《リーンカーネーション 小學生に戻ったおれ》それから

あの日からあることに気付いた。それは、岡田さんの視線だ。振り向くと目を逸らしている。けど、視線をじるんだけど、その視線以外にたまに井上さんと視線があったりなんかもする。そんな注意力散漫な俺を先生は見逃すはずもなく

「佐藤!!ここから読め」

そう言われても、俺自授業を何も聞いていないので、どこだかは、わからない。そんな時だった。隣の岡田さんが、開いているページのある部分を鉛筆で指してくれた。その場所がわかれば、後はゆっくりと読み上げるだけだ。小學生の教科書を読み間違うはずもなく事なきを得た。しかし、先生はそのことが不満だったらしい。その為か次の算數の時間に変なことが起きてしまった。

その前に休み時間、また、天野さんがやって來て、今週の土曜日のことをしつこく言ってきた。するとやはり、彼の行がどうしても気になった。井上さんが、

「天野さんって、佐藤君のこと好きなの」

すると素直にはいと答えてしまったもんだから、井上さんが俺の方を見て、

「小さいのにモテルのね」

と言った途端、太田さんと山田さんが現れた。

「そんなこと言って、佐藤君のこと好きにならないでね」

まさかそんなことを言われるとも思っていない井上さんは

「こんなチビを好きになるはずないじゃん」

すると天野さんと太田さんと山田さんが顔を見合わせてほっとしていた。

「実は、彼結構人気あるいるのよ。ライバルが増えると大変だから」

「どういう意味、ひょっとして太田さん佐藤君のこと好きなの」

「そうよ」

答えているのを見て驚いている井上さんの橫でぴくぴくっと話を聞くたびに小さな反応をしていたのは岡田さんだった。その時だった、山田さんまでが

「実は私も佐藤君のことがすきなの」

正々堂々というものだから、それを聞いた井上さんは、あきれていた。

「天野さんに、太田さんに、山田さんまで?あんたモテモテだね」

とおれを指さしたんだけど、

「けど、なんで、こんなにモテるようになったの?」

「井上さんは、ソフトボールやってないでしょ」

「うん・・・」

「彼、ソフトボールで3度もホームランを打っているのよ。凄いと思わない。しかも、私達と約束したうえでよ」

「そうなんだ・・・」

ソフトに興味がないせいもあって、反応が薄い、どちらかというと好きになるって?どんなじかということの方が知りたいようだった。すると、

「私たちは、みんな佐藤君のことが好きなんで、いまは、佐藤君の大事な友達の一人となっているの、誰が正式な人になれるか、今みんなで競いあっているの」

「ちょっとまって、みんなって、ここにいる3人だけじゃないの?」

「さっきの天野さんも含めて、あと5人はいるわよ」

すると俺の方を見る目がきつくなってきた。

「このたらし」

「ははは・・・」

多分、井上さんにはかなり悪い印象を與えたに違いない。けど、隣にいる岡田さんがやけに暗くなっている。かといって、授業中、聲をかけることも出來なかった。やはり注意力散漫な俺に目を付けていた先生は、不意をついたつもりで俺を當ててきた。算數の問題で、5÷8という問題だ。

「さっきからキョロキョロして、この問題を解け!」

「はーい」

黒板に8分の5と書いて先に戻ろうとしたら、先生が

「ちょっと待て」

「間違っていないでしょ」

「誰が分數でかけと言った」

「先生は問題を解けとしか言ってないよ」

 

「やかましい!今は數の授業をしているんだ」

「はいはい」

「はいは一回でいい」

「はーい」

0.625と黒板に書くと筆算も書けとか、もうなんなんだよと答えを書くとうぬぬぬと唸っている。

「これでいいでしょ」

こうしてようやく解放された俺はまた岡田と視線があったがすぐに目をそらせた。するとその橫の井上と目が合って、座るところで

「そんなに視線を送っても何もありませんから」

なにを勘違いしているんだろう?

こうして、悶々とした日が數日を過ぎて行って、週末の金曜日、先生の一言が俺たちの心をわしづかみにした。

「放課後、小學校の式チームの募集があるから、興味がある奴は、放課後、ここに殘るように」

いわるゆ防犯野球だ。この年からの子も參加できるようになったので、すぐに山田さんがやってきた。

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