《異世界イクメン~川に落ちた俺が、異世界で子育てします~》就職する第21話

「よしっ、と……」

俺はようやく著し、コクトウやネックレスを裝備。

やっぱり人間は服を著ている方が落ち著く。

ユウカがヤケにつまらなそうな顔をしているが、知った事では無い。

「んじゃ、行くか、デヴォラの屋敷」

「うむ。さぁサーガ様、ロマンの方へ」

「あい!」

シングからサーガをけ取り、屋敷へ向け歩き出そうとした時、

「ちょっと待って。私も一緒に帰る」

そう言って、ユウカはいそいそとブルーシートを畳み始めた。

慣れた手つきだ。

どうやら、ここにシートを敷いて日向ぼっこするのは、彼の日課らしい。

「ところで、さっきの孫であり娘であり妹ってのは……」

「事実」

ああ、お前が噓を吐いてないのは何となくわかるよ。だからこそ謎なんだ。

どういう屬柄だよ、孫兼娘兼妹って……

「細かい事は気にしない」

ブルーシートを畳み終えると、ユウカはあるを取り出した。

らしいミニポーチだ。

その中に、巻狀にしたブルーシートをやや暴に押し込んでいく。

どうやらあのポーチ、俺達の持ってるエナメルバッグと同系統の便利アイテムらしい。

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「じゃあ、行こう」

ポーチを閉じると、ユウカはスタスタと歩き出した。

まぁ、雰囲気で薄らわかってはいたが、大分マイペースな子である。

「ついにデヴォラとやらに……一、どの様な者なのだろうな」

「ういう! びっしゅ!」

強そうな名前だし、カッコいい奴に決まってる! とサーガが期待に躍らせている。

カッコいいかどうかは置いといて、剛健な者が出てくる事だけはほぼ間違いないだろう。

何せ、ゲオル達が師事する程の者だ。

生半可な輩では無いだろう。

それを考えると、張してきた。

ユウカと共に屋敷の外門を抜けると、俺達はまず、執事長なる人と顔を合わせる事になった。

長い金髪をポニーテールにしており、格好や化粧に気を使えば、としても充分生きていけそうな青年だった。

実に執事っぽいタキシードを上手く著こなしている。

「お帰りなさいませ、ユウカお嬢様…おや、そちらは……?」

執事長は庭の掃除中だったらしく、そのスタイリッシュイケメンなじには到底似合わない竹箒を持っていた。

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つぅか、端の方が霞んで見える様な広大な庭を、1人で掃除してるのか、この人……

ユウカは執事長に俺らの事を軽く説明。

執事長は狀況を把握し、ユウカとし言葉をわす。

どうやらここからは、ユウカに代わってこの執事長が俺達を先導してくれるそうだ。

「初めまして。私はこの屋敷の執事長を務める、マコトと申します」

おお、名前も男兼用が効きそうだ。

しかし、執事なんてのがいるのか。

まぁこんな広い屋敷だ。執事やメイドの1人や2人……いや、數十人は雇いたくなるのも當然だろうな。

……ただ、勤務先がA級ダンジョンってんじゃ、集まるモンも集まらん気がするのだが。

その辺から考えるに、このマコトって執事長さんも、結構な実力者なんだろうか。

「話は聞いております。し前にゲオ…いえ、ある者から、『黒い魔剣を持つ年』を紹介する紹介狀が屆いたと」

あなた様の事でしょう? とマコトはコクトウに視線をやりながら、らかな笑顔を浮かべた。

「あの、その紹介狀の差出人って……」

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「申し訳ございません、その件に付いては絶対に話すなとゲオ…送り主が」

