《逆転した世界で楽しんでやる!》閑話 百合姉の親友の話

最近、親友の百合子の弟がめちゃくちゃ可い。

どのくらい可いかと言うと、ぺろぺろしたいくらい。キラキラとした瞳は目をひきつけるようなものがあるし、白くきめ細かいと細いは、どこかの森の中の蝶と戯れる清い男の子のようなイメージを思い浮かばせる。長が低めなのか顔を合わせる際には必然的に上目づかいになってしまう所もいい。さらにと言うか、毎日姉の分まで弁當を作り、一緒に食べよう、とけなげな所もポイントが高い。

絶対數のない男は家庭などではとても過保護に扱われている。わがままも言いたい放題、好きなこともし放題。そんな生活をしていれば當然というか、高慢でを見下した態度をとる男がほとんどなのだが、彼にはそういう態度が全くなく、それも彼の人気を上げる理由の一つとなっている。そんな彼と百合子の晝食に今日もお邪魔している。

「はい、百合姉。今日のお弁當」

「ありがとね、みー君。でもわざわざ教室までお弁當屆けてくれなくてもいいのに」

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「でも百合姉、部活の朝練ですぐに家でてっちゃうじゃない。それに、なるべくご飯は一緒に食べたいから」

弁當を顔の橫まで持ち上げ、えへへ、と笑う弟君にフヒッと変な聲がれ、百合子に修羅のような顔で睨まれる。

おそらく百合子は、単に弟に手間をかけさせたくないのではなく、弟君に群がる変な蟲を遠ざけようとしてるだけだろうが。

「んー、時間もないし、屋上じゃなくて百合姉の教室で食べてもいい?」

「いいよ、ボクの席、あっちだから」

そう指さし自分の席へ向かう百合子と弟君。もちろん私もそれについていく。途中、弟君に椅子をかりられる際に、聲を掛けられニヤニヤするバスケ部主將、藤堂 亜里沙を見て私は溜息をついた。

私と百合子は、席が隣同士なので席を向い合せる形でくっつけその側面に借りた椅子で弟君が座り弁當を広げて食べ始める。

 

「いつもおいしいねぇ、みー君」

「そんなことないよ、朝にぱぱっと作っているだけだから、たいして手間もかけていないし」

「いや、私もそう思うぞ、食べたことはないが。見るだけで彩も栄養バランスもいいしな。涎が垂れそうだ。私によこせ」

「ぜったいにあげないもんね!」

そう言いつつ、パンをかじる。そんな食事では駄目だ、と弟君が気を使っておかずを分けてくれようとするのだが、毎回百合子に阻まれている。早く私にもその幸せの味を食わせろ。

「食べてみます? 卵焼きはこの中でも自信作ですよ?」

「いいのか?」

「ちょ、みー君! ほんとにあげるの?」

「だって僕夜食食べ過ぎておなかいっぱいだし」

「じゃあボクがたべ「百合姉は自分の分があるでしょ」むう……」

はい、どーぞ。と、私の目の前に差し出される弁當を眺める。やはりとてもおいしそうだ。後輩男子高生の弁當を食べることはそうそうないだろう。しかも手作り。ほかのクラスメイトからの視線は批難轟々だ。

それじゃぁ、失禮して。そう言いつつ卵焼きを口の中に放り込む。

「弟君」

「はい」

「これから毎日私に味噌を作ってくれ」

「へあっ!?」

「おいてめぇぶっ殺してやるゥ!!」

「おい、やめろ百合子」

「何でボクの弟に告白した言え! 言わなきゃぶっ殺す、言ってもぶっ殺す!!」

「私に生きる道はないのかッ!! 仕方ないだろう! 滅茶苦茶おいしいんだから! プロポーズくらいしたくなるわッ!」

「へっ、あ、ありがとうございます」

「フシャーーーーーー!!!」

照れながら私に禮を言う弟君に百合子はさらに激高し、兇を持ち出してくる。

「ちょ、おま、百合子! 箸で的確に目を潰そうとするなッ!! 灑落にならん!」

「目じゃないんだよ! さらにその奧の脳みそが狙いなんだよ!!」

「さらに悪いわッ! 死ぬゥ!」

つまんだ卵焼きは程よい味加減で、とてもふわふわだった。私らが取っ組み合いをしている橫で弟君は続けて手料理をほめられたことがうれしかったのか、やった、はにかみとつぶやき小さくガッツポーズをしている。あれで本人は表を隠せているつもりらしい。可いな天使か。その表に私は頬を緩め、周りも顔を赤くしている。鼻から噴き出るリビドーを押さえ、トイレまで駆け込む者がいる始末。それでいいのか鬼のバスケ部部長。あいつはもう駄目かもしれん。

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