《あの日の約束を》4話 夢……伝わらない思い

人には得意不得意がある。簡単に事をこなす者もいれば、どれだけ努力をしてもなかなか功を摑むことができない者もいる。

失敗は功の元。きっとこの言葉は誰もが一度は聞いたことがあると思う。失敗をすることで學び、同じミスをしないように工夫をする。その繰り返しが功につながっていくという意味の言葉だ。

人は誰しも失敗をするものだと僕は思う。なぜなら人とは不安定な存在であり人が行う事に絶対は存在しないから。

しかしごく一部、失敗を知らずに一生を終える人がいることも否定はできない。

けれどそれはやはりごく一部の人だけなのだと思う。天才だって失敗はするのだ。

閑話休題。

失敗は功のもと。僕はこの言葉を聞くととても微妙な気持ちになる。

人は失敗を経験し、改善點を洗い出して次回に繋げていく。それは分かる。

ではここで1つ疑問に思うことがある。人は失敗をする。そして改善をして次に挑む。ここで2度目の失敗をしてしまうとする。慣れていないのであれば仕方のないことだと言えるだろう。ならば3度目、4度目……と何度も何度も繰り返し失敗をしてしまう者、つまり功を摑むことができない人がいたとする。その人はいつになるのかわからない狀況の中失敗を繰り返し続けなければいけないのだろうか? と。

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「はあぁ〜」

気がつけば僕はため息をついていた。もう何度目かもわからないしそんなことを意識してたら余計に疲れてしまいそうだ。もしこの部屋に鏡があったならきっとそこには余裕のない疲れ切った顔をしたあの子の顔が映っていたことだろう。

仕事中の空いた時間に休憩室にった僕は力なく部屋に置かれた椅子に座った。今この部屋に人はいないがいつ誰が休憩しに來るかはわからない。正直気が休まらない。

僕は1人が好きなタイプの人間だ。仕事中ならまだしも、暇なときは人の目のないところで延び延びとばしたいとそう思ってしまう。それに何よりこの狀態だ。こんな疲れ切った時に誰かと一緒にいたら余計に気が滅ってしまう。どうしてかは知らないが僕は他人に自分が弱っているところを見せたくないと思ってしまうところがある。なぜかと言われるとし難しい。

誰もいないのだ。ならばと思っていることを自分自に確認するかのように呟いてみた。

「周りに心配されたくない、あくまで自分は普通にやっていきたい……そうは思うけど今の仕事に不満があって何とかしてほしいと思っている」

呟いてみて思った事は1つ。自分勝手すぎね? の一言だった。

そもそもどうして僕はこんなに疲れているのかといえばそれは休憩にる前の出來事が原因だろう。

先に言うと僕は仕事の同時処理マルチタスクが出來ない。1つ1つの作業をじっくりすることができるのならいいのだがない時間の中複數の作業をしなくてはならない今の仕事はなかなかに相が悪かった。

ならなぜその仕事に就いたかと言うと……そもそもこの仕事は自分が希したではない。完全に失念していたが職場によっては部署移や訓練の一環で違う課に移することがある。自分のった場所もその例外ではなかったのだ。まさか社初日から違う部署だとは予想外ではあったが……。

しかし違う課だったからと手を抜くわけにはいかない。どうにか自分なりに仕事に食いついて行ったわけだが、そこでの仕事は自分の苦手なものばかり。

そしてやはり苦手なものがそう簡単に治るわけもなく今日に至るまで數多くの失敗を繰り返してきた。最近ではしのミスでパニックになり連鎖的に失敗をしてしまうという負の連鎖に襲われている程に。

「ちょっといいか?」

「っ!? 先輩……はい、大丈夫です」

考え事をしていると突然聲をかけられる。顔を上げてみると先程の失敗を目撃していた先輩がいた。

すでに嫌な予がするものの油斷していたせいでロクな心の準備もできずに話すことになってしまった。

先輩が話してきた容はやはり先程のことに関してだった。もうこれだけで落ち込んでいた気持ちにさらに追い討ちをかけられている気分になる。

聲には僅かに怒りが乗っているようにじる。何度も同じミスを繰り返しているわけだから厳しく言われるのも同然だ。

「どうしてこうなるかな」

この言葉は先輩が上手く教える事のできなかった自分自に対して愚癡ったセリフだった。しかしすっかり落ち込んでいた僕はあまりに散々な結果に呆れかえって吐き出した言葉なのではないかと思い込んでしまっていた。そう、勘違いをしてしまったのだ。

先輩は心配をしてくれていた。社會で生きていく上で甘えはを滅ぼす危険な行為。一度大きな失敗をしてしまえば自分だけでなく周りすら巻き込んでしまう。故に厳しく接しなければならないのだ。

頭では分かっていた。失敗をして學んでいかなければならないことを。誰しもが通る道であることを。

しかし『理解する』=『実行できる』ではないのだ。そのことに気付くことが出來ないまま時間だけが流れていく。

気がつくと先輩はいなかった。きっともう仕事のほうに戻ったのだろう。僕もそろそろ休憩時間が終わると言う時間になっていた。

殘り時間が10分、5分と近づいてくる。正直まだ全く休み足りない。正直今の狀態だは働いてもまともにけないだろうと言うことが分かる。しかしこんなことでは帰りたくないと変な意地が邪魔をする。考え悩む僕を急かすかのように時間は進み、殘り3分、1分と流れていく。

そして休憩時間が遂に終わる。行かなければまりに迷をかけてしまう……言っても迷をかけることにはなるだろうけど。

足に力をれてを起こす。いや、起こそうとした。

「あれ? が重い……何で?」

足に力がらない。が起こせない。かないといけないのに足どころか腕も固まったようにかせない。

金縛りか? と思ったがその割には全が力んでいるといったじではない。けるはずなのにけないと言ったじだ。

また別の先輩が休憩室にってくる。異変をじたのかその先輩が何か話しかけてくる。僕はそれに応えようとするが息をどれだけ吸い込んで吐き出しても聲が出てこない。ただただ口をパクパクとさせることしか出來ない。

やがて視界は徐々に狹くなり、最後は真っ暗になった。意識が途切れる直前、何かに乗せられて揺れる覚とサイレンのような音が聞こえていたような気がしたことが印象に殘っていた。

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