《破滅の未來を知ってしまった悪役令嬢は必死に回避しようと闘するが、なんか破滅が先制攻撃してくる……》第十二話~盜まれていた暗殺道

半蔵は、先ほどのアンのように首をイヤイヤと振って抗議してきた。

「主殿が使った後のトイレならまだしも、好きでもない奴が何かしたトイレなんて漁りたくないでござるっ」

それもどうなのだろうか。私が使った後って、どう考えても変態的な行だよね、キミ。

そんな変態が私に仕えているんだと思うと、なんだかぞっとする。

今のは心の奧底にしまってきかなかったことにしよう。

嫌がる従者には、ご褒をあげるといいって誰かに聞いたことがある。飴と鞭をうまく使い分けることが出來る人間が上に立つ素質を持つのだ。

という訳で、ご褒をちらつかせてみよう。

「ああ、もしアンが捨てた証拠になりそうなものを回収してきてくれたら、ご褒をあげようと思ったのにな~」

「ほ、本當でござるかっ! ほっぺにちゅ~してくれるでござるか。了解でござる。見事回収してくるでござるよっ! という訳で、行ってくるでござりゅ~」

「ちょ、ちゅ~するなんて一言もーー行くな、人の話を聞いてぇーーーー」

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半蔵は私の聲なんて聞こえてませんといわんばかりに走り去っていった。

