《あの日の約束を》0話 プロローグ

変化の無い日々を生きて來た。同じくらいの時間に起き、職場に出社して仕事をして終わり次第家に帰る。その後は家でのんびりとした時間を過ごす。

今日もそんないつも通りの日常を過ごすはずだった。

異変に気付いたのは仕事帰りの時。

赤信號で待っているとミラー越しに車が近づいてくるのが見える。僕はその景にふと違和を覚えた。

ミラー越しにはよく分からずし失禮な行ではあるものの後方から迫って來る車を直接見ようとごと後ろを向く。

そして気がついてしまった。後方から來る車の速度が明らかに速いことに。

目の前の信號は赤になったばかりでしばらく変わることはないだろう。にもかかわらず後方の車は速度を落とさず、むしろ加速して近づいているようにさえ見える。

半ば呆けながらもよく見てみると運転手がハンドルに突っ伏していた。居眠り運転、もしくは気絶をしているようだ。

「は? えっうそ!?」

ようやく狀況を把握し自分がとても危険な狀態にあることを悟った。焦った僕はまだかと信號機の方へと目を向ける。このままぶつかられてはたまらない。

しかし前を向くとさらなる衝撃の景が目に飛び込んできた。數秒後にぶつかるであろう僕の車の前には橫斷歩道があり、そこを今まさに渡ろうとする子供が見えてしまったのだ。

ちょうど自分の車の前を通ろうとしているためその後ろから來る車に気づいていないようだ。このままではその子が巻き込まれてしまうことが容易に想像ができてしまう。

改めて後ろを見るがやはりその車は減速する様子はなく、すでに避けることもできなさそうだ。

頭の中は真っ白になりかけでまともに考えられない。どうすることもできないのかと諦めかけたその時、奇跡的にあることを思い出した。

『警察はパトカーを止める時あらかじめハンドルを切った狀態で止めるんだ。何故だかわかるか? そうすれば後ろから車が突っ込んできてぶつかった時に前に突っ込まなくなり玉突き被害の予防になるんだ。

まぁテストには関係ない部分の話だがな。はっはっは』

車學校の教師が話していた容だ。僕は普段授業系は眠くなってしまってなかなか集中できないタイプの人間だったがこう言った豆知識みたいな話だけは面白くて好きだったから眠気を払う意味も含めてよく聞いていた。

これだ!!

僕は急いで子供にぶつからないようにハンドルを切った。

間に合えと心の中でびながら強引にハンドルを回し切る。するとハンドルが限界まで回って止まったのと同時に派手な音と強い衝撃が後ろから伝わった。

「ぐあっ!」

何が起きたのかはもう考えなくてもわかっていた。

後ろから衝突された勢いで自分の車が押し出される。僕はそのまま車ごと道路からはじき出された。

これが平坦な地面なら良かったのだがその先は急な下り坂だ。

車は完全にバランスを失い坂を転がるように落ちていく。當然中にいる僕も何も無いわけがなく車が地面を転がるごとにのあちらこちらをぶつけていく。

回る視界かすれゆく意識の中、車に赤いが散るのを見た。それが何なのか考えようとしたがそこで僕の意識は闇に包まれていくのだった。

こうして加奈瀬かなせ歩あゆむの人生は幕を閉じた。

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