《無冠の棋士、に転生する》第14話「ショッピングモール」
私たちが住む街の中心街からし離れた郊外にそのショッピングモールはあった。
ショッピングモールに通じる道路の周辺には田んぼが並んでいるというまさに田舎道。
そんな中にここ辺りでは大きめの建がドーンと場違いのように建っている。
ジャスコとかイオンとかゆめタウンとか、田舎の大型ショッピングセンターを想像してもらうと分かりやすい。
「へぇ、ゆめタウンって西日本にしかないんだ」
「なーに調べてるのー?」
「桜花はゆめタウンって知ってる?」
「知らない」
「ですよねー」
車の後部座席に仲良く二人で座っている私たち。桜花が私のスマホを覗き込んでくる。
私は質的に車に酔わないけど、桜花はどうなんだろう。雙子だから桜花も酔わないのかな。
「ほーら、もうすぐ著きますよ。降りる準備してね」
「はーい」
今日はルナのお母さんに車を運転してもらっている。
ルナのお母さんは、純のロシア人。日本語はイントネーション以外完璧だ。
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綺麗な銀髪は肩に屆く程度に切り揃えている。ルナと並んでいると、親子ってこんなに似てるんだなぁと思わされる。
「ママは今日どうするの?」
助手席に座っているルナが尋ねる。
「んー、ルナちゃん達の邪魔するの悪いし、ママはパパのところに最初に行ってその後は適當に時間を潰そうかな。ルナちゃん達は3人で楽しんでいらっしゃい。何か困ったことあったらいつでも攜帯に連絡していいから」
「わかったわ。ありがとママ」
武藤九十九さんの將棋イベント午後の1時30分からだ。この調子だと午前10時頃には著く。1時半までどうやって時間を潰すのだろうか。私や桜花は完全ノープランなのでルナに任せている。
「ねぇ、ルナ。イベントまで何するの?」
「そうね……まずは……」
私の質問に、ルナは助手席から後ろを振り向き言葉を続けた。
「あなたの服かしらね」
■■■
今日のファッションコーナー。
私と桜花とルナの小學生児3人。ルナも桜花も見た目が可いから、歩くだけで周りのロリコンだけでなく子高生のお姉さま方の視線も集める。特にルナは日本人離れした見た目だから目立つんだろうね。
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そんな私たちの服裝は三者三様。
桜花の服裝は今日のために私が用意したエイチ・アンド・エムの可い服だ。ポップなイラストやヴィヴィッドなカラーで子供らしく遊び心溢れたデザイン。ふわりふわりと揺れるこのスカートは私的にベストチョイスだね。
一方ルナは大會の時ににつけていた學校の制服ではなく、ラフできやすいボーイッシュな服裝。ルナのお人形みたいな見た目とのギャップが良くて、お互いを際立たせているじだ。につけている小にもおしゃれさがあって、センス良いなぁと思わされる。
そして私。
だぼだぼの英字Tシャツに、ショートパンツ。
ルナに朝迎えにきてもらった時の「マジか……」って顔が忘れられない。そのあと桜花にTシャツに書かれている英語の意味を聞いたら目を逸らされた。悲しい。
「さすがにその服はないわ。ありえない。さくら、あなた自分がの子の自覚あるの?」
私はルナに連れられてショッピングモールにあるおしゃれな児服店に開店凸。ルナの著せ替え人形のなってしまった。
桜花がワクワクした目で見つめてくる。いつもは私が桜花を著せ替え人形にしてるからね。天罰だね。の子になって7年くらい経つしの子の自覚あるんだけど、どうしてもきやすい服の方が好きなんだよね。ジャージを著てこなかっただけマシと思ってしいよ。
「桜花ちゃんの服はあなたが用意したのに、なんで自分はこんなファッションなのよ。まったくまったく……。はい、次これ試著して」
「フリフリきにくくて嫌なんだけど……。あと桜花はピンクが似合うけど私は……どうなの?」
「託を並べなくていいから早く著て!」
しぶしぶルナから渡されたピンクのフリフリな服を著る。試著室の鏡には、もう見慣れてしまった転生後の私の姿が映る。桜花に似てるから素材は悪くないとは思う。ただどうしても自分がピンクでフリフリな服を著てることに違和がある。
「著たよ……」
ルナから渡された服に著替えて試著室のカーテンを開ける。
「良い! おねぇ良い!」
「たしかに悪くはないけど、桜花ちゃんとファッションが被るわね。雙子ってことで全部同じ服なら良いけど、似た系統ってだけならむしろまったく違う服で個を出す方がいいかしら」
すごく盛り上がってる2人に対して、私はただ立ち盡くしていた。私が著せ替えして遊んでいる時の桜花もこんな気持ちだったのかなぁ。し自重しよう。
それからも次々と服を渡されては著替えさせられる。
ガーリー、フェミニン、シャーベットカラー、ヴィヴィッド……。なんか呪文のようなファッション用語を喋るルナを虛ろな目で私は見ていた。桜花のためにし勉強した私よりずっとずっと詳しい。これが現代のおしゃれ児か。
「よし、次のお店に行くわよ」
「えっ、まだ続くの?」
