気なメイドさんはヒミツだらけ》メイドさんは押しれが大好き

最近、おかしな事が起こるようになった。いや、おかしな事しか起こってないだろ、とかいうツッコミはいらない。

そのおかしな事の一つは、街もすっかり寢靜まった深夜に起こる。

バリッ、パリッ、パリッ……んくっ。

まただ。また聞こえてきた。

何かを裂くような音。そして、心地よいリズムで響く何かを噛み砕くような音。どれもどこか遠く、しかしはっきりと聞こえてくる。

もしかして……心霊現象だろうか?いや、まさか……。

焦りを「ゆうれいなんかこわくない!」と念じて、ひとまず落ち著く。本當に幽霊が怖いとかじゃないけど、いざ自分がそういったものに遭遇するとなると、がすくむ思いだ。

……霜月さんは大丈夫だろうか。

いくら豪腕のクレイジーメイドでも、幽霊相手では為すなしじゃなかろうか。

ピュー……ドンッ!

こ、今度は、謎の効果音が……これは、いよいよヤバいんじゃないのか?

アウチっ……!「あっ、また負けた……」

「…………」

あれ?今聞き覚えのある聲が聞こえてきたような?

もう一度息を潛め、しっかり耳を澄ませる。

ピピッ、ピッ……!「……これ、壊れてるのかな?ご主人様の頭みたいに」

……何やら真相が摑めてきた。

俺はゆっくりとを起こし、音を立てないように押しれまで近づいた。

すると、徐々に音がはっきり聞こえてくる。

バリッ、バリッ、ゴクッ、「ふぅ……」ポチポチ「あっ、また……」

俺は思いきり押しれの戸を開いた。

「ひゃわっ!!!!!」

そこにいたのは…………いや、溜める必要はないか。霜月さんだ。

は、コーラにポテトチップスという干妹スタイルのアイテムを脇に従え、ゲームに興じていた。

その目は驚きに見開かれ、「どうしよう、どうしよう!」という面が見てとれた。

俺も、正直戸いが隠せず、彼の出方を待つしかない。むしろ、どんなリアクションをするかが楽しみだ。

すると、霜月さんはゲームの電源を切り、ペットボトルの蓋を閉め、ポテチの袋を畳み、ウェットティッシュで手を拭き、居住まいを正した。

「ご、ご、ご主人様……いかがなさいましたか?」

「うん。とりあえずそこから出てきましょうか」

「……はい」

霜月さんは割と軽やかなきで押しれから出てきて、ちょこんと正座した。どうやら素直に白狀する気はあるらしい。いい心がけだ。

「えっと……何をしてるんですか?」

「メ、メイドとして、いつでもお仕えできるよう、お傍に……」

「ゲームをしていたようですが?」

「……えと……あっ、ご、ご主人様の好みのゲームを探していました」

「…………」

今思いついたみたいな表で噓をつくのは止めていただきたいのですが……本當にすげえな、この人。

まあ、とりあえず一番の気になるのは……

「そもそも何で押しれにいるんですか。いつからいたんですか?」

「……初日からです」

「マジで!?」

全然気づかなかった!!

「えっ!?だって……自分の部屋は?」

「も、置として使わせていただいています。やはり、その、メイドとしていつでもご主人様にお仕えできるよう……」

「い、いや、そんなに気は使わなくても「拒否します」あっ、はい……」

やはり自己主張はしっかりするらしい。気で強気なメイドさんである。

そこで、俺はハッとある事実に思い至った。

「あ、あの、霜月さんって、初日からそこで寢てたんですよね?」

「……はい」

「…………」

俺は急いで脳の記憶を掘り返す。えっと、えっと、ここ最近の夜は……ど、どうだったっけ?

そんな俺の様子で何かを察したのか、霜月さんは微妙な笑顔を浮かべる。あ、嫌な予……

「あの、大丈夫です……私……その……気にしませんから!」

「こっちが気にしますよ!!!」

俺が頭を抱え、過去を消したい衝に駆られていると、霜月さんは俺の肩に手を置き、微妙な笑顔のまま口を開いた。

「そんなに……落ち込まないでくだ、さい……私、ご主人様がゴソゴソし始めたら、イヤホンを付けましたから」

「最初から付けてくれませんかねえ!?」

「も、申し訳ありません!次からはしっかりイヤホンを付けますので!」

「いやいや、押しれから出ていってくださいよ!!俺のプライバシーゼロじゃないですか!」

「じゃあ……わ、わ、私は……明日からどこでゲームをすれば……」

「自分の部屋でしろや!!」

「…………」

「あっ、このタイミングで何押しれに戻ってるんですか!ちょっ……開けてくださいよ!」

「……主人様のエッチ」

「うぜぇ!!ていうか、鍵かかってる!いつの間にとりつけたんですか!」

……こうして、俺の部屋の押しれは霜月さんに占領されてしまった。

いや、すぐに取り返すけどね?

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