何かさっきから、9割くらい衝撃の事実がれかけてるのは気のせいだろうか。

気のせいという事にしてあげた方が良いんだろうか。

「こちらへ」

そう言って執事長が屋敷の口を掌で差す。

いよいよ、デヴォラの屋敷る訳だ。

小一時間。

そう、小一時間だ。

屋敷にってからもう小一時間は歩いている

現在地は廊下。

とても先が長いし、とても天井が高い。

ただの通路にこんなにスペースを割く意味がわからない。

ただ、しだけ意外な事があった。

豪邸と言えば、壁にやたらデカい絵畫が飾ってあったり、謎の高額を誇る壺とか、いちいち豪華絢爛なインテリアとかがそこら中に飾られているイメージだ。

だが、この屋敷には今の所それっぽいは無い。

一応フロントフロアにそれっぽい金の額縁があったにはあったのだが、肝心の中は、小學生が學校で書くようなクレヨン絵だった。

しかも、サーガが「俺の方が上手いし」とか言っちゃうくらい、殘念なじの出來だった。

デヴォラという人は、余りそういったに興味が無いのかも知れない。

この屋敷がやたら広いのは、「とりあえずデッカい屋敷でも建てとこうぜ」とかそんな雑っていうか豪快なノリだった可能が浮上した。

「さぁ、ここです」

ようやく辿り著いたのは、まぁまぁ豪華な造りのドアの部屋。

豪華っつっても、他の部屋と差別化するためだけ程度の裝飾だが。

「ここが、お嬢様の執務室です」

「え、お嬢様って……ユウカ?」

「いえ、キリカお嬢様のお部屋です」

キリカ?

と俺が疑問を口にする前に、執事長はそのドアをノック。

中から「どうぞ」という返事。

「失禮します」

執事長が開けたドアの先。

そこには、絵に書いた様な実に書斎らしい書斎が広がっていた。

俺の中の書斎のイメージと食い違っている點と言えば、その書斎のデスクに腰掛けている人の外見か。

「その年が、ゲオ…奴の紹介人か。その若さで子供連れとは、珍妙なだな」

偉そうな口調。可らしいな聲。

デスクを我がとして扱うこと、それは書斎という空間の支配者の証だろう。

今、デスクを、この書斎を支配しているのは、下手すればイコナよりも低長な癖に、とてもとても偉そうな態度の

かなり寛大な心で見積もって、小學3年生くらいか。

こう、小さいは華奢だわで、首っこ摑んで放り投げれるんじゃないかとさえ思う。

何この小……とか思ってた俺に、執事長が耳打ちしてきた。

「……言い忘れていましたが、くれぐれもキリカお嬢様の容姿については……」

「おい執事長、何だあの偉そうな子供は?」

シングのその言葉に、執事長のが変な音を奏でたのを、俺ははっきり聞いた。

「…………私は子供では無いぞ、魔人の

「どの口でを言う。お、丁度良い、そこに鏡が…」

「ストップゥ!」

今まで冷靜かつ穏やかだった執事長が、思わず聲が裏返るくらいの勢いでシングを止めにった。

「もぐぅ!?」

シングの口を押さえるだけでなく、書斎の端の姿見を指そうとしていたその腕も取り押さえる。

まさに一瞬と言うべき間に、執事長はシングを拘束してみせた。しかし、遅かった。

キリカお嬢様とやらが、プルプルと震えてうつむいている。

ああ、アレはアレだな。もうすぐ泣いちゃうじのアレだ。

「お、お嬢様、お気を確かに!」

「別に……気にしてないし……もう慣れたし…ふぐぅぅ……」

偉そうな口調はキャラ造りだったらしい。

もう普通に泣く寸前のってじである。

子供扱いされるのが嫌なタイプか……子供だな……

「……あの……で、キリカお嬢様と會って、俺達に一どうしろと?」

今の所、この書斎でキリカお嬢様がふんぞり返ってた理由と、その書斎に連れてこられた理由が見えない。

「どうしろって……お嬢様に修行を付けてもらいたいのでは無いのですか?」

シングのもがきを諸共せず、執事長は丁寧な口調でそう言った。

「……はい? いや、俺はデヴォラさんとやらに修行を……」

「ですから、お嬢様に修行を付けてもらいたいのでしょう?」

…………んん?

