《破滅の未來を知ってしまった悪役令嬢は必死に回避しようと闘するが、なんか破滅が先制攻撃してくる……》第二十一話~王都一日目はなんだかんだ言って大変だった気がする~
「汝、いきなり噴き出すとは何事か」
かなり低いベルトリオの聲が店に響き渡る。お茶をれてくれた店員さんは、顔を真っ青にしてガクブルと震えていた。私も、オークが怒った……じゃなくてベルトリオが怒った姿が、人食いオークの姿と重なって、落としそうになったティーカップをそっとテーブルに置いた。
でも、噴き出しちゃうのはしょうがないでしょうに。大麻って麻薬だよね。危険なものなんだよね。怖い、怖いんだよ。
あれ、でもこの前お母様が、麻薬は薬だって言っていたような……。大丈夫なのかな?
「だって、このお茶が本當に飲んで大丈夫なのかって思っちゃったんだもの、仕方ないでしょう」
「大丈夫に決まっておるだろう。客に提供しているものだぞ」
「で、でも大麻だよっ! マリファナだよ。すごく危険なものじゃないっ!」
「汝は馬鹿か。確かに、大麻は使いようによっては危険かもしれんが、ここで提供しているものについては問題ない。むしろ安眠効果なども得られる非常に良いものなのだ」
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「そ、そうなのかな……」
そう言って、私はおそるおそる店員さんを見た。
店員さんは私の視線に気が付いたのか、にんまりと笑った。怖っ!
なんだろう、いろいろと大丈夫じゃないような気がするのは気のせいだろうか。
「ふむ、汝のちっぽけな知識だとわからんだろうが、大丈夫だ、問題ないのだ。安心して飲むがよい」
「むむ……わかったわよ。ベルトリオ(笑)を信じるわ」
「何やら馬鹿にしたような言い方をされたような気がするのだが……」
「気のせいよ」
「そうか、気のせいか」
相変わらずのちょろベルトさんだった。
おいしいケーキを堪能した私たちは店の外に出た。ちょろベルトさんはもう一軒行こうとわれたが、時間も時間だったので別れることにした。
だってもう日が落ちかけてるし、そろそろ返らないとお父様が心配しちゃう。
「という訳で半蔵っ!」
「は、ここに」
「帰るわよ」
「らじゃーでござるっ! でも拙者は忍び故に、ながらお守りするで……ごじゃる……うぅ」
泣くなら私についてくればいいのに。私の橫はあいているんだぜ、なんてことは言えない。言ったらめんどくさいことになるしね。
そんなことを思いながら帰路を歩く。次第に空が赤く染まってきた。
早く帰らないと怒られそうだ。私はちょっと小走りしながら屋敷に向かった。帰る途中、甘ったるい匂いが漂ってきた。
匂いにつられて視線を移すと、和菓子屋さんがあった。
…………今から帰ったら割とぎりぎりだ。帰りが遅ければお母様に怒られてしまう。いや、殺されるの間違いか? こうなったら仕方ない。賄賂としてお菓子を買っていくしかないかな。
だけどお金は……。
ポケットをあさってみると、なんかお金がっていた。それと一緒に一通の手紙がっていた。
それを広げて読んでみるとーー
スウィィィィィィィィィツにされし我が従妹よ。今日は楽しかったぞ。だがあれだけでは足りんだろう。はした金をやる。これでうまいものを買って王都を楽しむがいいっ! ハーッハハハハハハハハハ。ベルトリオより。
最後の笑いは余計だし、もうお腹いっぱいだよ。
だけどお金はありがたい。今はただ、怒られないようにしなきゃならないからね。
私はお金を數えてみた。かなりの額があった。これをはした金というのか。王族ってやべーな。あ、私も王家のを引いているんだった。だって、お父さんは現王の弟だし。
という訳で、私は和菓子屋さんに向かった。
店の前にたどり著くと、シュパっと半蔵が現れる。
「主殿、寄り道でござるか。早く帰らないと怒られるでござるよ」
「うん、だけどお土産ぐらいは買っていってもいいかなって。半蔵にも買ってあげようか?」
「ほ、本當でござるかっ! でも、お金が…………」
「さっきベルトリオからもらった」
「なんとっ! 男前でござるな、太っていたが」
「確かに、太っていたけど優しい奴だったねー」
一緒に笑いながら、私と半蔵はお菓子を選ぶ。
ところで、さっきのながら守るというやつは何だったんだろう。
お菓子を一緒に選ぶのは大丈夫なんてちょっと不思議なんだけど、半蔵がいいっていうならいいのかな?