「一店舗だけで服を決めるなんてナンセンスだわ。もっと々見てみないと」
「ごーごールナちぃ!!」
結局この後三店舗回ってから、二店舗目に戻って服を購した。もう足クタクタ。足が棒だから犬が當たりしてくるかもね。ワンワン。
ちなみに服の代金はルナが全部払ってくれた。小學生が諭吉を財布から出すのはなんか危険な香りがする。
「ルナ、これ貰って良かったの?」
「プレゼントよ。ありがたくけ取りなさい。あんなダサい服で、隣を歩かれる方が困るわ」
購したのはラポシェビスキュイのナチュラルスタイルのワンピース。私が著心地を絶対に譲らなかったので、それをルナが考慮してくれた。このブランドは子どもでもきやすくて、楽に過ごせるような服が揃っているらしい。知らなかった。
「桜花ちゃんには今度買ってあげるわ。今日は我慢して」
「ありがとールナちぃ」
ルナが桜花を後ろからハグして頭をでる。いつのまにこんなに仲良くなったの。お姉ちゃん嫉妬しちゃう。大人は嫉妬しないけどね。ビークール。
「まだお晝には早いわね」
ルナがスマホで時間を確認する。
あと30分くらい時間を潰したいところだ。
「じゃあアニメイトいこー。プリキュアグッズ見るのー」
ルナの腕に抱かれている桜花が元気よく提案した。このショッピングモールにはアニメイトも出店している。
「……しょ、しょうがないわね。桜花ちゃんがどうしても行きたいっていうなら行きましょうか。仕方がないわね。ほんと仕方がないわね」
そう言いつつ頬が緩むのが隠せてないルナ。桜花より行きたそうだ。かわいい。
「おねぇはそれでいい?」
「いいよ。さっきまでずっと私の服に時間を取られてたからね。今度は桜花の番」
私もプリキュアは嫌いではないしね。桜花と毎週欠かさずみてる程度には好き。今年のプリキュアはメッセージが強くて子供の桜花は理解できてるのだろうか。まあ、子供はそんなこと気にしないのかな。ちなみに私の推しはマシェリ。桜花はアムール。
「そういえばルナはプリキュアだれが好きなの?」
「えぇっ!? いや、えーっと……」
「ルナちぃはエールが好き」
「なるほど主人公のピンクか」
「べ、別に好きってわけじゃないわよ。あえて、そうあえて選ぶならね。私ってもう小學二年生だし子供っぽいプリキュアは……」
なんか一人で勝手に語り出した。
桜花がルナの推しを知っていたってことはこの2人、もしかして日常的にプリキュアの話題をラインでしてるってことかな。まぁ、ルナと桜花を引き渡せた時にプリキュアの話題をしたらいいよって言ったのは私だし。
アニメイトに著くと桜花とルナは2人で仲良くプリキュアコーナーに走っていった。仲がよろしいことで。
私はとりあえず漫畫か小説の新刊が出てないか探すことにした。
久しぶりの中學生プロの誕生で、創作業界も將棋関連の書籍が便乗していろいろ出てる。
「新刊は……これだけか」
『將棋の神辺くん』。トッププロの1人である神辺プロの奧さんが著作した漫畫で、神辺プロの日常を題材にした実録漫畫。
將棋棋士と一風変わった日常が描かれていて面白い。
手に取って、他にも何かないか探そうとした時。
「…………」
サングラスをにつけて帽子を被ったニコニコとした白髪のおじいちゃんがこちらをみていた。なにあれ。なんかチラチラと視線が怪しい。ロリコンの不審者かしら。
視線の先は私と……一冊の本。
「『つくもんの將棋〜プロ棋士60年の歩み〜』……か」
コミカルな表紙の漫畫。今日のイベントの主役の武藤九十九さんを主人公を題材にした本で九十九さんも執筆に攜わっているらしい。
「……チラッ」
「チラッて聲に出したよっ!」
間違いない。あのおじいちゃんは武藤九十九さんだ。イベントの準備忙しくないのかな。もしかして抜け出してきた?
そんなに自分の本が売れるのが気になるの!?
なんかラノベを手に持ってるけど、あれで視線ごまかせると思ってるのかな。チラ見しすぎてもうほぼガン見だよこれ。
なんか買わないのが可哀想になって來た。
この本持ってなかったし買おうかな。
そう思って武藤九十九さんの本を手に取る。
パァっと顔を輝かせるつくもん。サングラスしてても表がかだ。
私はその二冊の本を持ってレジに並び購した。ずっとつくもんの視線が突き刺さって張しました。
二冊の本がったレジ袋を手に持って桜花たちを探す。
まだプリキュアコーナーで楽しく談笑していた。
私に気づいた桜花がトコトコと歩いて來た。
「ん、どうしたの桜花」
「ちょっとトイレ行ってくるー。これ持ってておねぇ」
そう言われて數點のプリキュアグッズを持たされる。
そして桜花はトイレが近かったのか急いでお店を出ていった。
「さくら、本買ったの?」
「うん、將棋系の本二つ。『神辺くん』と『つくもんの漫畫』」
「あ、つくもんの漫畫見たいと思ってたの。あとで見せてほしいわ」
「いいよー」
ふと後ろを振り返る。
サングラスおじいちゃんは姿を消していた。私がこの本買って満足したのかな。
あとでイベントにあった時の反応がし楽しみだった。
――そしてこのあと桜花は迷子になった。
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