《リーンカーネーション 小學生に戻ったおれ》練習
「ごめんなさい!」
「キャプテンが遅れて來てどうする」
土曜日の午後3時からソフトボールの練習があったのだが、天野さんの家での時間がかかって、遅れてしまったのだ。
流石にあの事で遅れましたなんて、エッチな遊びをしてましたなどとは言えるはずもなく、ひたすら謝った。
何故、この時期に練習をするかと言えば、秋の大會に向けての練習、実は明日の日曜日に秋の大會が行われる。実質、ぶっつけ本番みたいなことになるのだが、それは毎年のこと、6年生が抜けた後、初めての大會になる
俺は、ピッチャーとライト、矢部っちが基本的にピッチャーとセカンドとポジションが違う。セカンドとライトをすることになったのが、新しくって來た3年生の出木杉君なんだけど、こいつは想像以上にそつなくをこなし、バッティングもうまい。という訳で、次期レギュラー候補だ。コーチはというと、橋本さんの意見を參考に、俺と矢部っちを2枚看板にしようとしているが、問題もある。それは、矢部っちは球速が早いが、制球力に難が有る。俺はというと、球速が遅いが制球力がある。しかし、俺のボールは山なりのボールと普通のボールの2種類しかないので、そこを狙い撃ちをさせる可能があると橋本さんに指摘をけている。つまり課題は、もうし早くコーナーへ投げ分けるボールと遅く手前に落ちるボールを完することだった。一方、矢部っちは制球力をつけることだった。明日の予選まで時間がない。
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相手チームは、緑町ドリームズというたいしたことがないチームだとは聞いている。とりあえず、俺は、同じフォームで5種類の玉を投げることが出來る練習をしていた。一方矢部っちも思ったより制球力が付いていた。
これで、予選は大丈夫だろうと思っていたら、練習の終わりに話を切り出した。
「俺は、この大會でコーチを辭めることになった」
「えっ--!!」
「実は、俺は、來月転勤で東京に行くことになった」
そんなコーチの一言に全員が驚いた。そして、コーチは今回の大會までの指揮をとり、後任のコーチへバトンを渡すことになったそうだ。そして、紹介されたのは、四谷というコーチと転校生の四谷君だった。
「みんな頑張ってくれ!!」
「「「はい!!!」」」
明日からの試合、俺達が頑張らないといけない狀態になってしまった。
今日參加した四谷君、本名を四谷竜馬という。格は矢部っちとほぼ同じくらいで、學校では、まだ馴染んでいなかったこともあり、ほとんど話したことがない。何故か暗い影をじてしまう印象をけたのであまりいい印象はなかった。以前のチームではピッチャーをやっていたそうでサウスポーから繰り出すボールは、そこそこのものだった。と矢部っちと同じくらい。コーチはいきなりピッチャーはさせられないと言って彼をファーストに起用したのだった。バッティングは矢部っちのボールにうまく対応していたので5番となった。こうして明日の試合に備えたのだった。
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***
第1回戦 対緑町ドリームズ
円陣の中心で俺がんだ。
「勝つぞ~!!!」
「「「「おーー!!」」」」
「フロッグーーゥ!!!ファイト」
「ファイト」
「ファイト」
「ファイト」
「ファイト」
「ファイト」
「ファイト」
「ファイト」
「「「「おーーーー!!」」」
こうして、1回戦が始まった。先発は、矢部っち、これは、コーチの発案だった。投手経験がない矢部っちにまずは、1回戦で慣れてもらうのが目的だった。ということは、俺はどうなるということになるんだけど、そこは、途中で代して、最後にもう一度矢部っちで抑えるということだった。つまり、先発は、矢部っちでスピードのあるボールで、途中は俺の遅いボールでを狂わせて、最後に速い球で押さえるということらしい。攻撃はというとジャンケンに勝ったので後攻を選んだ。
初回、矢部っちがかなり張していたのか1番バッターを歩かしてしまった。しかも、完全なボール玉を4つも続けてしまった。ドリームズには俺の友達の青木がいる。しかも、3番ピッチャーのようだ。にDREAMの筆記の文字が赤で書かれていて、ユニフォームは白い。それとは対照的に帽子は真っ赤でDの白文字が目立っている。広島のユニフォームっぽくかっこいい。俺たちのカエルよりはいいかもしれない。さてと、打順は2番、奴はバントの構えをしている。
「打たせていこう!!」
俺が聲をかけると一斉におー!!と反応した。バントは1球目から功、ワンアウト2塁、そして、3番の青木だ。こいつは曲者だ。俺と同様に格は良くない。しかし、運神経はいいのだ。だから、3番に抜擢されているのだろう。
カキーン!!!