目の前に並ぶお菓子は、日本のお菓子屋さんでよくみられる和菓子だった。ちなみに生菓子じゃない。饅頭とかせんべいとか、蒸して焼いたじのお菓子が並んでいた。
日朝見ながらせんべい食べるのが最高だったなー。
お、桜豆がある。
北九州に旅行に行ったときにかったあの桜豆、とってもおいしかったなー。
確か一´堂いってんどうって1905年創業のかなり古いお店だった気がする。
豆などを使ったお菓子が有名だったんだー。
あの時食べた桜豆と同じものだといいんだけどなー。
もし、あの時食べたのと同じだったら、賄賂…………じゃなくて、お母様たちへのお土産にいいかもしれない。
「私は決まったけど、半蔵は何がしいか決まった?」
「決まったでござるっ! この、キスがしたくなるキスのせんべいを…………」
なにこれ。ある意味ですげぇな。
魚の骨で作ったせんべい。何の魚かといえば、まあキスだな。キスのせんべいって書いてあるんだもの。
それよりも、こう、魚に手足が生えただけの半魚人のようなキャラクターが投げキスしている。
面白い、面白すぎる。
「すいませーん、これとこれ二つお願いしますっ!」
「あいよー」
商品を店員さんに渡すとそれをけ取って金額を計算する。
その時に、半蔵が私の服を引っ張ってきた。
半蔵のほうに顔を向けると、何やら不思議そうに私を見つめてきた。
「主殿、なぜキスキスを二つ買うのでござるか」
「キスキスって……。なんか面白そうだったから買わなきゃいけないって思って」
「なるほど、使命というやつでござるなっ!」
「ま、まあそうなるね」
なんてことを話していると、汚でも見るかのような目で店員さんが私を見ていることに気が付いた。
なぜっ!
「この、変態が……」
だからなんでっ!
◇◆◇◆◇◆◇◆
さて、賄賂……お土産を買った私と半蔵は、肩を震わせながら、屋敷の中にった。
なんでって? すごい強面な男たちに迎えられたからだ。
半蔵の話によると、疾風旅団というかなりヤバい犯罪組織の人間で、半蔵たちが戦った相手らしい。なぜこの屋敷にいるのだろうか。全く意味が分からない。もしかして、私はこれから拐されるの。
なんて思っていると、予想外のことを言われた。
「お帰りなさい、お嬢様」
「犯罪者にお嬢様呼ばわりされたっ! なんか怖いっ!」
「そう怖がらねぇでくだせぇ。我らの姉の命令でっさ」
姉って誰だろう。え、ほんと誰?
お母様かな。信じたくないなー。
「あら、ヘンリー。こんな時間に帰ってきて」
「ご、ごめんなさい、お母様」
お母様が突然背後に現れる。
お願いだから突然後ろに現れないでほしいよ。
「あ、あの、お母様に渡すお土産を……」
「あら、キスキス? うれしいわー」
「いえ、そっちではなくて桜豆の方ですよ」
「そのキスキスはどうするの?」
「私が食べます。面白そうだったので」
「私の娘がその年でそんなものに手を出すなんて、お母さん悲しいわ」
「え、えぇ」
「だってキスキスでしょ?」
「え、これっていったい。ただのお菓子じゃないの……」
キスキスのパッケージをもう一度見直した。
キスキス、これを食べればあなたはを奪わずにはいられない。
なにこれ……。
ついでに分表を確認する。すると薬がっていた。
やべー、このお菓子やべー。
「マセガキねー」
「事実だからなんも言えない……」
薬りのおかしなんてなんで売ってんだろう。というか、半蔵はこれを知っていて買ったんだろうか。そうだったら怖い……。
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