《破滅の未來を知ってしまった悪役令嬢は必死に回避しようと闘するが、なんか破滅が先制攻撃してくる……》第十九話~豚さん、意外とモテるのね~

「ちょーっと待ったっ! 汝、どこに行こうとしている。我が名乗ったのだ、汝も名乗るのが禮儀であろう」

ベルトリオはドヤ顔でそう言った。そして私に近づいてくる。歩くたびに、ドスン、ドスン、と怪獣が歩いたみたいな音がした。

絶対に人が歩く音じゃない。重がいったいどれだけあるんだろう。不思議でしょうがないよ。

近づいてきたベルトリオは、歩くたびに大量の汗を慣れ流し、匂いがすごいことになっていた。

まだ春だから、夏ほど暑いわけじゃないんだけど、そこまで汗をかいて大丈夫なのかなって気持ちと臭くて近づきたくないという強い気持ちが湧いてきた。だから私はとっさにベルトリオから距離を取る。

「……汝、なぜ我から距離を取る」

「だって臭いし……じゃなかった。ハーメツン王國の第二王子様に近づくなんて、恐れ多いですわ」

「汝、今臭いとーー」

「気のせいですわ」

危ない、つい口がすべてしまった。この國の法律は歴代國王のくだらない名言でできている。下手なことを口にすればたちまち破滅に向かうだろう。

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私はそれを人形バラバラ事件の時に理解した。

いつやってくるかわからない破滅イベントにおびえるなら、いっそのこと破滅イベントが起こらないような行をすればいい。

もしかしたら、それで十年後ぐらいに起こるゲームの破滅イベントも回避できるかもっ!

むふふ、これはいい考えだ。頑張ろう。

「なにやら考え事をしている様子だが、そろそろ名乗ったらどうなのだ、ん?」

決め顔がうぜぇ。

「っち、私はヘンリー・フォン・ブスガルトですわ。私のお父様があなたのお父様の弟になります。つまり、私とあなたは従妹ということになりますわ。気持ち悪い……」

「今舌打ちをしたなっ! というか気持ち悪いってなんだっ!」

「気のせいですわ」

「…………そうか、気のせいか」

ベルトリオは複雑そうな顔をしながら、納得した。こいつ、ちょろいな。

私の前世の記憶にあるベルトリオはこんなキャラじゃなかったはず。一何があったら、このオークが俺様系ナルシストのうぜぇ王子になるんだろう。

「まあいい、汝、我についてこい。我はこれからうまいスィィィィィツを食べに行くとこだったのだよ。従妹であるならば、ごちそうしてやるのが王子の務め。どうだ、來るか?」

かっこよく言ったつもりなんだろうけど、言葉と行がかみ合っていない。

こう、初めての子に聲をかけておどおどしているじがする。

それに、無駄にばした言い方がすげぇうざいけど、一緒スイーツを食べに行こうよって、私にナンパしているのかな。

やっぱりこいつは、私の知っているベルトリオなのかもしれないとちょっとだけ納得した。

こうやっての子に慣れていき、最終的には所かまわず手を出す狼になっていくんだね。

んでもって、『は破滅の後で』の主人公に手を出した途端、フルボッコにされるんだ。可哀そうに。

憐れんだ目で見ていると、ベルトリオがちょっとだけきょどった。初めて聲をかけてみたけど、もしかして気持ち悪がられているのかな? みたいなことを思っていそうだ。

まあ、気持ち悪いのは事実なんだけどね。

  

