《逆転した世界で楽しんでやる!》オリエンテーリングの続きとカレー作り

 「朝晝晩、同じを食べました。さて、何を食べたでしょう? 獲得食材、ジャガイモ」

「ぬぬ? これじゃヒントがなすぎるぞな」

「あや、それなんかヘンだよ~」

看板に書かれたクイズを読み上げる奈菜に妙な言葉で不満を表すあや。

「ジャガイモにこの問題は難しすぎないか? どうせならパンはパンでも食べられないフライパンはなんでしょう? とかにすればいいのに」

「それはなぞなぞになっていませんよ、広翔。フライパンはもともと食べられないでしょう」

「あ、そうだった」

わいわいと楽しくクイズの答えを考えているが、答えはまだ出ないようだ。ここは五十鈴にズバリと答えてもらい、四人と仲良くしてもらえないだろうか。

「五十鈴ちゃん、答えわかった?」

「ふ、ひひ、膝枕、膝枕……」

ダメだこいつトリップしてやがる。

僕は事前に答えはクイズの位置と共に教えてもらっている。答えは朝晝晩と三食同じを食べているから「三だんご」だ。あまりにも答えが出ないようならしヒントを出してあげよう。さすがにジャガイモがないのはかわいそうだ。

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「あやちゃんなんかわかった?」

「あやはジャガイモ好きじゃないから別になくてもいいもーん」

「好き嫌いはいけません」

後頭部に両手をやり口笛を吹きだすあや。ジャガイモを舐めるんじゃないぞ、二日目のカレーはジャガイモのおかげでおいしいと言っていいんだからね。

「奈菜ちゃんは?」

「私はちょっとわかんないかな……」

「うん、そっか」

うーん、うーんと悩む奈菜。し癒される。

「広翔君は?」

「うん? 俺もわかんねーぞ」

あっけからんと言う広翔。お前はわからないのではなくて考えて無いだけだろうに。

「真也君は?」

「朝晝晩、三回同じを食べている、と言うことでこの三回ってところがヒントになっているのではないでしょうか」

「へー、なるほどね」

どうやら真也が一番近いところまで屆いているらしい。五十鈴は言わずもがなトリップの真っ最中だ。そんなに膝枕がうれしいのか。小學生の自分に膝枕をしてくれる高校生のお姉さん。……うれしいかもしれない。

ところで膝枕ってなんで膝枕っていうんだ? 太ももに頭を乗せるのにひざ枕という。不思議でしょうがない。今度からもも枕と言うことにしよう、そして広めよう。

「解けましたよ」

「え?」

「三だんごです。三食同じものを食べた、三だんごを食べたという事でしょう」

おおー、と一同が答えを出した真也君に拍手を送る。真也君はし照れくさそうにしているが満更でもなさそうだ。

「じゃあ、次の問題に行こうか」

いまだほけーっとしている五十鈴は耳に息を吹きかけてあげたらひゃん、という聲と共に戻ってきた。あとでこれ柊さんに使おう。

オリエンテーリングはつつがなく(時折僕がアドバイスしたり、はしゃいだあやちゃんが丸太をつないでできたし苔むした橋でって転んだりしたが)進み、ゴールへとたどり著く。琉斗や柊さんのチームはもうすでに到著しているらしかった。

洗い場で包丁を使っている男の子たちを見守りながら用にジャガイモの皮をむいている柊さんを見つけたので聲を掛ける。

「包丁使うの味いね、普段から料理してるの?」

「んー、の子でも料理できないといけない時代だからね。時々お父さんの手伝いもしてるんだよ」

「へぇ」

逆転した世界だ、が稼ぎ、男が家庭を守るのだろう。そうはいっても男ない今、ほとんどのは男に対して過保護すぎるため、家事も行うが多いだろう。実際その過保護な部分は、僕と琉斗がオリエンテーリングを行う際に、安全に行う為にと三度ほど注意事項を聞かされた。

「でも、七峰くんも料理するんでしょう? お弁當、すっごいおいしいって噂だよ」

報源どこよ。適當に目分量で作っているだけだよ」

「えーとほら、三年生の間で噂になっててそれが部活とかを通して後輩にまでってじかな?」

謙遜はしたものの、ほんとは料理にはちょっぴり自信がある。引きこもり時代に親がいない分、というか忙しい親の分まで食事は作っていたし、自分の食べるものには妥協なくおいしいものが食べたかったので料理サイトなどに張り付いてはレシピをためし、アレンジしを繰り返した。學校での晝食は基本百合姉と一緒に(最近、百合姉の分も作り始めた)済ませているし、この前百合姉の親友さんに食べてもらったところ、「年の手作りひゃっほう私もうしんでもいいかも!」とんだ後にすごくおいしいよと言ってくれた。その時はうれしさでし顔が赤くなってしまった。そのあと、天使の手料理を食べやがって、と何故か百合姉も一緒に數人の同級生にぼこぼこにされていた。どうやらかわいい弟と目の前でいちゃいちゃしやがって、と言う事らしいが。照れる。そう言えばまだ親友さんの名前聞いてない。

「何なら今度、柊さんの分も作って持ってこようか?」

「何を?」

「何って、お弁當」

「ほんとに!? 噓じゃないよね!?」

「噓ついてどうするのさ」

弁當を作るというとものすごく食いついてくる柊さん。近い近い近い!! 純樸の顔が超近い! なんかしっとりと濡れた目は吸い込まれるようなをしているしまつは長いし、桜をしたが目にる。しかもなんかシャンプーのいい匂いがする。柑橘系? クンカクンカ。

をそらして柊さんの顔を遠ざけようとする。こんなの顔が近くにあるのは耐えられない。足をれ替えようとすると、なぜかその先にあったバナナの皮でつるっとって後ろに倒れてしまう。なんでこんなものがあるんだ、カレーにバナナをれるユウシャなヤツがいたのか。あれか、ご都合主義か、でもこのルートはヤバイ。このままだとコンクリートの床に頭をぶつけてしまう。

すると、柊さんが助けてくれた。

僕を抱き寄せる形で。

細腕ながらもその両腕はしっかりと僕を抱き留め話さない。そっかー、この世界はの子の方が力が強いんだなー、なんて、こんな時にはしっかりいてくれない頭が見當違いな想を述べる。お帰り、柑橘系のいい香り、そしていらっしゃい、柊さんのぬくもり。僕のにあたっているこの年代の子としては小さいながらもむにゅり、とつぶれて激しく自己主張するソレに頭にが上って耳まで赤くなる。互いの顔の距離はは先ほどより近くなり、かせば綺麗な桜に屆いてしまいそうだ。僕と柊さんは十秒ほど、時が止まったようにお互いを見つめ合っていた。

「あー! 高校生がいちゃいちゃしてるぅー!」

「へ、え、ああ!?」

カットされた食材を取りに來たの子に指をさしてからかわれる僕と言葉になっていない聲を出す柊さん。周りを見回すと、先ほどからいた男の子グループが顔を真っ赤にしてこちらを見ていた。この狀況にはっとしたのか、僕と同じく真っ赤な柊さんが僕を座らせてくれる。カップルだーとからかわれるとさらに顔を赤くしこちらを見ると湯気を吹き出し、

「わ、私、あっちで火起こしの方みてくりゅから!!」

んで走り去ってしまった。の子たちは走り去る柊さんにヘタレーと投げかける。鬼か、おまえら。

ラブコメのカミサマがいるならありがとうと拝み倒したい。できれば逆の方がよかったかなーとつぶやきつつ、まだし殘っている柑橘系の香りと柊さんのぬくもりに気付き、僕はそのあと五分、立ち上がることができなかった。

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