた。すると何を勘違いしていたのだろう。1塁走者の矢部っちは2塁を回っていて、3塁走者の外やんもホームまで回っていた。ということで、ボールはセカンドからファーストへ送られ、トリプルプレーが立した。
わいわいと帰っていく子チーム俺は思わず、箭さんの近くまで行きグローブでおをポンと叩いた。
「きゃっ!!!」
「ナイスピッチング!!」
「もうっ・・・ありがとう」
し膨れた表を見せた後の箭さんは笑顔になっていた。
こうして4回裏、ピッチャーはなんと矢部っち、結構強引なフォームからそれなりのスピードボールを投げていて、いいのか悪いのかし荒れ球で案外打ちにくい。結局この回は3者凡退となった。
続く5回表、なんだかんだで、1點を取られた上2アウト満塁、投げている箭さんにも疲れが見える。
「あと一つ!!あとひとつ!!」
その聲援に箭さんも頑張る。
キン!!
右中間に大きな辺りが飛んだ。深めに守っていた俺は、必死に走った。そして、飛び込んだ!!
打球が高く飛び過ぎたこともあってなんとか間に合ってアウト。こうして、なんとか5回表を終了した。
こうして、6回表ワンアウトランナーなしで俺の打席を迎える。すると矢部っちが俺に向かって
「俺のボールを打てるものなら打ってみろ、打てたら負けを認めてやる!!」
この言葉の容を知っているのはごく一部、矢部っちは相當焦っているようだ。
1球目、角高めのボール球。
「うわ!!」
と思わずのけぞるようなボールを投げてきた。多分、これで牽制したつもりなんだろう、続く2球目は外角低めにストライクがって來た。すると絹やんが
「やっぱ。ライパチ、ライパチ」
その後に矢部っちがさっきの俺の打球を思い出したのかもしれない。外野に向けて
「外野!!前進!!」
その指示と共に外野は定位置よりやや前進守備を取った。これでさっきのヒットだとライナーとして捕球される。ここでヒットでも打たないと矢部っちのことだ、結局、勝負はなしとか、俺の負けとか言い出した揚げ句、絹やんと外やんをつかって、ズボンをがしにかかってくるかもしれない。ふとそんなことが頭をよぎった。しかし、今はこの場面をどうするかだ。俺はなんとしてもこの前進守備からどうやってヒットを打つかを考えないといけない。簡単なヒットの打球は必ずアウトになる。俺の腕力だとレフトを超える大飛球を打つ力はない。さっきの矢部っちが投げた角高めボールを見て次は外角低めの可能が高い。ということは流し打ちという選択もあるがセンターとライトは前進守備の上ややライト側へ守りを固めていた。ということは、選択肢は、2つ、早い打球で、レフト線を狙うか、左中間を狙うかしかないのだ。しかも、さっきのボールを見ると矢部っ地のボールは重そうだ。ということは、レフト線まで引っ張った場合、ぼてぼてのゴロになる可能が高い。つまり殘された選択肢はショートの頭上を超えるライナーの打球を打つことだ。ということで一球待つことにした。
「ストライク!!」
案の定、外角低めのストライクだった。ということは、次は角へ投げてくるに違いない。俺はボールは次の角高めのと予想し、前足をしベースよりに出してバットを構えた。
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