《獣と共同生活!?》第二十七話 海岸の出會い
電車に揺られてどの位の時間が経っただろう。気付くともう終點駅だった。
とりあえず電車を降り、改札口を出て辺りを確認。一番最初に見えたのは、広大な海だった。
俺は海に近付こうと道を回るが、著いたのは砂浜ではなく海岸の崖。まぁ、風にあたるくらいなら、砂浜でも崖でも問題はない。
崖の先に座り、ボーッと海を眺め続ける。何も考えず、ただボーッと。
しかし、何も考えないと意識してしまうと逆に何かを考えてしまう。
みぞれはどうしているだろう?秋風さんは仕事を上手くやれているだろうか?文姉には言いすぎてしまった。そんな事を。
しかし、これは自分探しの旅の様なものだ。華さんを救う考えをまとめたり、俺の心の整理をする為の必要な時間。それがたまたま今だったのだと。
誰に対してかも分からない言い訳を心の中で言いつつ、海を見ていると背後から足音が聞こえた。
足音に気になり、俺が振り向くとそこには小學生くらいのの子が立っていた。
小學生にしては落ち著いた雰囲気。服や靴など、につけているもの全てが新品かの様に綺麗で、し違和をじたが、それを振り払うかの様には話しかけてきた。
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「……危ないですよ?」
「あ、あぁ」
崖に座っていたから、心配してくれたのだろう。その聲を聞いた時には、違和がなかったかのように消えていた。
俺が立つと、は俺が座っていた位置に腰を下ろし、海を眺め始める。危ないと言っておいて、自分はいいのか……。
「……私はいいんです。私は所詮、人形・・の様なものですから」
「人形……?」
俺の心を読んだかの様には言う。何故読めたのかより、何故自分は人形と言ったのかが気になったのだ。
すると、は立ち上がり俺の方を向く。構える必要はないのだが、何故か姿勢を正してしまった。
すると、彼は無理に作った様な優しい顔で俺に話した。
「私は、この近くのお屋敷に住んでいます。いわゆる、お嬢様の様な暮らしをしています」
お嬢様……か。だから服が新品かの様に綺麗なのだろう。本當に新品なのかもしれないし、毎回クリーニングに出したりしているからなど、々考えてみた。
「父が大手企業の社長をやっていて、母は有名な音楽家。そんな環境で育った私は、様々な教育をけてきました。親の為に私もしっかりとやらなければ。初めはそう考えていました」
お金持ちの子や、お偉いさんの子は様々な教育を親からけると聞いたことはある。
この子の場合、恐らく音楽や政治関係など。それは子の意思など関係なく、無理にでもやらせる親も多いという。
そして、彼が言った『初めは』という言葉。つまり、今はなくともそう考えていないという事。しかし、それでは人形という理由には至らない。
多くの報を整理しながら考察するが、やはりまだ報が足りない。そして、まだ彼は話してくれるようなので、俺は彼の話を真剣に聞いた。
「ある日、無垢だった私は父が主催のパーティに行く事になりました。だしなみなどは勿論、立ち振る舞いを言われたり、父の側から離れない様にと言われました。そして、パーティ當日。父と母に用があり、部屋を訪ねようとすると、中からこんな話が聞こえてきたのです。『あの子は私達の役に立っている。これからも私達のためになってくれなければ』と」
それを聞いた俺は、怒りが込み上げてきた。
せっかく産まれた我が子を、道の様にかす親。役に立たたなければ、この人達はこの子に用がないと言わんばかりの言い方だった。
「そこで分かったのです。私は、親に上手く使われていた駒・に過ぎないのだと」
「……」
俺は何も言えなかった。彼に同しても、それは彼の悩みは解決しない。
しかし、彼の問題は両親。赤の他人の俺が首をつっこむ問題でもない。
彼を助ける為の方法。なくはないのだが、彼がそれに賛するとは思えない。更に言えば、自分が危険な目に遭う可能が高いのだ。
……だが、目の前のを放って置くわけにもいかない。俺は覚悟を決めて彼にこう言った。
「おせっかいみたいに聞くが、君は両親から大切にされたいのか?」
「……分かりません。ですが、またあの頃に……無垢だった頃の様になりたいと思うのも確かです」
つまり、なくとも親のはけたい。知りたい。そうゆう事だと俺は解釈をした。
彼の話を聞いた以上、俺には助ける理由がある。ならば、答えは一つだ。
「──なら、俺に協力してくれないか?」
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