《破滅の未來を知ってしまった悪役令嬢は必死に回避しようと闘するが、なんか破滅が先制攻撃してくる……》第九話~そして破滅がやってきた~

その日の夜は靜かだった。

晝にディランと一緒に自由市場に行って、帰りはアンが泣きわめいていたからかな。この靜けさがちょっとだけ怖い。こういう時は人形を抱いて寢るのが一番だと思う。

あのムーちゃん人形を抱いて寢たいところだけど、あれは來月まで我慢することになっている。

だからこの前買ってもらったウサギの人形を抱いて寢ることにした。

私はウサギの人形を手元に引き寄せるとぎゅっと抱きしめた。これはこれでふわふわだ。

うっとりとしていると、コンコンっとドアが叩かれる。「どうぞ」と返事をするとアンがやってきた。

「アン、どうしたの?」

「いえ、そば付きメイドとしての仕事をしようと思いまして」

「そう思うなら普段からそうしてよ。で、その仕事とやらは何? 私はもう寢ようと思っていたんだけど、もしかして邪魔しに來たの?」

「いえいえ、そんなわけないですよっ! お休み前にお茶でもどうかと思いまして。ぐっすりと眠れるようにハーブティーを持ってきました」

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アンは持ってきたポットとカップをこちらに見せてきた。ワゴンとか使わず手で持ってきたんだ。それはそれでメイドとしてどうなんだろう?

私の部屋にある機の上にカップを置き、ポットからハーブティーを注ぐ。湯気が立ち上がると同時に優しい匂いが漂ってきた。なんだか心地いい匂いにじられて心が安らぐ。

ベットから這い出て機の近くにある椅子に座った。もちろん、ウサギの人形は抱きしめたままだ。

「ありがとう、アン」

「これを飲んでゆっくり休んでください。今日はディランと一緒にお外に出かけたんですよね。楽しいときは疲れていることも忘れてしまう時があるので気を付けてくださいね」

「うん、そうだね。さすがに歩き回って疲れたよ」

カップを持って口をつけると、ちょっとだけ熱かった。まあでも飲めないほどじゃない。もしかして、私が飲みやすいように溫度も考えて持ってきてくれたのかしら。アンに限ってそんなことはないか。

ハーブティーはすっきりとした味わいで、和やかな気分にさせてくれた。

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ふぅと一息つくと、アンがこっちをじーっと見ていることに気が付く。

「そんなに見ても罰は取り下げないよ」

「ちちち、違いますよっ! 私がそんな人間に見えますか」

「うん、アンってそういうキャラだよね?」

だって駄メイドだし、競馬場で全財産スってくる人間だし、いいとこないもん。

私を見つめるなんて何か理由があるんじゃないかって思うのが普通でしょ?

「お嬢様がかわいいなーって思ったのと、ウサギの人形なんですけど……」

「かわいいって、ちょっと照れちゃう。んで、ウサギの人形だっけ。これはこの前買ってきてもらったやつだよ。かわいいでしょう」

「はい、お嬢様にあってますよ。ってそうではなくてですね」

ん、それ以外に何があるの。ウサギの人形に変なのころは…………あ。

「こここ、これ、破けてるっ! なんで? 扱いが雑だったのかな?」

よく見るとウサギの肩の部分が破けていた。買ってもらったばっかりの人形だからちょっとだけショックだ。もしかして、前世の記憶を思い出す前の私は結構雑な格でもしてたのかな?

