《異世界イクメン~川に落ちた俺が、異世界で子育てします~》読んでおいて割と損はしないエピローグ(しれっと続くよ

「A級冒険者手形、地図と方位磁石、寢袋…冷え込み対策のコンパクト巻き布。著替え一式、は3セットをローテーションするとして……」

ゲオル強襲から3日。

ようやく俺はける様になり、シングとサーガと共に、自室で荷造りをしていた。

ゴウトさんから借りた、この一見普通のエナメルバッグ。

実は『魔法道』と言われるそこそこ高価な品らしい。

「本當にグングンるな……」

「あぶ」

「まぁ、そういうだからな」

なんか、異元圧なんちゃらって名前のアイテムらしいのだが、要するに四次元ポケットだ。

まぁ積載量限界は割と早いらしいが、それでも牛2頭はるとの話だ。

1週間程度で目的地に著く今回の冒険に置いては、充分な積載量である。

ってな訳でガンガン旅に必要なを詰め込んでいると……

「…………」

「何だ、アタシの下著に何か文句があるのか?」

「いや……つくづく俺はお前とフラグを立てられる気がしないなと」

「フラッグ? 旗がどうかしたのか?」

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この世界に俺を異として……というか対象として見てくれるはいないのだろうか。

何か漫畫とかで読むこういう「異世界いっちゃった☆」系って、本人のまない関わらずんなフラグが立するモンじゃないのか。

何故同居しているが3人もいるのに、俺はこんな的なドキドキとワクワクが皆無の生活を1ヶ月以上も続けていたのだろうか。

ああ、早い所帰って初のあの子と、以前はウザくじていた過保護なお姉様に會いたい。

ここまで來ると山本君でもいいから元の世界の住人に會いたい……と思ったが、やっぱ山本君はいいや。

……でも、実は俺まだ、元の世界に帰るを探す旅に出る……ための準備期間、すら終わってないんだよなぁ……

先が見えないとはこの事か……

ま、気を取り直して荷造り&確認作業に戻ろう。

「えー、サーガの著替えと土に還る素材のオムツ、ウェットティッシュ、ベビーショルダー、極限折りたたみ式ベビーベッド兼用ベビーカー、お気にりのぬいぐるみ……」

「だべし!」

「へいへい、お気にりの布ね……」

資金に関しては、國からの援助金を多利用させていただくとして……こんなもん、だろうか。

一応念のためもう一度確認しておこう。

春の気が暖かく世界を包み、心地よい風が草木を揺らす。

旅立ちの日として、これ以上は無いだろう。

しの間、寂しくなるな」

ついに冒険に出るという時。

ゴウトさん達はゼオラ込みで全員そろって俺達を見送ってくれた。

「ま、向こうの方が住み心地が良い様だったら向こうの世話になるといい」

「いや、それは無いと思う」

緩やかな時が流れる牧場と危険地域の屋敷。

百聞は一見にしかずとか言うけど、流石にこれは聞いただけでどっちが住みやすいかはわかるだろう。

「目的地まではアクシデントが無けりゃ1週間で著く」

「おう」

「もし急な金が必要になる様だったら、通過點の『サンシエルバの山道』のすぐ近くに、E級ダンジョン指定の窟がある。鉱石類がごろごろ転がってるから、集めて売りゃそれなりに金になるだろう」

