《あの日の約束を》28話 夢の狹間

學校が終わった私が家に帰ると、笑顔のユイちゃんが玄関で待っていました。謝の気持ちを乗せて頭をでてあげると満足そうな顔をして部屋の方へと駆けて行きました。それからはあっという間に時間が過ぎていき、気がつくとお風呂も終えて寢る時間になっていました。

今日はなんかすごく疲れちゃったな。みんなにも心配をかけちゃったし、もうちょっと気をつけないとね。

今日1日の反省をした後、わたしはベットにを倒しました。最初こそなかなか寢付けずにいましたが、しばらく橫になるうちに自然とまぶたが落ちていき、やがて私の意識は夢の世界に囚われるのでした。

………

……

「ーーあれ?」

先ほどまであったはずの眠気が消え去って目が覚めてしまいました。仕方なくを起こして目覚まし時計を見ると、何故か時計は針が止まっていて時間が分からない狀態でした。

電池切れかな。でも寢る前はちゃんといていたのに。まぁ仕方ないかな、えっと外は……暗い? なら多分深夜かな。

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さてどうしようと迷っていると、部屋の外の方から足音が聞こえてきました。足音は徐々に大きくなってきているようにじるので、誰かが近づいてきているようです。短い覚で聞こえてくるのでお父さんやお母さんではなさそうです。

ユイちゃんかな。でもこんな暗い時間にどうしちゃったんだろう。何か怖い思いでもしたのかな。

やがて、その足音は部屋の前で止まりました。それから數秒間の沈黙が続きましたが、やがてゆっくりとドアが開き、暗闇の向こうから人影が中にってきました。

「ユイちゃん?」

「ーー違う」

「え?」

部屋にってきた人影に私は聲をかけました。でも返答は私の問いを否定していて、さらにその聲はユイちゃんの聲でも、お父さんお母さんの聲でもありませんでした。

違う……違う? なら、あなたは誰? なんで私の部屋に……ううん、どうして家の中にってきているの?

頭の中が混してしまいそうな中、その誰かは一歩こちらに近づいて、私の顔を見つめました。やっと見えたその顔は確かにユイちゃんのものではありませんでした。私よりいくらいのの子でした。ただ、顔を見てもやはりその子が誰なのか分からず、私は途方に暮れてしまいました。

「思い出して」

「ーーえ」

「お願い……思い出してよ」

するとそのの子はとても悲しそうな表で、とても辛そうな聲でそう呟きました。心なしか目元がっているように見えるのはもしかすると涙を滲ませているからなのかもしれません。そんな彼の様子に私はひどく心を揺さぶられる思いをじました。

私は何処かでこの子に會っている? でも、いつなの? 分からない……分からないよ。

どれだけ記憶を探ってもやはり目の前の子と一致する人が出てきません。そんな私の困った様子を見てか、の子は何かを我慢するように手に力を込めました。

「外で……待ってるから」

「待ってる? ちょっと待って、貴は一……」

「ーー待ってるから……皆待ってるから」

「皆? それってどういう」

私の問いかけに応えることなく、の子は部屋の外へとを向けます。慌てて私はその場からき出しましたが、すでに彼は部屋の外に出て扉を閉めようとしていました。

「お願い、追いかけてきて。そして思い出してね……お……ちゃん」

「待っ!」

靜止の聲が屆く前にドアは閉められてしまいました。何故か離れていく足音はなく、部屋の向こうは痛いほどの靜寂に包まれています。その空気がやけに痛々しくじて仕方がありませんでした。

何がどうなっているの。思い出してって一何のことだろう。あと最後、何か言ってたけどよく聞こえなかった。なんて言ってたんだろう。

私は何か大切なことを忘れてしまっているの? ダメ、私の記憶違いでなければ心當たりが全くないよ。

「……うん」

結局、どれだけ思い返して考えても答えは出て來なかった。それならきっとやることは一つ。心當たりがないなら、今しなきゃならないことは決まってるよね。

分からないのなら知っている人に聞くしかありません。そしてきっとあの子がの答えを握っているのだと思います。こんな時いつもの私ならきっとこうするのでしょう。

私は意を決すると部屋のドアノブを手を當て、そして力強く開けるのでした。

………

……

ドアの向こうには廊下ではなく真っ白な空間が広がっていました。そこはどこまでも果てしなく続いていて、明らかに現実のものではないことが一目瞭然でした。

「……ナニコレ?」

いきなりの変化に出鼻を挫かれたような気持ちになりならが立ち止まってしまいました。いえ、こんなところで立ち止まっている時間はありません。そうだと分かってるのですが、直ぐには事態を把握することができず、僅かに惚けてしまいました。

「ーーあれ?」

今何かいたような。っていてる!? あの子だ。急がないと見失っちゃいそう。

視界の向こうギリギリに見えたさっきのの後ろ姿が目にると、止まりかけていた思考がき出しました。正確な距離は場所が場所だけに把握しにくく、とにかくこれ以上離れてしまってはまずいと考えた私はそこへと駆け出しました。余計な思考はカットして、とにかく足をかしていきます。

なんでだろう。さっきから走っているのに全然疲れない?

し走るとさらなる違和が湧き上がり、そして直ぐにその正がわかりました。しかし違和の元は分かっても、ならばどうしてそうなってしまうのかは結局説明がつかないままです。

いや、そんな些細なことは今はいい。もう今の狀況そのものが十分異常なんだから。だから今更、そう今更なの。

「今日の私はどうしちゃったんだろうね……ふふ」

朝から今までの出來事を思い出した私は困ったような笑みを浮かべながら、先へと進むのでした。

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