なんか小っぽいと思ったとたん、なんだかかわいい奴だと思った。

見た目は気持ち悪いけど、私が大っ嫌いなベルトリオとは違うんだ。ちょっとぐらい遊んであげてもいいかな。

「はぁ、仕方ないわね。ついていってあげる。しっかりエスコートして頂戴ね」

「おおおお、おう、我に任せるがいいっ! さぁ、手をーー」

「それは遠慮しておくわ」

そういうと肩をしょんぼりとさせた。いやつめ。だけどそれは出來なんだよ。

手をつないだ途端、隠れている半蔵が何をするかわからないからな。今でも殺気みたいなものがひしひしとじられる。

トラブルにならないといいなーと思いながら、私とベルトリオは王都のお菓子屋さんに向かうことになった。

◇◆◇◆◇◆◇◆

ベルトリオについていた結果、たどり著いた場所はケーキ屋さんだった。

店の名前はシャルロッテクロイツ。店の前にいるだけで、甘い匂いが漂ってくる。

ここはの子にはつらい場所だ。

だって、店の前にいるだけで、涎が……。

ここはおいしいケーキ屋さんなんだろう。いいなー。こんなおいしそうなケーキ屋さんが近場にあるなんて、王都って素晴らしいっ!

でもついでにあれもあると私的にはうれしいんだけどな。こう、龍廚房りゅうちゅうぼうに匹敵するほどおいしい中華屋さん。

ケーキと同じぐらい中華料理が大好きだからねっ!

「ここは我が知る中でもかなりおいしいケーキ屋さんである。マカロンやシュークリームなど、たくさんの種類のスウィィィィィィツがあるが、中でもショートケーキが絶品であるっ!」

「そうなんだー、店の前にいるだけでもすごくいい匂いがするもんね。きっと絶品なんだよっ!」

「そ、そうだ。あまりのおいしさに世界が変わるほどだからなっ!」

ケーキの話になると、ちょっとばかし聲のトーンが高くなっていた。ベルトリオは本當にスイーツが大好きなんだね。

さて、店の中にろうとしたとき、周りから聲が聞こえてきた。

「ねぇ見て、スイーツ王子よ」

「え、彼が行った店はどこも絶品といわれるあの?」

「きゃあああ、スイーツ王子様っ! 今日も最高のグルメリポートをお願いしますっ!」

「わ、私もあの店行ってみようかな?」

「あんた、太るわよ。私は太らない質だから、食べに行くけどね。太る質の人は可哀そう、っぷ」

周りのたちが、ベルトリオを見てざわめきだす。こいつはかなりのスイーツ通なんだな。った店はどれも絶品とは、食に対する、いやおかし対するセンスが素晴らしい。

そりゃ周りのたちがざわめくわけだ。

だっての子は甘いものが大好きだからねっ!

でも最後の奴。あれはダメだ。なにが「太る質の人は可哀そう、っぷ」だよ。最低だよ。本當に最低だよっ!

太らない質のの子はの子の敵だっ! うらやましい……。

「何やら周りが騒がしいな。まあいい。ヘンリー、早くろうっ!」

若干テンション高めにベルトリオは言った。スイーツが楽しみすぎてだろうか。私も楽しみだ。ショートケーキ、楽しみだなー。

という訳で、ケーキ屋さんにりました。中にるとさらに強い匂いがじられる。ガラスケースの中に並べられたたくさんのスイーツ。ショートケーキをはじめ、フルーツタルト、モンブラン、エクレア、マカロン、シュークリーム、ロールケーキとどれもおいしそうだった。

中でもひときわ目立つのはダークベリータルト。ブルーベリーとブラックベリーを使ったタルト。こっちのほうがショートケーキよりも値段が高く、おいしそうなんだけど……ベルトリオが言うにはショートケーキが一番おいしんだよね。むむむ、迷っちゃう。どれを食べようかな?

「迷っているのなら、我がほしいものをすべて買ってやろう」

「っきゃ、素敵!」

私は割と現金な格をしているのかもしれない。さっきまで嫌いしているぐらいに、気持ち悪いとか舌打ちとかしていたけど、買ってくれる言ってくれただけで、素敵って……。

まあいいよ。おいしいものが食べられてこっちはうれしいからねっ!

でも……気にしなければいけないことがある。それは重。食べたいものを食べてしまったら、家柄しか取り柄がない、殘念令嬢になっちゃうっ! さて、どれを食べようかな。

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