おお、何か冒険っぽい。

「では、シングさん、サーガちゃん、一応ロマンさん。お気を付けて」

「うむ」

「あう!」

「一応って……まぁありがとよ」

「おい小娘! 俺っちには何も無しか!」

「雑魚モンスターとの戦闘中にでもへし折れてください」

「んだとー!?」

この3日間のに、コクトウとセレナは大分素晴らしい仲になった様である。

「……頑張ってね……これ、嗅いでると興ふ……癒されるお香……シングちゃんにあげる……」

「面白そうだな。有り難くいただく」

「いや、やめといた方が……」

何て怪しげな餞別くれてんだこの人は。

「せっかくの餞別だぞ。け取らないのは恥ずべき行為だ」

「そうですかい……」

どこでどう使う気なのやら……

「めぇー」

「おお、ゼオラ。何か久々に見た気がする」

どうやらゼオラも俺達の旅の安全を祈ってくれている様だ。

「『朝を嫌う林ディープナイト』はA級ではあるが、特定のモンスターさえ避ければ他は大した危険が無い。とはいえ気は抜くなよ、ロマン」

「おう」

當然だ。

こんな本來の目的から外れた冒険で死んでたまるか。

「……んじゃ、行くか。『魔剣豪デヴォラの屋敷』」

「だぼん!」

「うむ。サーガ様のの安全のために、何としても、あの男を撃退する力を付けねばな」

「っしゃあ! 俺っちも興してきたぜ!」

さぁ、行こう。

魔王の息子を守るための力を付ける。

そんな不思議な目的を掲げる、小さな冒険に。

「いってきます!」

こうして、俺の最初の冒険が始まった。

安っぽい裝のラーメン屋で、ゲオルは醤油ラーメンを啜っていた。

「……で、魔王の息子さんは、始末した訳?」

「保留した」

「ふぅん」

店主もカウンターの奧で自作ラーメンを啜り始めた。

「……本人のび代は悪くない。更にあの『魔剣』……『デヴォラ』の元へ行けば、化ける余地はいくらでもある」

「嬉しそうね」

「まぁな……だが、そう喜んでばかり、という訳にもいくまい」

新たな親に魔王の息子を守るだけの力があるか。

それはあくまで、『最低限』のラインでしかない。

これからもゲオルは彼らの行に目を配り、もし道を踏み外すと確信した時には―――

「へも、ひんひへひふんへほ?」

「……咀嚼しながら喋るな」

「……ぷっは……でも、信じてみるんでしょ?」

「ああ。信じてみたいと、俺は思っている」

「…………」

「……何だ、俺の顔に何か付いているか?」

「いんや、良い笑顔する様になったなぁ、と思って。うんうん。今のあんたなら結婚してあげてもいいわよ」

「……ふん、こちらから願い下げだ」

「とか言っちゃって~。悪い気はしてないんでしょ?」

「……自意識過剰だ」

「そういうのは、ちゃんと目を見て言ってくれないと説得力ないよ。ほーれこっち向いてみって」

「……とにかくだ。これからは定期的にお前の占いを頼る事になる。構わないな」

やや視線のやり所に困った様なじで、ゲオルは話題を変える。

「30過ぎのおっさんの癖に、初心よねぇ……」

「何か言ったか」

「ううん。なーんにも。了解了解。私としてはガッポガッポ儲かって嬉しい限りよ」

店主はそういうと、一気にラーメンを完食。

「さて、じゃあシメに飲みますか!」

そう言って、店主はカウンターに何種類かの瓶を並べていく。

「それは……」

「ジン系のカクテル用に仕れてやったのよ。謝しなさい」

俺のためにわざわざ仕れてくれた、という事か、とゲオルは笑う。

親にこそ恵まれなかった彼だが、良き出會いに恵まれた。

この店主、チームの皆。冒険者となるための道を示してくれた者や、力の振るい方を教えてくれた師匠。

あの魔王や年の様な『子を想う親』に出會えた事も、素晴らしく思える。

ここ最近、日に日に、自分の人生が付いていくのをじる。

冷たい路地裏から見えていた灰の景など、もうどこにも無い。

「俺は幸せ者だな」

「何を今更。私と出會ったって時點で薔薇人生決定でしょうに」

「……ふん」

差し出されたカクテルをけ取りながら、ゲオルは考える。

もし、魔王がけた予言の通り、あの赤ん坊が『世界を救う英雄』になったのなら、本を書いてみよう。

今までに出した、淡々とした冒険記録とは違う。

とある父親の想いが間違いでは無かったと、その想いのバトンは正しくけ渡されたのだと、世に知らしめるための語を。

もしそうなった時の書き出しは、もう決めてある。

―――『その英雄には、素晴らしい父親が2人いた』―――

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