《香川外科の愉快な仲間たち》久米先生編 5

國公立大學病院の教授としては最も若い上に、世界的名聲やそれに伴う莫大な資産を――日本でも醫師は割と裕福だと言われているが、その「枕詞」に「世界の」などがつくと桁違いの収が得られるらしい的な數字は分からないが――持った人、しかもどうやらご両親も既に他界しているらしいというウワサに真っ先に飛び付いたのは、俺は何だか悉くパスされたらしいが、醫者の卵を虎視眈々と狙っているそこいらのお嬢様大學生ではなくて、斉藤病院長のご令嬢だったらしい。

その肩書きだけでも超がつくほどご立派な上に、憐悧で端整な、そして育會系のノリというより――俺には育會系とは全く縁がないのでそういう世界も実は苦手だった――研究者のような落ち著いた佇まいの人だし、ごくごく一般的な趣味を持つに嫌われる要素が皆無という有様なのだから、無理もないと思ってしまう。お金と名譽、そして恵まれた容姿という、男として一個でも持っていれば良い要素を全て持っているというなんて恵まれた人だろうと心するしかない。

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もちろん、お父様の強い意向も有った程度は俺のような醫大生でも分かった。

ただ、香川は帰國に際して條件をつけてきた。「自分が最も信頼している優秀な科醫を、自分の醫局に迎えれたい」というものだったらしい。

平等だとタテマエでは言っている外科醫の世界には知る限り居ない。産婦人科などのの患者さんが圧倒的に多い科とか、定時で上がれて容急変などの急事態が起こる可能がゼロとは言わないが滅多にない皮科や耳鼻科などには醫さんも多いと聞いているが。

香川教授だから許されたことかも知れないが、その凱旋帰國に連れて帰って來た優秀な――長岡先生という名前らしいが、その人は清楚で品も有る「ザ・大和子」だった。

そしてどうやら婚約しているというウワサで――でお似合いのカップルだと思うと、張り合う気すら起こらないし、そもそもそういう才兼備のが一介の冴えない醫學生の俺なんか眼中にもらなかっただろう。何しろ、香川教授と比べたら「月とすっぽん」どころではなくて、恒星と小星くらいの差があることくらいは誰だって分かる。

日本で落ち著いたら結婚式を挙げるのかなと、だからこそ病院長のご令嬢という「良すぎるほどの良縁」を斷ったのだろう。

暇を必死に捻出して手室のモニターに通うと、學生だけでつるんでいるのとは違う話もってくる。俺は教授の「神」としか思えない手技を真似ようと必死に観ていただけだけれども。そして手室の中で行われている「神様達の所業」を神々しさすらじて時間を忘れるほどだった。

ただ、ウチの看板教授として鳴りりでって來た人だし、見學者は寫真でしか見たことのない外科醫學會の重鎮とかも病院長の案付きで一番良い席を獨占している時も度々有った。そういう綺羅綺羅しい人との會話の斷片とかがれ聞こえてくるので。

そんな話を総合すると。

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