《逆転した世界で楽しんでやる!》お弁當は學園イベントにはかかせない。

百合姉がから揚げ弁當稅込450円のから揚げを頬張りもきゅもきゅと食べる。なにこれ可い。てかどうやったらそんな音がでるんだ。

「ほういえばふぁ、ゴクン。みー君そのお弁當どうしたの? 自分で何とかするって言ってたから一食分だけお金渡してたけど」

そういいながら百合姉が僕の(先輩から借りた)機の上に置いてあるお弁當を見ながら言う。

「ああ、これね。そのお金で食材買ってきて自分で作った」

「ええ!? この前カップ麺にお湯注いでこれが料理だとか言ってたのに?」

「失禮な! 全部手作りだよ!」

もちろん冷凍食品の類は一切使っていない。朝早くから百合姉に見つからないように作ったのだ。隣の百合姉の親友らしき人が男子力高っ! と言っていた。らしき人、と言うのは自己紹介をしようとしたら百合姉に邪魔されたからだ。百合姉曰く、こいつは野獣の中の野獣での塊なんだから名前なんて知る必要ないし、警戒してもしたらないんだよ。とのこと。あとで絶対アドレスと名前を聞き出してやる。

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「ほんとに? これが見た目だけおいしそうな劇でしたーとかそんなオチは嫌なんだよ」

「んなっ、そんなこと言うなら実際に食べてみなさい!」

そう言ってから揚げを百合姉の顔の前に箸でとって出す。大おろしとニンニクおろしを使った自信作だ。慣れない早起きをしたため一限目はめちゃくちゃ眠かった。

目の前に突き付けられたから揚げを百合姉がポー、と見つめる。ん? これってあーんイベントと呼ばれるものではないだろうか。ヒロインが手作り弁當を主人公にあーん、をして食べさせ、周りにもげろ、とか言われちゃったりする例のアレ。手作りで家庭力のある男子のイメージ付けをしようとは思ったが、まさかあーんまでできるとは思わなかった。

「おお、まさかのあーん!」

百合姉の親友らしき人が……ええい、長い! この場に限って親友さんと呼ぼう。親友さんが聲を上げる。僕の顔とから揚げを互に見る百合姉。いいかげん腕が疲れてきた。ここは王手をかけようと思い、

「お姉ちゃんが食べないなら親友さんに食べて貰おっかな~。「え!? マジで!?」でも親友さん、の塊だからそんなことしたら僕の貞が危ないな~」

「食べる!! 食べるんだよ!!」

「さすがみー君。あざとい、あざとさMAX」

落ち込みぶつぶつ言い始める親友さん。みー君って呼んでいいのはボクだけなんだよ! と百合姉に毆られていた。てか百合姉、一人稱ボクだったのか。この世界、一人稱がれにれていて、でもボクとか俺とか使っていて、珍しいのでは某それがしとか拙者なども珍しくはあるものの、その辺にいるのだ。つまり俺っ娘ボクっ娘に會えるのだ。それもかなりの確率で。本當にこの世界は都合がいいな。

パク、と僕のから揚げを食べる百合姉。それから再びもきゅもきゅと咀嚼し始めた。だからどうやってやるんだそれ。

「ん! おいしい!」

「そうかそうか。じゃあそっちのから揚げも食べさせて」

そう言ってあーんと口を開ける僕。あーんしてやったのだ、報酬にあーんしてもらってもいいだろう。すると百合姉はうろたえはじめ、

「え、え、でもボクの食べさししか殘ってないんだよ…」

「今更姉弟でなにいってんの。いいからあーん」

しぶしぶと行った様子でから揚げを口に運ぶ百合姉。よく見ると頬が赤い。なんだ、照れているのか、可いやつめ。

 すると、晝休みを終えるチャイムが鳴る。ちっ、他にも卵焼きとかあったのに。

「ん、晝休みおわったね。僕そろそろ教室に帰る」

僕は仕方なく立ち上がり、教室へと戻った。

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教室に戻ると、琉斗が購買のパンの袋を片付けていた。

「お、命。どこ行ってたんだ?」

「百合姉んとこ」

「ん? お前姉いたのか?」

「うん。二つ上に一人ね」

「そうか、仲いいんだな。おっと、先生が來たぞ。席につこうぜ」

と、擔任の須々木先生がってくるのが見えた。これは琉斗に聞いた話なのだが、教壇の段差でこけかける須々木先生はもう恒例行事なのだとか。あ、今回は完全にこけた。

「うー、いたたたた。こけちゃいました~」

「須々木先生、大丈夫ですか?」

心配して聲をかける子生徒。それにしても、須々木先生の言うセリフは野郎じゃなくてに言ってほしいものだ。

子生徒が助け起こし、授業が始まる。

「はい、では現國の教科書を開いて下さいー。ページは前回と同じでー」

そう言いながら黒板に今日の日付を書き始める須々木先生。しかし困った。前回の授業に出ていないのでページがわからない。すると、

「16ページだよ、七峰くん」

と、こっそり柊さんがささやいて教えてくれた。この學校、一人ひとりが離れた席ではなく、男二人が機をくっつけた列が橫に三列、縦に五列ある。といっても、このクラス。男子は僕を含めて10人しかいないので、廊下側は子だけになる。この世界の子高生の思考で考えたらハズレなのだろうが、僕からしての子同士で隣にいる空間は百合百合しくて目の保養になる。片方が教科書を忘れ、もう片方が、『あんた教科書また忘れたの? ああ、もう。しょうがないから貸してあげる』と言って一つの教科書を肩を寄せ合って見ているのはもう、たまらんとです。うんうん、勤勉なのは何よりだ。フヒヒ。

し遅れながら返事をかえすと、

「あ、ありがとう。助かったよ」

「ううん、別にいいよ」

と言ってノートを寫す作業にっていった柊さん。時折耳に髪をかけている姿があり、し見とれてしまった。

すると、弁當を作るために早起きしたためか睡魔が唐突に襲ってくる。普段から遅寢遅起きをしていたため、時計が狂ってしまっている。今度から生活リズムをなんとかしなきゃなー、と考えつつ僕は睡魔に逆らえず眠りに落ちてしまった。

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