気なメイドさんはヒミツだらけ》腹ペコメイドはかなり失禮

晝食の時間になり、二人で學食に向かったが、正直居心地が悪い。

「おい、あれ……」

「メイド……だよな」

「學校の職員さん?」

「確か転校生らしいよ」

視線がグサグサ突き刺さっている……霜月さんに。

は居心地悪そうにを捩らせながら、大盛りのカレーを頬張っていた。食だけはあるあたり、やはり大なのかもしれない。

「ご、主人様……さっきから見られてますけど……な、何かしたんですか?」

「霜月さん。現実を見ましょう」

むしろ俺は二次災害の被害者である。なんか俺がコスプレ強要したみたいになってるし。たまに聞こえてくる「さすいな」とか「変態魔神」の稱號が、ガリガリ心を削ってくる。

……あれ?これって俺のほうが被害多くね?

なんだかんだ言って、霜月さんは「可い」とか「萌え~」とか言われてるし……。

霜月さんに目をやると、確かに可いのは可いと思う。失禮だけど。

自信なさげな垂れ目も、すらっとした鼻も、形のいい薄紅も……あれ?改めてじっくり見ると、この人……。

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すると、カレーを平らげた彼はスプーンを置き、頭を下げた。

「ご、ごめんなさい……」

「は?」

何だ?何でいきなり謝られるんだ?

「私はメイドですので、主人様とお付き合いすることはできません……あとタイプじゃないですし」

「うるせえよ!そんな事思ってねえよ!」

なんて勘違いしてやがるんだ、この人頭おかしいんじゃないか!?

「隣失禮しま~す」

橫田がうどんの載ったお盆を置き、隣に座ってきた。また面倒な予がする……。

「あのさ、いきなりなんだけど、二人って付き合ってんの?」

予想はあっさりと的中した。ここまでくると、いっそ清々しいまである。

「違うっての。あと本當にいきなりすぎるわ。もっと前置きとかあんだろ」

「いや、やっぱり気になってな。それで、霜月さんはどうなの?」

「だ、斷じて違います……主人様の気持ちは嬉しいですが」

「おい」

いや、気持ちも何もないんだが……。

「あはははっ!!殘念だったな、幸人!!ふられたな……!」

「…………」

ああもう、こいつらうぜえぇ!!

*******

今日の授業は全て終了した。

教室には弛緩した空気が漂い、その心地よい空間の中で、ぼんやりと放課後どうするかだとか、これから部活だとか、クラスメートが會話をわすのが聞こえてくる。

しかし、今の俺にそのほんわかした空気を楽しむ余裕はなかった。

俺は隣の席に目をやる。

すると、隣に座っている霜月は、ビクッと姿勢を正した。

「……ご、ご主人様、そろそろ帰りましょうか、はい」

「待てい」

何がはいだよ。一人で納得してんなよ。

俺は溜め息を吐き、瞑目し、今日の授業を振り返る。

しかし、すぐに頭が疲れてオーバーヒートを起こしそうだったので、かぶりを振って中斷する。

まさか、彼がこれほどまでとは思わなかった。

これほど…………おバカだとは。

一限目の現代文の時間はまだよかった。

數學なんて、教科書を開いた途端寢やがった。そりゃあもう安らかな寢息をたてながら。先生がほっこりした笑顔で起こしても……

『ふふっ、霜月さん。起きなさい』

『ね、寢てません……』

『…………』

などとのたまう始末。しかも、後で俺が廊下に呼び出されて怒られる始末。どうなってるんだ。いや、仕方ないのか。てか、メイド服は普通にれられるんだな……自由な校風、素晴らしい。

まあ、とにかく……これを放っておく訳にはいかない。

「あ、あの……私、部活に行かなくては……」

「…………」

あまりにも大膽すぎる噓に言葉を失う。何だこのメイド。その噓大膽すぎるだろ。どうして通じると思ったんだ。

俺は彼の前の席に腰かけ、彼と向き合った。

「よし。とりあえず復習くらいはして帰るか」

「えぇっ……!?」

「いや、霜月さんは今日のじだと、ここでしっかりやっとかないと、一年後にはやばいことになりそうな気がする。面倒なのはわかるけど」

「あっ、面倒とかではなくて!」

「?」

「そ、その……失禮ですが、ご主人様は私より頭が……はい……」

「本當に失禮だな!!!」

「えと……その……悪い意味じゃなくて、キャラ的に……」

「より失禮だよ!えっ?ていうか、俺そんなにバカキャラですか?」

「はい」

「…………」

まさかこんな時だけ即答されるとは思わなかった。しかもふざけて言ってる気配がまったくない。ガチの想。

とりあえず黙ってデコピンをかます。

「あうっ」

「とりあえず軽く復習だけでもしていくぞ。學年77位の実力を見せてやる」

「えっ?ご、ご主人様……77位なんですか?……微妙」

「アンタ、本當に失禮だな!!」

何なんだよ、このメイド!

いや、まあ威張って人に教えるほどでもないのは自覚してるんだけどさ……。

「とりあえず始めようか」

「で、でも、ご主人様……お腹、空いてますよね。空いてますよね。空いてますよね?」

「え?いや、空いてませんけど、別に。晝は學食で結構がっつり食ったし。あとそんなに繰り返さなくとも」

「いえ、そ、そんは事は……」

突然ぐぅ~~~~~っと間の抜けた音が響く。

その音は哀愁漂う余韻を殘し、教室に殘念な空気を生み出した。

すべての発生源となった霜月さんは、顔を真っ赤にし、ふるふると震えながら、ぽそぽそと口を開いた。

「……ほら」

「…………」

ほらじゃねえよ。さらっと人のせいにすんな。ここまで堂々と噓つけるとかすごい。すごすぎてドン引き通り越して心しちゃう。

結局俺達はそのまま帰宅することになった。

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