ボールはセンター前に落ちるクリーンヒット
「セカン!!」
俺の一言でセンターはセカンドへ投げると1塁はストップ、2塁走者は3塁を回ったところで止まった。そのまま走ったら、ホームアウトになるのは目に見えていたから、當然の判斷だろう、依然、ピンチが続く、
「ボールーフォー!!」
矢部っちピンチ!!ストライクがらない。そして、押し出し・・・先取點を奪われてしまった。慌てたコーチがタイムを取った。
「す・・すまん・・」
「矢部っち・・・あと1點くらい大丈夫だから」
俺が矢部っちの肩を叩いて話をすると
「何言ってんだ!!満塁だぞ!!」
「落ち著けよ!!まだ!!1回じゃないか!!キャプテンを見たろう。あの青葉學園との決勝、初回大量點を取られても取り返せたじゃないか」
「あれは、漫畫の話だろう!!」
どうも後ろ向きになってい待っている矢部っち、いつもらしくない。いつもならもっといい加減なんだけど、今日はやけにい。
「どうしだんだ?矢部っちらしくない」
「俺は、橋本さんの様にはなれない!」
するとみんなが落ち込んでしまった。今まで橋本さんにおんぶに抱っこだったこのチームみんなそのことを口にはしないが気付いていた。するとみんなが俺を見つめた
「佐藤!!お前!!橋本さんに選ばれたキャプテンなんだ、お前ならどうする?」
みんなの目が俺に向かってきた。
「俺は、矢部っちのような速い球は投げられない。けど、俺が出來るのはみんなを信じで全力でボールを投げるだけだ。ただ、それだけだ」
すると矢部っちは、ぼそっと
「そうか・・・わかった・・」
こうしてタイムが終わった。この後、ゲッツー崩れの間に1點を失うが、矢部っちの闘もあって、2失點で何とか終えることが出來た。
1回裏、先発の青木の前に外島、絹やんと連続三振に取られた。戻ってきた絹やんが呟いた
「おかしい?最後のボール、沈んだ気がしたんだ」
そして、3番の矢部っちが3球目を空振りした。
「ストライク!!バッターアウト!!」
そのボールを見た瞬間、四谷君のお父さんがぼそりと呟いた
「ドロップボールだ!!」
「ドロップボール?」
「そうだ、縦に落ちる様に変化するボールだ」
コーチも頭をひねっている。こうして、ドロップボールという魔球の前に1回裏が終わってしまった。
2回表
矢部っちが踏ん張り、3者を何とか打ち取った。そして、ベンチに戻ってきた俺に対して
「次の回から頼む」
そう言って、俺にバットを渡した。そう4番俺だ。しかし、おれとしても、ドロップボールは見たこともない。どうする?バッターボックスへ立つ、初球はストレートで外角に外れた。
「ボール」
球速はこれでわかった。さて、これをどう打つかなんだが、実は、前にもいったと思うだけど、小學校のグランドは南北に長く校舎が西側にある。しかも、グラウンドはそれぞれ南東と北東側にホームがあるので、必然的に片側のグランドが狹くなる。今回は、レフト側が狹いのだ。かと言って初打席で、中々キレがある青木君の玉をライト側へ流し打ちが出來るわけでもない。ということで、レフト線へ引っ張ることにした。こうして2球目、さっきより速い球がインコースへずばりと決まった。
「ストライク!!」
こいつ、考えて投げてるのか?それとも偶然なのか?運神経がいい青木のことだ考えて投げているに違いない。まだワンストライク、ワンボール、通稱ワンワン、まだ、ボールを投げられるが小學生にそんな余裕はない。ということは、ストライクに違いない。しかも、インコースだ。さっきの俺を見て対応できないだろうと思っているはずだ。
青木が構えた。モーションにって、出てきたボールは、予想通りインコースだ。俺は、バットを素直に出した時だった。徐々にボールが沈んでいく。
「くっ!!」
左足を踏ん張って、バットを出すのを遅らせて、軌道をし下げた。
ガッ!!
しまった!!打ち損じた!!ひょろひょろっと打ちあがったフライは奇妙な回転と軌道でショートへ飛んで行った。しかたなく、必死に走る俺その橫で
「オーライ!!オーライ!!」
ショートがボールの落下點に到著している。俺は、そのまま走った。そして、俺がセカンドに到著した頃、ショートがボールを捕ろうとした瞬間だった。ショートの聲がした。
「あ!!」
振り返るとショートのグラブに収まったはずのボールがグラブからこぼれて転々とレフト側へこと転がっていった。おれは、慌てて3塁まで進塁した。
「すまんすまん」
「どんまい!!」
そんな聲が相手チームで聞こえているが、青木が俺を見た目は怖かった。続く左バッターボックスにはいった四谷君が初球
カキーン!!
鋭い打球が二遊間をすり抜けて行った。こうして、1點を返した俺達、続く6、7、8番は3者3振となってしまった。あの青木のドロップボールを攻略しないと俺たちに勝ち目はないと思った瞬間だった。
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