《あの日の約束を》17話 鈴音さん

「カナちゃんここ分かる?」

「ん〜と、どれどれ」

「鈴音〜ここ教えてくれ〜」

一學期半ばを過ぎてしずつ學校生活に慣れ始めてきました。そんな私たちは今日もいつものように放課後の教室で勉強會をしていました。いよいよ中間テストが間近に迫ってきたのでいつにも増して全員真剣な顔で問題を解き合っています。お互いにわからないところを確認しあって不安なところを可能な限り無くそうとしていますね。

「修君、ちょっとは自分で考えないと」

「そんなこと言わずに頼む」

「もう、しょうがないなぁ…こっちきて。見てあげるから」

「サンキュー鈴音!いやぁ鈴音がいるとほんと助かる」

「そう…かな?それならとことんやらなくちゃね…修くん?」

「え?いやあの…鈴音さん?…え?」

鈴音さんはなんだかとても嬉しそうに教科書とノートを用意しています。一方の修君はなんだか教科書が積み上がることに顔がみるみる変わっていってますね。

二人は相変わらず仲が良いですね。などと思いながら私はノートを見直しながら修君に聲をかけてみました。

「あらあら、よかったじゃないの修さんや」

「よくねぇよ!?」

「カナちゃんがふざけた言い方してる…珍しい」

「え?あぁ確かに。なんでこんな言い方したんだろ」

はなちゃんと話すときも……いえそれどころか家族と話すときもそういえばふざけた返事はあまりしたことがありませんでしたね。

「いやそんなことより助けてくれよ」

そんなことを考えている間にも修くんの前には次々と鈴音さんの用意した教材が積み上がっていきます。流石にこれは可哀想なのでちょっと鈴音さんを引き剝がしましょう。

「もぉしょうがないなぁ、鈴音さんちょっと落ち著こう。ささ、こっちこっち」

「え? あっうん……でも修くんが」

「いいからいいから。はなちゃん修くんの方お願い」

「らじゃーだよ〜」

「ちなみに二人とも飲みはいつものでいい?」

「助かる、いろんな意味で」

「ありがとうカナちゃん」

そして私は鈴音さんを連れて教室を出るのでした。

◯鈴音視點

カナさんに連れられて教室を出てから數分が経ちました。言われるままに後についていくと學校で唯一置いてある自販機の前で止まりました。

慣れた手つきで100円玉と10円玉を複數れるとぽちぽちと數回ボタンを押し、4つの飲みを取り出しました。

「鈴音さん、はいこれ」

そう言って手渡してくれたのは普段私が飲んでいるジュースです。

「ありがとうカナさん」

「いいっていいって、これくらい」

カナさんはそう言って3つのうち1つのジュースを開けるとそれをコクリと飲み始めました。開けていない殘りの2つはそれぞれ修くんとはなさんがよく飲むジュースです。

カナさんは當たり前のように買っていますけどそういうところがすごいなと私は思ってしまいます。頼まれたわけでもないのに自分から率先して行するところ。學生のうちは數百円だって高いはずなのにそれを誰かのために迷わず使うところ。

數百円が高いか安いかは人によって違うとは思いますけど私にとっては高いです。だから友達同士だからという理由で特に気にもせずに行できるカナさんが羨ましいです。

「ん?どうしたの?」

「…カナさんって優しいよね」

「え?突然どうしたの?」

「だって當然ってじにみんなの分をいつも買ってくれるじゃない?」

あまりに自然にそうしてくれるものだからそれを當たり前だと勘違いしてしまいそうなほどに。

「そうは言ってもみんなあとでその分のお金結局私に渡してくるじゃん……………ボソ無理矢理にでも」

「當然だよ!ただ貰うだけなんて申し訳ないもん」

「私ジュース買うくらいにしかお金使ってないし、ちゃんと貯金しているから大丈夫だよ?」

「そ・れ・で・も!」

「は……はぃ」

それでも『別にいいのに〜』と言うカナさんはやっぱり優しすぎな気がします。でも、だからこそなのでしょうか。そんなカナさんと知り合えてよかったと私は思うんです。

「そうだ鈴音さん……戻りながらでよければ聞きたいことがあるんだけど、いい?」

「何? 私に話せる容なら構わないけど」

するとカナさんは足を教室へ向けながら聞いてきました。

「鈴音さんと修君っていつから一緒なの?」

「私と修君? え〜と」

小さい頃からずっと一緒だったのでいつからなのか? と聞かれると咄嗟には出てきませんね。思い出そうと記憶の棚を開きながらそれをどう言葉に出そうかとし考えました。

「ちょっと長くなるかもだよ?」

「いいよ、ゆっくり戻るつもりだったからね」

そう言いながら微笑むカナさん。それならと私はポツリポツリと蘇る思い出をカナさんに話し始めるのでした。

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