「アンはこれを教えてくれようとしたのね。ありがとう。明日私が直すわ」

6歳児だと甘く見ないでほしい。私には前世の記憶がある。アニメ、ゲームが大好きで、コスプレにまで手を出していた私の記憶があるのだよ。裁だってお手の者さ。

があればの話なんだけどね。

「え、お嬢様が直すのですか? 私がやりますよ」

「アンに任せるのはちょっと……。なんか不安がある」

「そ、そんなことありませんよっ! 私だってやればできるんです。ね、私に任せてください」

「い・や・だ!」

アンの提案を斷固拒否。私は椅子を下りてベットの近くに向かった。抱きしめて寢ると破れた部分がひどくなりそうだから近くに置いて寢よう。

ベットの近くにウサギの人形を置いていたら、何やら妙な音が聞こえた。まさかアンが何かやってっ! そう思って振り返ると、案の定何かやっていた。

「アン、一何をやっているの?」

アンはなんと酒を飲もうとしていた。

どっから出したっ! っというかお前は未年だろう。まだお酒飲める年じゃないはずなんだけど……。

「すぐにそれを捨てなさい。今すぐにっ!」

「い、嫌です。せっかく將來のためにお酒の瓶だけ買ったんです。人したらこれでお酒を飲むんです」

「それの中は何? お酒じゃないの?」

どう見たってお酒のラベルが張ってあるんだけど。

「これは水ですよ。ハーブ水です。健康にいいですよ」

「……しょうがない、今は信じてあげるわ」

そう言って、私は再び機に戻り、殘ったハーブティーを飲み干した。

飲み終わったらなんだか眠くなってきた。

やっぱり疲れていたのかな? アンには悪いけどもう寢よう。

「アン、私は眠くなってきたから寢るわ。後片付けは任せて……もう終わってる」

気が付くとアンはカップとポットを手にもって部屋を出る準備を完了させていた。

「主の邪魔をしない、これはメイドとしての基本ですよ」

「いつもそうだったらいいのに」

嫌味のつもりで言ったのだが、アンは笑顔でけ流した。なんだかんだでメンタルが強いメイドだ。眠気がつらくなってきたので私はベットの中にる。

すると部屋の明かりが消えた。アンが消してくれたようだ。

「アン、おやすみ」

「おやすみなさいませ、お嬢様」

そして私は眠りについた。

そして翌朝、事件が起こった。

ぐっすり寢れたからか、朝はいい目覚めだった。ぱさぱさした目をこすって、ぐっと背筋をばす。今日は一日何しようかなと能天気なことを考えながらベットを出た。

そして何かを踏んだのだ。なんだろうと思って視線を移すとーーーー

「きゃああああああああああああああ」

そこにはバラバラのウサギの人形があった。

驚きのあまり、思わず聲をあげてしまう。

だってそうだろう。明日直そうと思っていたウサギの人形が、目を覚ましたらバラバラになっていたのだ。

耳はもげて、四肢は取れていた。側から出た綿が床に散らばっている。悪意に満ちた所業だった。

え、これってどういうこと? なんで人形がバラバラになっているの?

バラバラになってしまった人形におびえた私は、誰かが來るまでベットの上で震えるしかできなかった。

れもなく突然起こった人形バラバラ事件。一なぜこんなことが起こったのか。私は恐怖でを震わせた。もしかしたら人形ではなく私をバラバラにしようとしていたのだろうか、そう考えると背筋がぞっとする。

悲鳴を上げてからしした後、ケセラが私のところにやってきた。

アレ? こういう時はアンが來ると思っていたんだけど。

「どうしましーーきゃあああ。な、なんですかこれは」

「わ、私もわからない。目が覚めたら人形がバラバラになっていたの。お願いケセラ、怖くてけないの。ここから連れ出して」

「わ、わかりました。それにしてもこれはまずいですね」

「何がまずいの?」

「人形をバラバラにするなんて人間に欠けています。これは完全に法に引っかかっていて、刑罰が與えられるでしょう」

「そ、そうね。そんな人が私の部屋に侵してきたなんて……怖いわ」

「いえ、そうではなくてですね……。詳しくは皆さんが集まってからにしましょう」

「ん? とりあえずわかったわ」

ケセラに連れられて食堂で一人待つ。

しすると全員が集まった。

今食堂にいるのは、私、お父様、お母様、アン、ケセラ、ディラン、ゼバス、ポルチオだ。

あと天井裏に半蔵がいる。

「さて、ケセラよ。一何が起こったのだ。朝から悲鳴のようなものが聞こえたが」

「それが、お嬢様の部屋で人形がバラバラに……」

「な、なんと、それは真かっ!」

「はい、事実です、旦那様」

「むむ、これはまずいな。このままではヘンリーが絞首臺の上に立つことになる。しかし、このような殘なことを我が娘がやるとは……」

ん? なんでそんな話になっているの? ってか絞首臺って何さ。

「ですが旦那様、お嬢様には機がありません。もしかしたら別の誰かがお嬢様の部屋に侵して……」

「いやそれはないだろう。家の者以外にこの屋敷に侵するのは不可能だ。家の者でヘンリーの人形をバラバラにするやつもいないだろう。それに私はディランから聞いている」

お父様とケセラの話の方向が怪しくなってきた。聞いているだけでわかるんだけど、犯人は私って思っているよね。違うから、絶対に違うからっ!

なんで娘を疑うのさ、お父様。お母様も何か言ってよ。

「あらあら、ヘンリーちゃん。とうとうやらかしたのね」

お母様すら見方じゃないっ!

訳の分からない狀況に私は戸うことしかできなかった。それでも話だけは進んでいく。

「ディランよ。もう一度聞きたい。ヘンリーは昨日、新しい人形をしいといったそうだな」

「はい、その通りです旦那様。ですが來月まで我慢すると約束してくださいました」

「だが、やっぱり我慢ができずに犯行を……。これが一番しっくりと來るな。ヘンリー、何か言い殘すことはないか」

お父様はまるで仕事をしているときのような厳しい顔つきで私を見た。なんで親にそんな顔で見られなければならないのか。私は何もしていない、絶対に無実なのに。

「私はやっていません。お願いです、信じてください」

「と言われてもな、機があるのはお前だけだ。お前がやったかもしれない人形をバラバラにするという行為は、法に引っかかっている」

「一何の法に引っかかったのですか?」

この國の法律は歴代王族の名言によってできている。人の考えや行なんてそれぞれ違う。だからこそ、法律をよく理解していないと法なんて簡単に破ってしまう危険があった。

私はそれを軽視しすぎていた。だからこそ、今の現狀に陥ったのだ。

お父様は語った。私がどんな法に引っかかってしまったのかを。それは子供にはとても厳しい容だった。

「かつての王は言った。人間は完璧でなければならない。我々は不完全だからこそ、神がまれたものではない。なら、神がむべき完璧な人間になろうではないか。これにより不完全と思われるような行を取ると刑罰が與えられるようになった。人間からかけ離れていくほど刑罰は重くなる。己がのために人形をバラバラにするなど、論外すぎる。これは確実に死刑になるだろう」

それは突然やってきた。お父様の言葉ではっきりと理解できてしまった。

これ、破滅フラグ立ってるよね。破滅イベントに突しているよね。

私はまだ6歳で、ゲームの破滅イベントは高等部の時で、まだ十年以上時間があるはずなのに……。

なんか破滅イベントが突然襲ってきたんですけどっ!

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