「……マコト、多分アレだ。そいつらは私の事をわかってない」

「あ、そういう事ですか」

「そういう事って……」

「いいですか、お嬢様こそ『3代目魔剣豪デヴォラ』、キリカ・ファルセット様です」

執事長の言葉に、キリカお嬢様はちょっと潤んだ目をこすりつつ、肯定する様にうなづいた。

キリカ・ファルセット。

デヴォラの屋敷の現當主であり、3代目魔剣豪。

魔剣豪の証とも言える魔剣『神無カムイ』をけ継いでいる。

ちなみに、今年で21歳。

……らしい。

デヴォラというのは初代魔剣豪の名で、その魔剣の極意の全てを會得した者が、その名を襲名するのだそうだ。

……正直、デヴォラ云々より、あの見た目で俺より5歳も上という事実の方が衝撃的である。

まぁ何だ、とりあえず、ユウカの発言の謎が解けた。

初代デヴォラの孫で、2代目デヴォラの娘で、3代目デヴォラの妹、という事だったのだ。

ちなみに、ゲオル達は皆2代目の弟子なんだそうだ。

その2代目さんは、昨年キリカが魔剣豪を襲名したのを機に、「遊んでくる」と一言殘して冒険の旅に出てしまったとの事。

「まぁ安心するがいい。私だって魔剣豪を名乗るだ。お父様と遜無い、いいや、それ以上の修行を付けてやろうじゃないか」

執事長が用意したキャンディを口の中で転がしながら、キリカが偉そうな口調(キャラ造り)で語る。

……まぁ、俺としては魔剣奧義さえ習得できれば、師は誰でも良いのだが……なんだろう、不安だ。

ちょっと子供呼ばわりされただけでメンタル砕しかけたり、キャンディ1つで落ち著きを取り戻すような人が師匠って……不安だ。

「むぅ……まさかアタシより目上だったとは……先程は失禮した」

「もう構わん。むしろ掘り返すな。もう放っとけ、お願い」

「という訳なので……」

執事長の笑顔も「本當にお願いしますよ」と言っている気がする。

「では、本題にろうか」

「だぼん、んち」

「すみません、ちょっとタイムアウトで」

「……では、本題にろうか」

「本題?」

「魔剣を持ち、魔剣豪わたしを師事したいという事は、魔剣奧義を會得したいのだろう」

その通りである。

ヒエンの使っていた、あの魔剣融合ユニゾンフォールとかいう技。

理屈はわからないが、アレだろう。よく年漫畫である奴。

自分の武と合して、々と強くなる系。

実際、アレを発してからヒエンの炎の溫度やら移速度やらは発的に跳ね上がっていたし。

「教えてやるのは構わない。まぁ會得できるかはお前次第だがな。で、だ。修行を付けるにあたって、條件がある」

「條件?」

「まぁ、簡単な事だ」

キリカがパチンと指を鳴らすと、執事長があるを取り出した。

それは、綺麗に畳まれたタキシード一式。

……執事長、一どこに持ち歩いてたんだ、それ。

「この屋敷で、執事として働いてもらう」

「執事……俺が?」

「ああ、働かざる者得るべからず。レッスン料と修行中の食住分の費用、まさかこちらに全額負擔させようと思っていたのか?」

まぁ、仰る通りだ。

でも、執事って言うと……アレだよな、家事炊事等+雇い主のんな諸事をサポートする系。

……俺、実家住みだったからそんなに家事炊事経験無いんだが……

まぁ掃除くらいなら人並みにできるし、ゴウトの元で手伝っていたので家畜の世話くらいならできるが……

「不安がる事はありません。ウチは未経験者も歓迎ですよ……本人の意思に関わらず、嫌がろうが泣き喚こうが懇願しようが、この俺が必ずや一流の執事に仕上げてやる」

気のせいだろうか、執事長の一人稱が私から俺に代わり、最後の方、口調にややドスが効いてた気がする。

「とりあえず、1週間だな。1週間で、執事として充分に働く事ができると判斷できたら、修行を付けてやろう」

……程、働かざる者云々より、そっちが本命か。

俺を、試すつもりなのだろう。

どういう基準で判斷する気かは知らないが、その1週間の執事生活の中で、俺が修行を付けるに値する者か否か。

仮にも奧義を伝授してもらうんだ。

こっちだって、トントン拍子に修行させてもらえるはずも無いと、しは予想していた。

「……わかった、お願いします」

俺は、魔王を倒した様な化に勝たなきゃいけないんだ。

それはとても無茶な事。

100億人に街頭アンケートを取っても、「不可能だと思う」という回答が100%を占めるだろう事。

そんな無茶をす覚悟を決めて、俺はここにいる。

執事としての仕事くらい、こなしてみせるさ。

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