どうして私の周りの人間は人の話を聞いてくれないのだろう。

まあいいや。ちゅ~を我慢すれば、もしかしたら助かる可能も見えてくるかもしれない。

あの駄メイド、絶対に犯人にして追放してやる。

ひそかに決意を固めた私は調査を再開した。といっても、使用人室で探すものなどさすがにないだろう。

私はそのまま部屋を出ようとする、そこであるものが目に映った。

「あれ、なんでこんなところに裁が置いてあるんだろう」

見つけたのは散らかった裁セットだった。針が針山に刺さっておらず、糸もほどけてぐちゃぐちゃだ。一誰のだろうとったら、ぬめりが酷かった。

これ、絶対にアンのだろう。そう思ったのだが、よく見ると『ケセラ』と名前が書かれている。

エロメイドはなりだけしっかりしていると思っていたのだが、こんなぬめりの酷いものを持っていたなんて。

いや、服が弾け飛んだ際にあの黒いかアンの機にでもれてしまったのだろう。

とりあえずこれは回収しておこう。

使用人室は一通り調べた、次の場所に行こう。そう思って私はそのまま部屋を後にした。

◇◆◇◆◇◆◇◆

外から見えた報がしい。そう思って中庭に向かった。庭師のポルチオは夜遅くでも平気で仕事している仕事中毒者だ。いや、ただ単に庭いじりが好きなだけかもしれない。

そんな彼なら、ディランよりもっといい報を持っていることだろう。

なので中庭に向かおうとしていたのだが、意外な人が突然現れる。

「あらあらうふふ、どこに行こうとしているのかしら?」

突然後ろからそんな言葉が聞こえてきた。使用人室を出た時に確認したが、後ろには誰もいなかったはずだ。

でもこの聲はお母様の……。本

恐る恐る後ろに振り返ると、お母様がいた。のほほーんとした雰囲気が本のお母様だとじさせてくれる。ちょっとだけ落ち著く。

「お母様、一どこから現れたのですか」

「そんなの決まっているじゃない」

お母様は窓を指さして笑顔をこちらに向けてきた。

いやいやいや、公爵夫人が窓から侵っておかしいでしょう。きっと何かの冗談だろう。

「あははっ、お母様ったら冗談がお上手……え?」

笑って誤魔化そうとしたらお母様の姿が消えていた。

どこだとあたりを見渡すと、私の後ろにお母様がいた。お母様、あなたは何者ですか。

「ね、わかったでしょう?」

「えっと、お母様が何者かわからなくなりました……」

「あらあらうふふ」

笑って誤魔化そうとするお母様を見て私はあきらめた。お母様の正はいつか知ることが出來ればいいや。今聞くのは、ちょっと怖い。

「それでお母様はどうしてこちらに?」

「ちょっと聞いて、ヘンリー。大変なのよ~」

のほほんとした雰囲気が大変さを一切じさせない。本當に慌てているのかと疑わしくなるが、まあ聞いておいて損はない。何か報がつかめるかもしれないしね。

「それがね、象も一瞬で始末できる超強力睡眠薬がなくなっちゃって。どこかに落としたのか盜まれたのか……どうしましょう」

「いやその前に、なんでお母様がそんなものを持っているのですかっ!」

普通暗殺者とかが持っているものだよね。公爵夫人が持っていいものじゃない。絶対に何かが違う。でも、お母様から返ってきた言葉は予想のはるか上をいっていた。

「何を言っているの。これぐらいは公爵夫人としての嗜みですよ」

「…………意味が分からない」

像を一瞬で始末できる嗜みって何? 嗜みって趣味とかそんなものだよね。多分そんな意味だった気がする。

んで、その超強力睡眠薬をどう嗜むの。

「ん~、最近騒だから、敵を始末するために…………あらあら、これはヘンリーに話すのは早いわね。ごめんね、今のは忘れて頂戴」

…………聞きたくなかった。

お母様が危ない何かにかかわっているってことがよく理解できてしまったからだ。

きっと明日には忘れられるはず。それまで考えないようにしよう。

ただ、超強力睡眠薬がどうなったかは気になる。下手をすれば大変な事件が起こる予。もうすでに私が破滅するかもしれないって事件が起こっているけど、それよりも悲慘な何かが起こると思う。

例えば、私が誤って飲んで死亡とか、そんなところか。

さすがに、いきなり破滅とかないよね。何かしらのイベントを通してから破滅なんだよね。いや、破滅したくないけど、死役は嫌だよ。

「見つけたら確保しておきます。ところでお母様。昨日の夜は何をしていました?」

「あらあら、探偵の真似事でもしているの。事聴取なんて初めてだからワクワクするわ」

「こんなのでワクワクするとか、お母様がかわいすぎる」

「あら~、かわいいね~。それはそれでうれしいわ。えっと、昨日の夜のことよね。えっと、どのぐらいの時間かしら。夜といってもかなり長いわよ」

それもそうだ。私が起きている時間は除くとして、寢た後ぐらいかな。何時だっけ、覚えていない。

「私が寢たぐらいの時間でお願いします」

「確かヘンリーが寢た時間は夜中の9時13分27秒56だったわよね。その時間は別館の焼卻爐にいたわ」

え、なんでそんな事細かく時間を言えるの。おかげで後に何言ったのかよく分からなかった。

「お、お母様? もう一度いいですか。あの、時間はいいのでどこでなにしていたのか教えてください」

「あら~、ヘンリーには難しかったかしら。別館の焼卻爐で……を燃やしていたのよ」

「えっと、何を燃やしていたのですか」

「だから……よ」

なんか聞いちゃいけない気がしてきた。

お母様、あなたは本當に何者なの。もしかして、半蔵が言っていた首狩りシルフィーって……。いやいや、そんなわけないよね。絶対にないよね? ないんだよねっ!

「お、お母様?」

「あらあら、そんな引きつった笑みをして、かわいい顔が臺無しよ?」

誰のせいだ、誰の。

お母様が危ない人に見えてきたから笑みが引きつっちゃうのに、何言っちゃってんのっ! とは口に出して言えない。あとが怖いからね。

「そ、そんなのはどうでもいいんです。それより、何か怪しい人影とか見ませんでしたか?」

「それならたくさん見たわよ」

「え、なんで?」

「なんでって言われても、この屋敷によく來るわよ。暗殺者とか殺し屋とか、反逆者とか、その他もろも、まるでゴキブリのように湧いて出てくるから叩くのが大変だわ」

「お、お母様が始末しているのですか?」

そう言ったら、一瞬だけお母様の表が無表になった。だけどすぐにいつもののほほんとした笑顔に戻る。そして「あらあらうふふ」と笑ったが、目は笑っていなかった。お母様が怖い。

「し、失禮しましたっ!」

あまりの恐怖に兎のごとく逃げ出した。あまりかかわりたくないけど、お母様だし、今日聞いたことは忘れよう。絶対に、絶対に忘れないと……ストレスで破滅するかもしれない。それだけは嫌だなー。

そう思いながら、私はポルチオのいる中庭を目指した。

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